問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-133 ソイの記憶5
「……やっぱり、気付いてたんじゃない。アンタもさ」
ソイはサヤからそう言われてもなお、そのような恐ろしい事実を自分の中で受け入れることができないでいた。
”――ジュエがこの世に存在していない”ということを。
初めからいなかったのか、後から消されたのか……
ソイの記憶の中には確かにいたため、後者である可能性が高いとソイは踏んでいる。
だが、前者の選択肢も信じられない……信じたくはないが、どこかで否定できないでいた。
しかし、サヤという女性は自分の知らない何かを知っている様子だった。
ソイはある程度の結論を自分の中で用意した上で、自分が知らないサヤが知っていると思われる答えを求めた。
「今までの恥を承知で教えて欲しい……俺は何を探しているのか?幻か?」
「”幻”……ねぇ。それに近いものかもね」
「頼む!何か知っているのなら教えてくれ!!俺は……俺は何のために生きてきたのだ!?ジュエはいったいどこに……!!!……頼む、教えてください……」
そう言いながらソイは、疲れ切った様子で後ろで手を縛られたま魔の状態で腰を曲げて頭を床に付けた。
ステイビルは問題ないと合図をして、デイムにソイの目隠しを取るように命令した。
デイムもこの様子から、抵抗する気力はないだろうと後頭部の結び目を短剣で切り、視覚の制限を解除した。
それでもソイは、顔を上にあげることもなくうつ伏せになったままの状態を保っている。
「ふぅ。これは推測なんだけどさ、アンタ記憶……」
今でも頭を下げているソイの状態が、サヤに対して知っていることを教えて欲しいと懇願していると判断し、サヤは自分が思いついたことを伝えようとした。
――ドンっっっ!!
何か固いものが壁にぶつかった音が響き、グラキース山に反響する。
「――なんだ!?」
ステイビルがそう叫ぶと、その直後に外を警戒していたモイスが何が起きたかを告げる。
『ステイビルよ!何者かが、鉄の塊を打ちこんできたぞ!!』
「何ですって!?」
ステイビルはハルナにお願いをして、この周囲を囲っていた壁を取り除いてもらう。
するとその直後、遠くで爆発をする音がして大砲の弾が放物線を描き、下りながらこの村を狙っているのが確認できた。
『フン!無駄なことを!!』
そうしてモイスは再び氷の壁を創り出し、鉄の塊の進路を妨害した。
氷の壁に当たった鉄球は、再び役目を果たすことがなく地面に落下していった。
「ナルメル様!人間の兵が、周囲を囲むように展開しております!!」
同じように別な森の場所を警備していたドワーフの兵も、同じような内容を告げるために駆け寄ってきた。
相手を見つけても、向こうが攻撃してこない限りこちらからは打って出ないようにステイビルの指示があったため、その存在を確認しただけで、周囲を監視していたエルフとドワーフが戻ってきていた。
そのまま警戒態勢を保持し、これから起こる戦いの気配に備えた。
そうして、この村は騎士団や王宮精霊使いを含んだ大勢の王国警備兵たちに包囲されてしまっていた。
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