問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-295 最高の地位







「サヤちゃん……その話……」





ハルナはサヤに本当のことかどうか確認しようとしたが、その言葉は途中で続かなくなってしまった。
サヤから聞いた言葉は、ハルナが母親から聞かされたことの内容と類似しており、確かにあの日からサヤは風香のことだけでなく、弟妹が欲しいとは言わなくなっていた気がする。



そんなことを頭に浮かべながら、ハルナの口は何も言えないまま開いたり閉じたりを繰り返していた。






『ハルナ……どうしたのです?』



(――ひっ!?)




ハルナは、突然今までとは違う感じでの盾の創造者からの声に少し驚いてしまった。
今までは耳の中で響くような声だったが、今回は脳に直接語りかけるようなはっきりとした声で聞こえた。
そのため、自分が何かを閃くような速度で認識でき、反対にこちらからの反応も今までにない程の速度でやり取りを行うことができる。
それは上位のスポーツ選手が尋常ではない集中力から生み出される時間の中で動いていると言われるものはこういう感覚なのだろうとハルナは感じていた。
ただ、今までは自分の言葉を一度胸の中に置いておくことができたが、今回は全て相手に垂れ流しになってしまうような感覚だった。




『驚くことはないでしょう……それよりも、この者が”憎い”のでしょ?この者は剣の創造者と連携をして、この世界を破壊しようとしているのですよ』




先ほど、自分が感じた反応が間違いでないことに気付いた。
相手にはサヤに感じた感情が、盾の創造者には伝わっているようだ。


(これが繋がってるってこと?)




迂闊にもハルナは、そう心の中でつぶやいてしまった。しかし、相手はそのことに何の反応も見せず、ただハルナの感情の消化をするための提案を続けていく。



『いま、こうして油断している時こそ、いい機会ではありませんか?あの剣を奪い、壊せばいいのです』


(……壊す?どうやってですか?)



周囲は普通の時間が流れている中、ハルナの頭の中だけ時間が引き延ばされたような感覚になる。
目の前のサヤは、ハルナが驚愕して詰まっている言葉の先を待っているままだった。


『ですから、そのためにも私と手を組みませんか?それによってハルナはこの世界で最も高い地位に居られることを約束しますよ?』


(え?この世界の順位って……盾の創造者さんが決めているのですか!?)



『そうとは言い切れませんが……間違ってはいないと思いますよ』



盾の創造者からの説明では、生き物全ての属性や能力は個体の性能によるものが大きいという。
始まりの場所での精霊が繋がりやすいかどうかも、精霊との相性もあるが本人の属性も大いにある説明する。ハルナの能力は今のままでもこの世界の中――もう一つの世界も含め――ではかなり上位の力を持った存在であると告げた。



『ですから、この世界を創り上げたわたしの力を使えば、ハルナはこの世界で上位……いえ、もっとも高い存在となることができるのですよ!?』




盾の創造者の言葉が力強くなり、少し引き気味のハルナはこの問い掛けにどのように返すべきか迷っていた。








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