問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-101 風の大精霊










ハルナは自分の身体の中にある元素を、胸の中の盾に注いでいく。



「――あっ!」



その変化に驚きを見せて声をあげたのは、サヤではなくフランムだった。

精霊であるフランムも、この空間の中の元素の量が急激に枯渇していたのは気付いていた。
この空間にある元素はほとんど存在せず、流し込む元素はハルナの体内の中に貯め込まれていた元素だけを盾に注いがれていた。
元素を感じる者は、その盾に巡る元素の流れが渦を巻きその中心に集まっていくのを感じ取っているだろう。
フランムが感じたのは、盾へ流れ込む規則的な元素の流れ方だけでなく、ハルナの身体から注がれていく大量の元素の量のに言葉が出なった。
サヤにはその能力がないため、盾の中で起きている変化については感じ取れることは出来なかったが、ハルナが元素を注いでいることについて感じていた。
この空間に関する大きな制御は出来ないが、この空間に流れる魔素や元素の量や流れについては認識することができていた。


「……ふぅ」


しばらくしてハルナは、軽くひと息ついて自分のやりたかったことを終えた。
ハルナに然程疲労感は無かったが、自分の中での一つの行動の区切りとして息を吐くことが、周囲にも自分の行った行動を示す理由で習慣化していた。


そして……

――ピ……シッ



「……え?」


「あんた……壊したの!?」



「ち……違うわよ!」


本来ならハルナが”何かをした”くらいではヒビが入ることなどない。
この盾は前の世界で、魔神と呼ばれていたオスロガルムの攻撃からステイビルたちの身を守ってくれるほどの防御力があった。
王国ができた時のことや、実際に自分が体験した話からするとこのようなことが起こることは考えづらいとハルナはサヤに説明する。



「それじゃ……これって」


「うん……きっとこれ、”ニセモノ”だと思う」


「じゃあ本物……!!」





そのサヤの言葉の途中で、盾のヒビ割れは大きくなっていき、陶器のように線が走っていく。
盾の端がポロポロとかけらが落ちていき、そしてそのヒビ割れから光が漏れ始める。



「――っ!!」



手にした盾が光出し、近くにいるハルナは眩しさのあまりに盾から手を放して腕で光を遮る。
不思議なことに手放した盾は宙に浮いたまま、光を発し続け次第にその光の量は増えていく。

その眩しさに、ハルナは思わず盾から手を離し自分の腕で視界を遮り守った。
サヤもその経過を何とか確認しようとしたが、眩しさに負けて目を閉じて網膜を守った。
閉じたの目の裏にはチカチカと光の粒が残り、視覚は正常に機能していなかった。



この薄暗かった空間を真っ白に染めていた光も、次第にその量が減少していく。
それにつれてまた元の薄暗い状態に戻っていったが、変わったことは盾としての存在はすでになく砕けて床に落ちていた。
その代わりに、今までなかった存在がその場所にいた。




『助けていただき、ありがとうございました……ハルナ様』




姿を見せたラファエルは、床に片膝を付けてハルナに深々と頭を下げて感謝の気持ちを捧げた。








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