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山口 犬

6-246 王族だけの秘密






ハルナはこの中では、ステイビルの次に位が高い。
戸惑っているハルナをソフィーネは優しく導き、ハルナが座るべき場所へ案内した。



「ありがとうございます……」



そのお礼にソフィーナはにっこりと微笑んで、ハルナからのお礼を感謝した。
ハルナはゆっくりと膝を曲げて、ソファーの座面に腰を下ろす。



「――っ!?」


ハルナの腰は想像以上に沈み、後ろにひっくり返りそうになった。
だが、それだけはみっともないと必死に堪え、エレーナたちにはバレているであろうが何事もない風を辛うじて装った。



その姿を見て、エレーナとマーホンもそれぞれの場所に腰を下ろしていく。
全員が腰を掛けると、ステイビルは書斎の机から立ち上がり、ソファーに向かって歩き始める。

そしてステイビルは四角いテーブルで囲まれたソファーで、ハルナの籍の隣に腰を下ろした。



全てのソファーに全員が席に着いたことで、ソフィーネはステイビルの室内にある道具を使い、全員にお茶を差し出した。





「……さて。もうこの場では、普段通りでいいぞ。ハルナも慣れぬことで、疲れただろう?」


「い、いいえ。そんなこと……はい、ほんの少しだけです」



正直に今の状態を答えてくれたハルナに対し、ステイビルは優しい笑顔で応えた。
ステイビル自身も色々な仕事の中で、決して自分や王国……国民にとって良いものばかりを処理するわけではない。
そんな複雑な心境の中、ハルナたちが自分の元を尋ねてきてくれたことはステイビルの精神に対しての回復薬のような訪問だった。
ステイビルは、ソフィーネが用意してくれた飲み物を一口含みその味と香りを堪能する。
カップを皿の上に戻し、それをテーブルの上に戻してステイビルは会話を切り出す。これも王宮内では、そういう作法となっていた。


「それで、今回はどのような話なのだ?」


その言葉に対し、エレーナはハルナの顔を見て、この場に来た目的を告げる。



「あの、あの盾を見せていただけないかと思って」


「あの盾?……国宝のか?」

「はい、そうです。確か、ステイビルさんの机の後ろの壁にある隠し扉の中の部屋にあったと思いますけど」


「――なっ!?」


ステイビルは、ハルナの言葉に驚愕した。
この部屋の隠し扉のことは、前代である父のグレイネスから即位の儀式の際に聞かされたことだった。
ステイビル自身も、この部屋には何度も来たことがあるが、そのような部屋があったとはそれまで知らされていなかった。
そのことを”なぜハルナが知っているのか?”という驚きに、ステイビルは声を出すことすらもできなかった。

ハルナは席を立ち上がり、ステイビルの机に向かって歩く。
その後ろの壁に手を掛け、何かを探すようにさすりながら摩っていた。


「あれ?この辺だと思ったんだけど……」



あの時はサヤがいてくれていたため、この隠し扉の謎を容易に解いてくれた。
だが、その方法は聞いていなかったため、ハルナ自身はその開け方は知らなかった。


「ハルナ……ちょっと……」


悩むハルナの後ろから、ステイビルは声をかけた。
そして、ハルナ以外のものたちに目を閉じるように告げる。



――カ……チャ



ステイビルは壁に付いた装飾を操作すると、ハルナの近くの壁の中から何かが外れる音がした。











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