問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-81 ルーシー・セイラム2








「――お前たちは、何者だ?」


その言葉を聞いたハルナは当初、今までに聞いたことのないルーシーの声に驚いてはいた。
だが、その言葉の色の裏にある感情には怒りの色は見えず、未知なるものに対する警戒心の方が強いと感じた。
ハルナは初めの設定の通り、”自分たちはお使いでここに来た”ことを説明し、怪しいものではないことを告げようとした。


――しかし


「フーン……なんで、そんなこと言うの?それってさ、メチャクチャあたし達に失礼なんじゃない?アンタはあたし達に感謝の気持ちがあったからここに呼んでくれたんじゃないの?」




その言葉を聞いてもルーシーは狼狽えることなく、自分の背後に浮かべた警戒を解くことなく毅然とした態度でサヤの言葉に応えた。



「……いいでしょう、その疑問にお答えします。まず、あなた方には感謝の気持ちがあるのは本当のことです。ミカベリーがあの男に付きまとわれているのは本人だけでなく、王国側の業務にも支障が出ていたためその者を一時的にでも我々に害もなく追い払って頂く行動には感謝をしております」



サヤはあの行動が自然に起きたように見せかけていたが、その不自然さからあの現象は人為的に起こされたのもだと判断したルーシーのことを認めつつ次の言葉を待った。



「……ですが、それ以上に不自然なことが多いのも事実。例えアクセサリの素材が散らばったのはミカベリーのせいだとしても、そのきっかけとなった”もの”は自然の力では証明できません」



ルーシーはあのアクセサリーが金属の素材で紡がれており、通常は切れてしまうものではないことを周囲の目撃者の情報から調べさせていた。
しかし、その事実を突きつけたとしても、うまくこの部屋まで入り込んだ二人はそのことに対して知らぬふりをするだろう。
実際にこの二人が行ったという証拠はどこにも残っていない……しかし、そこから考えれば、完全に証拠を残さずにやってのける力の持ち主であるとも取れる。

はたしてこの二人は敵か?……それとも、味方か?
そして、この王国に近付いてきた目的は一体?


ルーシーは、頭の中で様々なことを想像し用意をして、二人の前に対峙した。
その結果、一つの事実をようやく掴むことができた。


ルーシーの背後から、人型をした精霊がハルナとサヤの前に現れた。



「あんた、精霊使い……なのか?」



精霊から声を掛けられたハルナは、その言葉にどう答えていいか困っている。
この世界でなるべく自分の正体を隠すべきだと行動してきたが、そろそろ限界が来たのかもしれないとそのことを告げようとした。


「……やはり、そうなのですね!?この精霊は私の契約精霊で”フランム”と言います。人前では滅多にその姿を見せることはありません、そのため普通の方にとっては人型の精霊は大変珍しいものです……ですが、あなたは驚いた様子もなく、他の状況でお困りになられているようにも見受けられます」


「それに……この人も精霊使いだ……それも、どうやってそんな大きな元素を……!?」


フランムの声に、ルーシーは驚く。
常に冷静なフランムが、これほどの動揺する姿を見せるということは何かるということなのだろうと。


「で、どれくらいの規模なんだ?」


「……この人の持つ元素は……大精霊クラスだよ!!!」



自分の信頼のおける相棒からの言葉に、ルーシーはもう一度ハルナたちに向かって問いかけた


「――お前たちは、何者だ!?」







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