問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-222 変貌
「ご……ご無沙汰しております……す、ステイビル……さま」
「その面影……まさか、ニーナ殿か!?」
「え?……嘘……!?」
ステイビルはこの地にきて、初めて驚いた表情を見せる。
流石のエレーナも、ステイビルと同じ反応を見せていた。
そこにいたニーナは変わり果てており、西の王国であった頃の元気で素敵なニーナの姿はない。
誰かの手を借りなければ、歩くこともままならないくらい、病的にやせ細った姿に変わっていた。
「どこか、お身体を悪くされたのですか?」
「……」
その質問にニーナ本人は答えず、兄であるカステオが代わりに返答した。
「そうなのだ……東の王国の王選が始まるころから、ニーナの身体に異変が起きてな……いろんな者たちに調べさせた。まじない師や占星術師や薬草師も……だが、その原因は何一つとして判らなかったのだ」
そうして話している間にも、ニーナの顔色は次第に悪くなっていく。
この場に立っていることすらつらそうなニーナに一つ提案をする。
「エレーナ……」
「はい」
「もしよろしければ、このエレーナに一度調べさせてはいただけませんか?エレーナの精霊は水の大精霊の加護を受けており、体内に流れる身体の水の状態を調べることができます。もしかしたら何かわかるかもしれません」
「……そうか。お願いしよう」
カステオから承諾を得て、エレーナはニーナの近くまで近づく。
肩から人型の精霊が現れ、ニーナの身体の中へと入っていった。
「……っ!?」
痛みも苦しみも何もないはずだが、ニーナは小さく弱い声を出す。
きっと何か衝撃があるだろうと思い身構えたのだろうと、エレーナは判断した。
そして数分が経過する……
ニーナの身体の中から、水の精霊ヴィーネが再び姿を現した。
「どうだった?」
『うん……なんともないよ』
「「え?」」
その声に驚きの反応を見せたのは、エレーナとステイビルだった。
「え、エレーナ……ほ、ほんとなのか?」
「は、はい。今まで、何度かありましたが、そういう時は本当に何もなかったんです」
「だが、ニーナ殿の身体は……」
そこで、カステオが二人の話に割り込んでくる。
「すまない……ステイビル。これ以上は、ニーナの身体が持たない……イナ、すまないが休ませてやってくれないか?」
「あぁ、すまない」
カステオに言われてイナは頷いてニナの手を取り、もう反対側の手で背中を支えながら元休んでいた部屋へ案内した。
「……それで、エレーナ本当に何もなかったのか?」
ステイビルは、もう一度エレーナに調べた内容の真偽を確認した。
「はい、ヴィーネの言うことは今までも間違ったことはありません。具合が悪いと言ってみた時も、何かある場合はその流れを変えよくなっていましたし、何もない場合は何もしなかったのです」
「で、今回は”何もしなかった”というのだな?」
「その通りです、ステイビル様」
「うーむ……」
ステイビルは腕を組み、ニーナの状況を考える。
その中で、一つ疑問が生まれてきた。
「カステオ……なぜ、体調のすぐれないニーナ殿をここに連れてきた?何か用事があるのであれば、ニーナ殿まで連れてくる必要はないだろ?しかも、きっと正規のルートでこの国に入ってきてはいまい?そんな危険なことをしてまで、なぜニーナ殿をここへ連れてきた!?」
カステオはようやく、自分が描いた状況にステイビルがたどり着いてくれたことに満足した。
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