問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-107 無力








ソイは再び、無抵抗のように見える二人の女性に攻撃を仕掛けた。
だが、その攻撃はまたしても二人の少し手前の距離で弾かれてしまった。



「――!?な、なぜだ!!お前たちの不思議な能力を塞いだというのに!!なぜ、当たらない!?なぜ届かない!?」




ソイは、今までに見たことのないほどに興奮をしている……いや、絶望の感情の方が多く入り混じっている表情を見せていた。

これまでどんな状況でも相手の力を抑えることと、最初の襲撃に置いて最大戦力を奪うもしくは最弱化させることで戦況を優位に進めてきた。
目の前の相手はそのどれも通用しない……キャスメルから渡された、周囲の魔素と元素をそれぞれ取り込む石を使ってみても、相手の防御が崩れることはなかった。


しかしソイは、これで諦めることはなかった。
懐から粉の入った袋を取り出し、ハルナたちの前の地面に投げつける。
すると、足元から真っ白な粉が巻き上がり、辺りを白一色に埋めていった。




「ちょっとこれ……なんなの?」




ハルナがこの周囲を風で吹き飛ばそうとしたが、サヤは一旦それを止めさせた。
それと同時にソイの動きを見つめていたが、特に粉に対して防御する行動は見せなかった。


(フーン、毒っぽくはないみたいだね。ただの”目くらまし”……か?)


――ガン!……ガガ!……ガガン!!




短い間に、ハルナたちの周囲から金属が打ち付けられるような音が鳴り響く。
しかし、それは音だけでハルナたちには実害は何もない。




「いいよハルナ……吹き飛ばしちゃって」


「え?いいの?」




そう言い終わると同時に、周囲の白い粉は一瞬にして強風によって吹き飛ばされていった。




「どう?アタシたちの防御壁の範囲……調べてたんだろ?何かわかった?」


「ククク……これはこれは、その通りですよ。まさか、そこまで読まれていたとは驚きです」




ソイの両手には、先ほどのベルトとは別な短剣が握り込まれていた。
あの音の大きさからして、ハルナたちを殺めるつもりとその防御の規模を確かめるために行った行動であるとサヤは判断していた。





「――サヤ様!!!」




上空からサヤを呼ぶ声が聞こえる、それはモイスに乗ったイナの声だった。


上空から見下ろし、城の屋上に白い煙が噴き出ていたことに気付く。
そして、不自然な風の力によってその煙が吹き飛ばされたことにより、その姿を確認できた。





「ちっ!?……今回はここまででしょうかね。次はその首、必ずいただきますよ……必ずね」



「あ!」





ソイはその言葉を言い終わると素早く、振り返って城壁の外に向かって走り、そして躊躇なく飛び降りた。




「いいって、ハルナ。あいつはそのまま逃がしてやりな」


「でも……」



「もうあいつはステイビルのところには戻れないだろうし、なんて言ったっけ?ブロードっていう奴のところにも帰れないだろうしさ」






地上からは様々な方法でモイスの身体に攻撃を仕掛けようとしている、だがそれは全て無意味に終わっている。
ゆっくりと降下しながら、モイスは自分の下にいるサヤたちの無事な姿を確認して屋上の開いた空間にゆっくりと降り立ち、探していた二人とようやく合流できた。









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