問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-67 成果物









モイスは王宮から戻り、再び何もない山の岩肌の壁に潜り込んでその身を隠した。
空間の中でモイスは数回羽を羽ばたかせて、嬉しそうに着地をする。
背中の乗せていた小さな石を口に咥えてそっと地面に置いた。
その中からハルナとサヤが姿を見せ、モイスは首を折りサヤたちと同じ高さに合わせた。


『あれでよいのか?……サヤよ』

「あぁ、そうだね。立派な宣戦布告だったよ。よくやった、モイス!」


サヤからのその言葉に、モイスもまんざらではない様子だった。
モイスと遭遇しまだ一日も経っていないが、サヤは力と知識を見せつけることでモイスは自然とサヤのいうことを聞くようになっていた。

モイスは長い間、この世界の中で上位に君臨していた存在だったため目上に対する話し方や接し方については全く知らなかった。
それでもサヤに対する接し方は、当初の横柄なモノではなくなってきており、サヤもその辺りについては目をつぶった。
それよりもあの姉妹よりも力強い”家来”ができたことに、サヤは大いに満足していた。




「でも、本当に良かったの?ステイビルさんやナルメルさんたちに黙ってあんなことしちゃって!?」


「遅かれ早かれ、キャスメルとまた対峙しなきゃいけなくなるんだ。代わりにやってやっただけじゃないの……それに、なんかあった場合はあたしがきっちり責任取ってやるって!」


責任という言葉と同時にサヤは、胸の前で拳を握り反対の手で指をポキポキと交互に鳴らせてみせた。
その勢いにモイスも便乗し、”自分も一緒に暴れてみせる!”と鼻息を荒くした。

サヤはモイスの首を撫でながら、”その時はよろしく頼むよ!”とモイスに告げた。
そして、何かを思い出したように腕を組み、眉間にしわを寄せながら考え始めた。


「……でも、ちょっと変……っていうか怪しかったよね?」


「”怪しい”……って?誰が?」


「アンタ何も気付かなかったの!?……ったくもぉ。えっとね……」









グラキース山の麓に戻ってきたハルナとサヤ。
その姿を見付けた、ドイルが真っ先に飛び出してきた。



「――あぁ!お二人ともよくぞお戻りになられました!……おかえりなさいませ、ご無事でしたでしょうか!?」



ドイルの後ろには、ドワーフのデイムとエルフのジンが一緒にこちらに向かってきた。

二人の姿を見て、正直ジンはホッとしている。
石を頂上付近に置いて戻ったきた後に、二人の姿がどこにも見えず、もう一度頂上付近に戻り探してみても二人の姿がないことに焦っていた。
ナルメルから二人のことを頼まれていたため、いなくなったことに”追放”も覚悟をしていた。
ジンはそのことを二人に告げ、その後に起きたことを話した。
二人がいなくなって探していた時、空に大きな影が映った。
モイスがどこかに向かって飛んでいき、その後再びこの地に戻ってきたことも確認した。
そのことに一体何が起きたのかと山の麓ではステイビルたちのこととは別なところで騒ぎになっていた。



「あぁ、悪かったね。でも、もう用事は済んだよ」


「いえ、ご無事ならばそれで何よりです……それで、なぜ山の上まで行かれたのですか?」



「これを捕まえに言ってたんだ……ほら」


そう言ってサヤは、掌の上で羽を広げる水竜神の姿をドイルに見せた。








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