問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-87 ルーシー・セイラム8









ルーシーは徐々に、自分の身に何が起きていたのか推測できるようになった。
そしてのその不可解な状況を創り出したのは、このうちの二人のどちらか……きっとサヤの力によるものだろうと結論付けた。


「それじゃ行こうか……ハルナ、先に行って」


「うん、わかった」



自分の苦悩を他所に、勝手に行動を起こそうとしている二人。
ソファーから腰を上げようとしているそんな二人に、ルーシーは慌てて声をかける。


「ま……待って!?あ、いえ!お待ちください!!」



二人の行動をみたルーシーが慌てて自身の腰を浮かせ、テーブルに手を付きながら二人の行動を止めた。
振り返るサヤとハルナの姿を見て、ルーシーはひとまず安堵する。
ルーシーはこの二人を引き留め理由は、王国の安全のためではなく、自分自身の未知なるものへの関心が強かった。



「……え、何?アタシたちさ……急いでんだけど?」


ルーシーは今までの間、見せたことのない不満を見せるサヤに今までにない強い危機感を感じた。
だが、この機会を逃せばこの二人は、自分たちだけの時間を進めて、自分の存在などその歴史の中に何の印も残すことはないだろうと感じた。
自分のためにも、王国のためにも……それ以外のためにも、ルーシーは最後に許されるであろう質問をサヤに問いかけずにはいられなかった。


「お教えください……あなた方はこの国を亡ぼすつもりなのでしょうか!?」




「そんなことしてアタシたちに、何の意味があるんだよ?アンタは、あたし達がそういうことをするのを望んでるのか?」


その答えにルーシーは、子供のように首を横に振る。



「だろ?アタシたちはそんなことするつもりはないんだ……ただ、探している物があるんでね。それをさがしているだけなんだよ。あ、でもあのトカゲとかドワーフたちは知らないよ?だけど、ステイビルがまとめてくれるみたいだからね……それ次第じゃない?」



「ステイ……ビル様……が?」



「もういいかな?騒がしくなってきたし、そろそろ行かないといけないんだ。んじゃあ……」



ルーシーにそう告げると、サヤは既にこの部屋の入り口で待っているハルナの方へ向かって歩き始めた。
ハルナもサヤのその行動を見て、閉じた扉に手をかけて部屋を開けようとした……その時




「お待ちを!私が、城内をご……ご案内いたします!」


「「……へ!?」」


ルーシーの目は真っ赤に染まり、潤ませながらハルナたちの姿を捕える。

ルーシーは、自分の中で大きな賭けに出ていた。
どこの者ともわからない者たちに自分の気持ちを打ち明けることは、これまで確実な先手串を選んできた人生において最も危険な勝負に出ていた。
だが、ルーシーの心の中ではこれが最善なものと判断していた。



「私は、この国を守りたい……良くしたいだけなのです。それにあなた方の行動が、危険でないと判断しました。それに、きっとこの世界であなた方に敵う者はそうそう……いえ、おそらくいないでしょう。だからこそ、あなた方の力を……お借りしたいのです」


「力を……」


「借りる……ですか?」



ハルナとサヤは、ルーシーの不可解な発言を二人で繰り返した。











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