問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-168 見覚えのある者14
エレーナが攻撃の準備をすると、ミカベリーはその力の大きさに驚く。
自分も王宮精霊使いだが、王選に参加したエレーナの力は、自分の知る人がもつ元素の扱いの量を超えていた。
これほどの元素を扱える者は自分が知っている中で、今のエレーナの他に上司であるルーシー・セイラムしか思い浮かばない。
そのことからも、”もしもエレーナが王宮精霊使い長ならば……”と、そんな考えが広がりつつある中、ある疑問がミカベリーの中に浮かびそれを対峙する男にぶつける。
「ルーシー様は?……エレーナ様を王宮精霊使いの長とするなら、ルーシー様はどうなってしまうのですか?」
「ルーシー……”あいつ”はしっぽを巻いて逃げたよ、王国からな」
隊長はそう告げて、大竜神が王都に現れた時のことをこの場にいる者たちに伝えた。
ルーシーは怪しい者たちを城内に入れて、王の暗殺計画に加担した罪で追われていた。
そして観念したところで、城の高層階から飛び降りたが、不思議な力で上空に引き上げられていった。
そして、そのまま姿を消したことを話す。
「……きっと大竜神の力によって助けられたのだろう。偵察隊の報告では、”ステイビル”に力を貸しているようだがな」
最期の言葉を聞き、精霊使い達はホッとした雰囲気を出していた。
自分たちの長の生存が確認されていると判断し、ひとまずは最悪な状況を回避できた。
エレーナもその反応も、納得のいく反応だった。
ルーシーとは二つのグループで別れはしたが、自分の味方でなくとも、王国のために協力し合える人物であるとエレーナは認識していた。
だからこそ今の王宮精霊使い達の信頼も厚く、その存在が無事であることの報告に安堵の気持ちを持つ結果は当然のことだと考えた。
その者の身に何があったのかはわからないが、ルーシーは自分の命を断つような行動をとるような人物ではない。
その裏に起きたことに対してエレーナは思考を働かせようとしたが、まずはこの目の前の状況を処理することが先決だと判断し意識を切り替えた。
エレーナは男の発言に、どうしても許せないところがあった。
そのことに対して指摘をしようとしたが、それよりも先にアルベルトの言葉によって遮られた。
「あなたは……ステイビル様の名を呼び捨てにした。確かに今は一国民の存在であるが、これまでのその功績は、敬意を払ことに充分に値するはず。しかし、今のあなたの発言には、その経緯が全くと言っていいほど感じられなかった。言い訳をしてもいいが、今抱いている感情が覆されることはないと知れ」
アルベルトは、その発言と共に再び男に向かって剣先を向ける。
冷静を装っているが、アルベルトの感情は今にも弾けそうだということは、長年付き添っているエレーナには判っていた。
それと同時に、いま自分が隊長に対して言いたかったことを、内容の増減なく伝えてくれたアルベルトに対してさすが自分が選んだパートナーであることを深く感じて口元に笑みが生じていた。
「さぁ、どうする?私たちを力でねじ伏せてみせるか?それとも別な方法があるならば、出し惜しみせず見せるがいい」
アルベルトは、剣を突きつけたまま男に向けてそう告げた。
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