問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-141 侵略8






「抵抗……と言ったな?それは宣戦布告と捉えて問題ないな?」



「さっき言ったはずだぞ、キャスメル。お前が俺たちの村を侵略するつもりなら、その力の限りを尽くして抵抗させてもらう……そう言ったんだ」




「面白い……ならば、お前の望み通りにしてやろう」



「そうか、それがお前の答えなのだな」



そういってステイビルは腰に下げていた剣の柄を握り、鞘を掴んでいた親指で押しだしその剣の全てを表に出した。
その剣は魔法がかけられているかのように怪しく煌めき、ステイビルの動きに合わせて反射する輝きは変化を見せる。
この剣はドワーフが希少な鉱石で創り出した、外見だけではなく切れ味もドワーフの歴史の中でも最高の部類に入る一振りをこの世に産み出した。
その姿を見せた時、キャスメルの目がその剣にくぎ付けになっているのデイムは見逃さなかった。
反対に敵にも認められる程の剣を、自分の師匠であるジュンテイの生涯最高の一振りを、キャスメルが見つめている。


ステイビルは剣先をキャスメルの方へ向けると、キャスメルの視線が急に興味をなくしてしまった。




(――!?)



デイムは、キャスメルの舐め切った態度に怒りが沸き立つ。
覚悟を決めたステイビルと、自分たちの最高傑作の剣に興味を失ったことに対して、デイムは感情を抑えることに必死になった。
その気持ちを察してくれたのか、ナルメルが代わりにキャスメルにその感情を言葉として表してくれた。


「あなたは……ステイビルの決意を踏みにじるおつもりですか?それとも我々など眼中にないというのであれば、今すぐその考えを改めてもらう必要がありますが?」


ナルメルは隣のエルフに合図を出すと、エルフはキャスメルに掌を向けてその前に術式が浮かび上がる。
それを見た兵たちは身体を起こし、エルフとキャスメルの間に立ち自分たちの王の身を守ろうとした。


「……よせ。いい、下がっておれ」


「王よ……し、しかし!?」


「構わん……どうやら亜人どもは、ワシの態度が気に入らなかったようだ」


「……?」


キャスメルにそう言われた兵士は、何のことかさっぱりわからなかった。
だが、王が”自分の身を守らなくてもいい”という言葉に対して、その命令を背くわけにいかず、王の目の間を開いて再びステイビルが見えるようにした……いつでもこの身で、王を守れるような距離で。




「さて、ワシの態度が気に入らないといった様子だったが……」


キャスメルはちらっとデイムに視線を送り、再びステイビルに視線を戻した。


「ふむ……回りくどいことは嫌いだ。お前たちに命令する、あの女……あの二人をここに連れてこい」



「あの二人……サヤ様とハルナ様のことか!?」



「そうだ……お前たちでは話にならん。交渉するに値しないということだ」


「――き、貴様!!」



そう叫んだエルフは、術式から一本の稲妻をキャスメルに向けて放った。



「お……!!!」



その近くにいた兵士が、王の名を叫びその身をもって魔法の攻撃を防ごうとした。
だが、その速度はすでに王の近くまで迫り、防ぐことができないと感じた……その時。


雷の矢は、キャスメルに触れる直前で消えた。









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