問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-160 見覚えのある者6







「そ……そんな……」



ステイビルの説明を聞き、メイヤもその考えに納得がいった。
それと同時に、ステイビルが気付いたことに対して、今までエレーナの傍にいた自分がその思いに気付けなかったことに恥ずかしさと苛立つ感情が入り混じって押し寄せてくる。

しかしメイヤは、その気持ちを全て受け流しそんなことに苦しんでいる時間などないとを思い出す。




「それでは!……エレーナ様は!……うっ!?」

急いでベットから降りようとしたメイヤは、万全の状態ではないため足元に力が入らずに、膝から崩れるように倒れた……その身体を、ナルメルは抱き支える。

それでもメイヤは身をよじらせながら、細く力強いエルフの腕から逃れようと試みる。


「お願い、離してください!私はエレーナ様の元へ向かわないと!!」


「……アンタが行ったって、なんの状況も変わりゃしないんだっての」


「だけど!エレーナ様が……このままでは!……危ない目に!」



力を振り絞りながら途切れ途切れの言葉で、自分をバカにしたように制するサヤのことをにらみつけながら訴える。
しかし、サヤにはその訴えも通じていないようで、その態度がさらにメイヤの怒りを増長させる。



「そ、それじゃあ!……あ、あなたが……あなたがどうにか、してくれるんです……か?」



うつむくメイヤの身体は力が抜けて、ナルメルの腕にメイヤの重みがさらにのしかかる。
ナルメルの細腕でもそこまで支える力がないわけではないが、ゆっくりとメイヤの身体を床に下ろした。

絶望の波が押し寄せる中、メイヤは何とか込み上げる悲しみの声を堪えるために身体が小刻みに震えている。


「なんで……アタシが……」


それでもメイヤには、サヤからの否定的な言葉しか聞こえてこない。
ステイビルならもしかしてという期待はあるが、いまのステイビルにはそんな力も権限も持っていないというのは、ここに来るまでに十分考えられた結論だった。

それでも”元王子”であるステイビルであれば、何とかしてもらえると思っていたのだ。




「……ってこいつは行く気なんだけどな」



「え?」



絶望的な話しか聞こえてこないサヤの口から、受け入れやすい言葉がメイヤに聞こえてくる。
そして、顔をあげてステイビルの方を見ると、その相手はステイビルではなく、その隣にいた女性を見ていた。


「行っていただけるのですか?……ハルナ様」


ステイビルは静かな声でハルナに確認する、その目には助け出したいという力強さが溢れているのが伝わってくる。




「わかりました。それでは私も同行しましょう」


「ちょ……ちょっとお待ちを!?」


その行動を止めたのは、状況が掴み切れていないメイヤだった。
メイヤはステイビルが向かうものだと思っていたが、その隣の女性の一人が向かう様子だと聞いた。
一見、普通の女性にも見えるが、ステイビルの態度からして総統の実力のある二人だということは推測できる。



「あ……あの、あなたは精霊使い様ですか?」


その質問に答えたのは聞かれたハルナではなく、隣にいたサヤだった。


「アタシは違うけどね、コイツは精霊使いだよ」




サヤは、状況のつかめないメイヤの顔を見て、更に意地悪いことを思い付く。




「モイス!おいで!!」




その呼びかけに答えて、小さな羽の生えた書物でしか見たことのない生き物がメイヤの目の前に現れた。









コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品