問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-280 ニーナとステイビル9
二人は、お互いの身体を抱き合ったままの時間が過ぎていく。
「……ステイビル様」
「……ニーナ」
「……ステイビル様」
「……ニーナ」
「……ステイビル様、そろそろお放しくださいませんか?ちょっと、息が苦しくって」
ステイビルはニーナのさわり心地の良さと、ステイビルよりも引くニーナの頭部の体臭が自分の好みのものであったため、いつまでもこの状況に溺れてしまっていた。
「え……あ!す、すまない!?大丈夫か!?」
ステイビルから解放されたニーナは、ゆっくりと深呼吸をする。
そして、今までお互いの温もりを分かち合っていたステイビルの顔をみて微笑む。
「ステイビル様……それではわたくしは、自室に戻らせていただきます。何か用がございましたら、遠慮なくお呼びつけくださいませ」
そう告げて、ニーナはステイビルに対して頭を下げる。
「ステイビル様が落ち着かれたようで安心しました。これで、あのメイド方々も明日から安心して職務に取り組んでいけるでしょう。ですが、決してあの方たちを罰することなきよう、重ねてお願い申し上げます」
ほんのりと嗅覚にニーナの香りが残っている中、退室しようとするニーナの言葉にステイビルは正気に返る。
「ゴホンっ……あぁ、分かった。というよりも私の態度が問題だったのだから、その者たちに感謝こそすれ罰することはない。ニーナからもそう伝えてくれ」
「かしこまりました。では、ステイビル様、お時間をいただきありがとうございました」
「うむ、ニーナもいらぬ心配を掛けさせて申し訳なかった。今夜は、ゆっくりと休んでくれ」
その言葉を聞きニーナは笑顔で応えた後、もう一度この場での時間をもらったお礼と頭を下げ、ステイビルの部屋を後にした。
「ふふっ……ニーナさん。ステイビルさんと仲良くなったようですね?」
ステイビルは、ハルナの”仲良く”という言葉に動揺する。
だが、その表情は悟られない様にと平然を装う。
ステイビルの隣にいたニーナは、その言葉にも平然と対応した。
「はい、ハルナ様のおかげです。ハルナ様からのお言葉が無ければ、わたくしはもう……この国にはいなかったでしょう」
「ハルナよ……色々とその節は面倒をかけた。私の国王としての力が足りないことを痛感させられた。ハルナには、言葉では言い表せない程の恩を受けた。いつか必ず、この恩を返してみせる」
「そ、そんな!?いいんですよ、私も大したことはしてませんし……とにかく、ニーナさんが受け入れられるようになって、良かったです……本当に」
「わたくしも、今回の件でハルナ様がステイビル様とお似合いであること、充分に納得させられた次第でございます」
「え?……そ、そんな!?」
ニーナの言葉を否定しようとしたハルナだが、ここで否定してしまうとステイビルへの気持ちが表向きにでも否定されてしますことになる。
そう考えたハルナは、途中で言葉を濁そうとした。
でも、その言葉をうまく引き継いでくれたのはニーナで、結果的にハルナが感じていたものを補助してくれる形になった。
「いいえ……ハルナ様は、お優しくて人を幸せにする力がございます。ハルナ様こそ、ステイビル様にふさわしいお方でございます」
「……」
ハルナの中では、ニーナとの仲良くなって自分との関係が改善されればという淡い期待もあったが、今のニーナの言葉からは、そういう”関係”ではないのだと少しがっかりした。
しばらくして、エレーナとアルベルトもこの場に姿を現す。そのタイミングで、用意をしていたソフィーネが全員に食事を提案する。
誰もその提案に反対することもなく、食事の用意が進められていった。
そうして、この旅での最後の食事を摂る。
その様子はこれからもこの旅がまだまだ続くかのような雰囲気を持ちながら。
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