問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-75 入口







ハルナは地下牢への入口を見つけ、そこに向かっていく。
サヤたちも、ハルナの後に続きその後ろを何の抵抗もなく進んでいった。

その入口は、地面から生えたような正方形の小屋の前に、鉄格子の扉が付いている。
そんなことができるのは、土の精霊使いだろうとハルナはその様子を見ながら警備兵の近くまで来た。


「すみません、これを……」



ハルナはそう言って、一通の手紙を入り口前に立つ二人の警備兵の一人に差し出した。
差し出された警備兵は、黙って差し出された手紙の端を掴み受け取り、封を開けてその中身を取り出して目を通した。




「お前たちか……あの山の麓のドワーフを連れてきたという者は?」


どうやら既にイナたちを連れてくるという話は、王宮の中に知れ渡っていたようだった。
きっとこれは、ソイが王都にブロードの名義で申請を出す際に流した情報だと思われる。
一部の者たちからは、このことに関しては反対意見もあったが、全て良い方に進んだようだ。

ステイビルがこの状況を読んでいた通りとなったようだ。
今回イナを連れていくということは、あのグラキース山を収めていた長老の一人を捕縛したということだ。
このことは今の王国にとって、戦況を変えることのできる一手になるかもしれないと期待されていた。
したがってこの情報を前もって流すことにより、今回の申請もブロードの”信頼”以上の力が働きスムーズに受理されたのだった。



「……えぇ、そうです」


そう答えるハルナの姿を、警備兵は上から下まで舐め回すように見る。
これも予めソイから聞いていなければ、不快感をもっと強く感じていたに違いない。
この場所は、亜人たちを拘禁しておく場所で地下に造られていた。
亜人の中にはニナたちのように魔法を扱うも者もいる。
それらは魔素を利用して行われることは、扱えない人間たちにも当たり前のように知られている。

王国は長年に渡って調べ、このの地下が魔素の濃度が低い場所を発見した。
それにより、亜人たちの魔法による抵抗を受けることなく監禁することが可能となった。



「よし――そこで少し待機していろ」


もう一人の警備兵がハルナたちにそう告げて、腰のベルトに付けられた箱の鍵をハルナたちに隠すようにしながら開ける。
そこから鍵を一つ取り出し、扉に向かって手にした鍵を差し込んで数回左右に回した。


――キィィィィ


扉の蝶番が、鉄の擦れる高い音をたてて開かれていく。


「付いてこい……それと」


警備兵の視線はハルナの後ろを通り過ぎて、小さな二人の姿に止まる。


「お前たちは一言も話してはならんぞ?この中に様々な種族がいるが、長寿種のお前たちには知っている者もいるかもしれん。だが、声を掛けられそれに反応したときや、お前たちから声をかけるならば、ここよりもひどい場所に送られることになるからな、気を付けておけよ……付いてこい」

警備兵の言う内容は、イナたちにとってキツイ内容ではあるが、話している内容は気を使っているようにも思えた。
この言葉も”業務上”伝えなければならないのだろうとハルナそう感じ、王都の中にも悪くない者もいるのだとそう感じながら警備兵の後を付いて石段を地下に降りていった。








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