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山口 犬

6-89 ルーシー・セイラム10










ルーシーはこうして、モイスティアにある王国に貢献してきた家の一つ……フリーマス家が運営するの精霊使い養成所に入所することができた。
この施設を運営するアーテリアは、王国の中でも中立的な立場を保っている精霊使いの施設だった。
そのため、騎士団に対して権威を持つセイラム家とも交流のある家だった。


しかし、精霊使い育成に関することについては、一貫して独自の基準に基づいて運営を行っていた。
それは貴族や平民、資産の有無など分け隔てなく、人としての在り方を見ていることで有名だった。
これに関しては、王国もフリーマス家に絶対的な信頼をして判断基準を任せていた。

だからこそルーシーの父親も、ここで振り落とされたのであれば娘にそういう”素質”がないのだろうと、その判断をフリーマス家に委ねた。


幸いにして、ルーシーは養成所での訓練にも耐え、運よく一度の挑戦で精霊と契約することができた。



そこからのルーシーの功績は、目まぐるしいの者があった。

晴れて精霊使いとなれた者には、主に二通りの傾向がみられた。
その獲得した能力を、”自分のために生かす者”と、”他人のために生かす者”とに。


ルーシーは、その能力を後者として扱った。

精霊使いは特別な存在のため、その管理を国が行っていた。
一般市民がその力を必要とする場合には、国が管理している窓口に申請し吟味したうえで精霊使いを派遣した。



どんな些細な案件や他の者が進んで行わないことでも、ルーシーは積極的にこなしていった。
そうすることにより、ルーシーは家の存続以外のために自分の存在意義を感じることができた。

いつしかルーシーは自分の精霊とも意思の疎通が図れるようになり、その能力も格段に進化して困窮する人々を次々と助けていった。


その功績か、ルーシーは王選の精霊使いに選ばれることになった。
吉報を聞いたルーシーの父親は、初めてルーシーのことを褒めて認めた。
逆にルーシーは、自分の存在をそのようなものでしか認めてくれないものだという気持ちが確かなものになった。
当時知り合ったアリルビートと仲が良かったが、王選に選ばれたことによりその仲も認められなくなった。
父親としては、キャスメルに同行しているためそのチャンスが自分の娘に来ることを信じていた。


しかし、その父親の望みは適うことがなかった。
キャスメルは、ルーシーではなくもう一人の精霊使いである”クリエ・ポートフ”を選んだ。

父親はそんなルーシーに呆れてしまい、王宮精霊使い長という立場を得ても、それよりも上の地位を逃したことによるショックによってほとんどルーシーとは会話を交わすことがなくなってしまった。

家族との絆の回復に期待をかけていたルーシーは、そのことに対して心に深い傷を負った。
アリルビートは、そんなルーシーを心配して再び仲を戻すことを提案したが、ルーシーはそれを断った。

それでもアリルビートは、いつもルーシーのことを気にかけてくれている。
それだけがルーシーの生きる希望だった。


この二人の女性が、ルーシーの前に現れるまでは。













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