問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-207 違和感17








「「……は?」」




イナとニナは、キャスメルが口にした言葉に自分の耳を疑った。
既に国の行事として決定している内容に対し、異を唱えるという行為は、例え亜人であっても集団の中で生活をするにあたり、あってはならない行為だ。
その決定も権力者が独断で決めたのではなく、様々な意見を取り入れてどちらの陣営も納得をしたうえでのもであったはず。

それを一人の人物が覆そうとするのは、国に対して反逆の意を示すことに他ならない。



「キャスメル様……それは」

「……その理由をお聞かせいただいても?」


イナは自分の言葉を遮り、この話を打ち切ることもせず先へと進めようとしたニナの顔を睨む。
しかしその視線を無視して、ニナは質問の答えを二人のドワーフのどちらに反応するべきか迷っているキャスメルの顔を見つめていた。



キャスメルは、この場面でどちらの言葉をとるかは、うっすらと感じ取っている。
イナは明らかに、自分の提案に対して拒否を示す態度を見せていた。
だが、その隣にいるニナは、自分のことをしっかりと見つめてこちらの話を聞く体勢を保ち続けている。


「ちょっと!?ニナ!!」


イナのその言葉の先は、今度はキャスメルの言葉によって遮られた。


「実は……」


キャスメルはイナがニナに起こっている姿を無視してニナに今回の作戦の内容を話して聞かせた。


今回起こす騒動は、ステイビルをニーナと一緒にするためであると説明する。
騒動を起こすことによって対話の機会を作り、ニーナとの関係のきっかけを用意する……と。

その話を聞き、この場にいなかった声がキャスメルの背後化から聞こえてきた。


「……ですが、そのことは既に東の王国内ではハルナ様と決定しているのではないですか?」


「……ナルメル!」


この場にナルメルが現れ、一通り聞いた話の内容から大前提である今の状況を確認する。
またしてもイナの呼びかけは、ナルメルに届かず話は進んでいった。


「決定はしています。ですから、それを覆すような事態が必要なのです。申し立て程度では、恐らく今の状況は変わらないでしょう。ですから、それ以上の衝撃をぶつけなければならないのです」


イナはニナとナルメルの顔見て、心に決めた顔つきをしている。
その顔つきは決して、集団をまとめる者の責任のあるものではなく、一人の女性として決断をした顔つきだった。


(……はぁ)



イナはため息をつき、キャスメルの顔を見つめる。

「キャスメル様……わたしからも一つよろしいですか?」


「?……はい、どうぞ」


「これは西の王国と共同で行うとのことですが、あなたはなぜこのことに協力されるのですか?万が一、この作戦が成功したとして、ステイビル様ニーナ様と一緒になったとしても、ハルナ様はあなたにふり向いてくれるとは思いません」


「!?な、なぜですか!?」



キャスメルはこれまでに見せたことがない程、イナの推測に反応を見せる。
イナはまさか本当に、ステイビルと別れた後ハルナは自分のものになると思っていたキャスメルに驚いた。











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