問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-258 切り返し








『それで、あなたはどうするの?……ハルナ』





優しそうに語り掛ける創造者の声には、何の感情も含まれていない、ただ機械のような冷たい言葉のように感じた。
だが、今はそんなことを気にしている時間ではない。
創造者とラファエルは、ハルナの答えを待ち続けている。




『で……どうするの?』



少し時間が経過し、再び創造者はハルナに質問の答えを投げかける。




「あの……いいですか?」



『?……どうしましたか?』




「そんな重要なことを言われても、今すぐに判断できる材料がありません。それに私一人でしか対応できないのであれば、なおさらです。それに、私の中でも色々と聞いておきたいことがある前に、そのこと決めてしまうのは難しいです」




ハルナはふと、あることを思い出していた。
それは冬美から、教えてもらっていたことの一つだった。



”結果を急がせる相手には注意すること”―――ということを。




状況にはよるが、相手から自分への答えを急がせている場合は、相手が後ろめたいことがあるかこちらを騙そうとしていることが多いと言っていた。

実際に店で働いていた時、一部の客の中にハルナを特別なイベントへ誘ったり、何か個人情報などを引き出そうとするためにあの手この手で条件を出してくる客がいた。
近くに冬美や他の従業員がいる場合は、カバーしてくれていたが、ハルナ自身で対応しなければならないときは、その教えが大いに役に立っていた。


当然そういった客は、いつしか店から姿を消していっていた。
見かねた他の客が、手を回してくれていたとも聞いたことがあった、それに関してはその真偽はいまとなっては判らないが。


そのため、今回の創造者の問い掛けの裏を探るべく、ハルナは過去の経験を活かし質問に対して切り返してみせた。



そのハルナの言葉を聞いた創造者は、何の反応も示さずに淡々と応じる。




『そうですね……そうかもしれませんね。わかりました、ハルナが満足をしたうえでその判断を下していただくことにしましょう。ただし……』



「ただ……し?」


『ただし、そんなに時間的猶予は差し上げられません。遅くても、ここ数日のうちにその答えを出していただかなければなりません』


「それは……ステイビルやエレーナに相談してもいいの?」


『それは構いません。ただ、ラファエルたちには、私の警護にあたっていただくので、あなた方の力にはなれないことを承知しておいてください』


「……わかりました」





こうして、ハルナたちは時間的猶予をもらい、いますぐ運命的な問題に対して、不確定要素が多い中の選択を回避した。



二日後にその答えを導くべく、またこの場で話し合うことを約束し創造主はこの部屋から姿を隠した。
その際にハルナたちがもつ疑問などを、用意しておくように言われた。

その後ラファエルも、ハルナに申し訳なさそうにして、その姿を隠した。







ハルナたちは隠し部屋の外に出て、再び部屋の中にあるソファにため息にも似た息を吐き腰を下ろした。


「さて……これからどうするべきかな」


疲れ切った表情のハルナたちを気遣いながら、ステイビルはこの問題をどう解決するべきかを考えるため、腕を組み目を閉じて思考を巡らせた。












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