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山口 犬

6-306 あの日の出来事5








サヤの言葉に、思い当たるところがあった。
そこでハルナの頭の中に思い出されたのは、手の中にいた小鳥が消えていったあの感触だった。

この世界であのような不思議な現象を創り出せる存在は、そんなに多くはいない。さらに言えば、この世界の生き物のことなど、ただのモノとしか見ていないその感覚に、温もりを感じないおぞましい冷たい感情の持ち主……その存在が頭の中に思い浮かんだ。

先ほどのサヤの話しだと剣の創造者は世界を、盾の創造者はこの世界の生き物に関する能力を持っている。
普段の者たちからすれば、考えられないようなことも、創造者たちには行うことができる。
そのことを踏まえれば、今回サヤが怪しく思っていることも簡単なことではないかと考えた。




「……まさか」


「やっとわかってくれた?アンタが今、背中に背負っているヤツがどんな奴なのかを……」


「で、でも」


「そうだよ……確かに”そいつ”がやったっていう証拠はないし、アタシだって死んだように寝てるような状況だったからね。誰がそういうことをやったなんて、わかるはずもないし」



ハルナは、何とかサヤの言葉に反論までとはいかないが、何か言葉を返そうとした。
それでも、サヤの話を否定するための材料や、この世界に来てからの盾の創造者のことを考えると、擁護することさえ躊躇してしまっていた。



「だけどね。いろんなことを考えたら、やっぱりそこに行きつくんだよ。ずっと長い時間を使ってまで、そのことをやろうとした……こいつらにとっては時間っていう概念なんかないかもしれないけど、それくらい長い時間をかけて仕込んだものなんだと思ったよ」



サヤは、腕を組んでハルナに力強い視線を向けた。



「そして、いまがその全てを実らせるための、最高のタイミングなんだよ」



さすがのハルナも、首謀者にとって今が最高のタイミングであることは理解している。
巨大なエネルギーを持つハルナとサヤが集まっているため、何らかの衝撃を与えることによって、この世界が崩壊するためのきっかけを創りだす条件はそろっていると言える。


ハルナはそこまでたどり着いた思考の枝に、何か引っ掛かるものを感じていた。
その思考を少し前に戻し、その引っ掛かっていたところまでたどり着いた。



「ってことは、あのオスロガルムさんを倒したのって……」


「そういうことだよ。一回目はまんまと嵌められたんだ、アタシたちは……だからこそ、この推測が立てられたんだけど、ちょっとアタシの頭と呆れるくらいの長い時間を使って用意したことには褒めてやってもいいくらいだけどね」


サヤの”上から目線”の態度は、いつも通りで安心してしまう。
こういう時のサヤは、確実にその情報を掴んでおり、対策まで練っているのだろう。
自分が抱いていた心配も、少しは楽になった気がした。

とはいえ、今の状況は何も変わっていない。


ハルナはこの場にいて、先ほどから沈黙を貫いている疑わしく、もっとも確認しなければならない重要な存在に意識を向けた。







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