問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-115 報告2









「そういうことが……人にできるのですか?」


『そういうこと?……二つの属性同時に一人の人間が扱えるということか?』




ステイビルは聞きたかった内容が間違いないことを返し、モイスはここから自分の知っていることを答える。



『確かに長い時間の中で、そういう者がおったのも事実だな。だが……いや、なんでもない。お前の質問の答えは”そういう者もいた”だ』



モイスは途中で何かを言いかけたが、途中でそれを取り消す。
ステイビルもそれ以上のことは聞けないため、とりあえず”人”という存在でも二つの属性を扱える精霊使いがいたことが判ったため、ハルナが見た目通り”人間”であることは間違いないと結論付けた。

そんな展開を頭の中でしていたステイビルの視線がハルナの方へもどり、自分は何も悪いことをしていないが気まずい雰囲気を感じ取り、ハルナは作り笑いでその視線に対し取り繕う。
ステイビルもこれ以上は、ハルナの機嫌を損ねても問題になると判断し、この話題についてはそれ以上の追及を止めた。



次に、もう一つの気になっていた話題について、ステイビルはこの場の空気を換えるために持ち出した。




「それで、ルーシー。精霊は……力は使えなくなってしまったのか?契約を解除したと言っていたが……」




ルーシーは、窓から飛び降りる前、契約精霊であるフランムとの関係を断つように告げた。
それは、二人は感覚を共有しているところがあり、感情や感覚がパートナーに伝わる。
そのため、敵によって精霊が消滅させられた時は、人間の方にもその衝撃が伝わり場合によっては廃人のようになってしまう者もいる。
だからこそ、精霊使いの養成施設ではその能力だけでなく精神面も鍛えておかなければならない。

その反対も当然ながらある……そのため、フランムにこの痛みを伝えるわけにはいかないとルーシーは契約解除を口にした。


だが、いまだにフランムとの感覚が繋がっている。
そのことを聞いたステイビルは、ホッとする気持ちと何故まだつながっているのかが不思議だった。




「実は、まだ繋がっているのです……不思議なことですが」




ルーシーたちは精霊と、契約を切ることができることは過去の事例から事実として認識している。
だが、実際にどうすれば繋がりを絶つことができるのかまでははっきりと判ってはいなかった。
そのおおよそが、寿命や事故による死別がほとんどだった。
契約者と精霊が存在したままでの契約解除は稀なため、その条件というものがどういうものなのか不明のままだった。


ステイビルは再び、モイスに視線を向けて何か知っていることはないか聞きだそうとした。



『ふむ……ワシはお主らに加護を与えることは出来るが、精霊の契約についてはまるで関わってはおらんからの……ん、そうだな。そのことについてはそこにおる”ラファエル”に聞いてみてはどうだ?』



「「――え?」」




その言葉に、ステイビルとルーシーはモイスが何を言っているのか一瞬理解できなかった。








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