問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-283 背負う盾




ハルナは創造者に言われ、壁に掛けられた盾をソフィーネとマーホンに手伝ってもらいながら中に背負う。



「ハルナ様……重くはないですか?」


「大丈夫ですよ、マーホンさん。見た目と違って案外軽いですから、私にも背負えますよ」


「え!?」


マーホンはその言葉に驚く、ソフィーネと手伝いながら盾を支えながら自分の手にはずっしりとした重さが感じられていた。
いまでは滅多にないが、商人として育ち働いてきたマーホンは、荷物の搬送などで重い荷物を運ぶことが
度々あった。
その記憶からも、これをずっと背負って行動するには、ハルナの身体では問題がありそうな重さであった。
だが、ハルナはそれを軽々と背負い、なんとも無いような平気な動きをみせていた。


それを信じられないといったマーホンの顔を見て、ラファエルが推測したその疑問に答える。



『これは精霊の加護をうけて、盾の重さを軽くしてあるのです』


そのラファエルの言葉を受けて、ハルナはマーホンが心配している理由が判った。
そして、その様子を見ていた創造者が、ハルナに向かって声を掛けた。



『準備はよろしいですか?……それでは、参りますよ?』


「は……はい!」


「ハルナ!無事に戻ってきてね!?」


「ハルナ様!?」


「ハルナ様、ご無事をお祈りしております」


「ハルナ頼んだぞ!」


「ありがとう!行ってき――」



ハルナは、声を掛けてくれたステイビルたちにお礼を言った。
……と同時にハルナの姿はこの場から消えてしまった。



「ハルナ……」



エレーナは一番最後に自分に向けてくれた笑顔を思い出しながら、服の裾を力強く握りしめて涙が流れ落ちるのを必死に堪えた。


「――ます!!っ!?」


ハルナの目の前は、お礼の言葉を伝え切れないまま、目の前が真っ黒な暗闇の中に変わった。
よほど急いでいたのか、挨拶を終える前に転送した創造者に対して文句を言いたくなった。
だが、真っ暗な世界の中、その位置を確認することもできずにいると、その気持ちは次第に収まっていく。


『……ハルナは、このような世界にいても平気なのですね?』


周囲は見えないが、背中の盾から声が直接伝わってきた。


「はい、もう慣れました。モイスさんもサヤちゃんもこの能力が使えるので、いつもこんな感じでした」


『そう?……でも、もしここから出れなくなったどうするの?』


「……え?」


『わたくし、この能力を使うのは初めてなの。オスロガルムの残滓からこの能力を拾ってきたのですが、よく使い方を知らないので』



その言葉の意味が解らず、ハルナは最初はきょとんとしていた。
しかしその意味と危険な状況がわかってきた途端、この空間には感じられない心臓の拍動が多くなっていくように感じた。


『……ふふふ。その反応が見られて、よかったですわ。安心なさい、ちゃんと出ていくことはできますから』


創造者はそういって、怯えるハルナを楽しむとこの場所から出る術は持っていると告げた。


『ですが……ここからは本当に初めてのことです。先ほど、もう一つの世界の入り口を見つけました。どのようになるかは判りませんが、覚悟をしておいてください』



「……わ、わかりました」


『では、いきますよ』


その言葉が聞こえると同時に暗闇の中に白い点が生まれ、その点は円となり更に急激に広がっていく。
ハルナの無い目は、眩しい程の真っ白い光に包まれた。






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