問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-53 裏切者
「うまくいってよかったですわね……ステイビル様」
そう言ってナルメルはステイビルの傍による際に、縛られて身動きの取れない状態で地面に転がされているオギブスを見下ろし冷たい視線を向ける。
「あぁ。これも、ドイル……お前のおか……いや、ドイル隊長の作戦があってのこと。本当に感謝する」
「何をおっしゃいますか、ステイビル様!?そんなお言葉は不要です!!……私……いえ。我々は、ステイビル様のお考えに賛同し行動したまででございますから!」
ドイルの後ろでは、その部下たちは頭のヘルムを脱いで地面に置き、二十名近くの警備兵が膝をついてステイビルに対して頭を下げている。
今よりも少し前、ドイルの側近の男が今回の作戦の全貌について質問した。
「我々は、ドイル隊長の指示……といいますか、規則に従い命令を待っていただけなのですが……実際にはどのような作戦だったのでしょうか?」
その問いに対し、ドイル自らは答えずにステイビルにその役目を譲った。
「今回の作戦は、裏切者を見つけ出す作戦だったのだ……いや、すまない。私は今はただの一般国民だったな。無礼な言葉遣いをお詫び……」
その言葉を遮るように、ステイビルの前に手を向けて発言したのは、ステイビルの前にいたドイルだった。
「何をおっしゃいますか!?ステイビル様は、今でもステイビル様です!そのようなことをお気になさる必要はございません!!」
ドイルの後ろで並んで膝を着いている備兵たちも、顔を上げてステイビルに対し言葉ではなく視線で訴えていた。
その視線はステイビルに憧れているため、それ以上弱音を聞きたくないという類の視線であることを感じた。
「す……すまない。お前たち……」
ステイビルはその視線に、感情が溢れて涙となって溢れそうになっていた。
頭の中に思い浮かぶのは、王選が終ってからの辛い日々の記憶だった。
王座を逃したことや王宮を追放されたことよりも、大切な仲間たちから引き離されていくことがステイビルにとっては何よりも辛かった……悲しみで心が張り裂けそうになった。
アルベルトと家庭を持つことになるエレーナたちは、これ以上自分に関わらせてはいけないとは思っていた。
だが、実際に引き離されてしまうと、自分の身体の一部を持っていかれているような気持になった。
最後まで残ってくれたのはオリーブだった、自分の身体の面倒も見てくれて自分の家のことも顧みずに尽くしてくれた。
……しかし、それも何者かの手によって自分の身体から引き離されてしまった。
その状態からここまでこれたことは、本当に軌跡だったとしか思えない。
あの二人に出会ったことによって……
そんなステイビルの湧き出てくる感情を察して、質問した男が気を使ってステイビルに話しかけた。
「裏切り者……で、ございますか?」
ドイルに問いかけた男は、ステイビルの言葉の後に一瞬無様な姿を見せるオギブスの姿に目をやる。
そして、現在の警備兵の中の状況に思考を切り替えた。
今の王国は、今までのような自由がなくなってしまった気がしていた。
国民に対してはそれほど変化はないが、王国の体制が大きく変わりつつあることは一般警備兵である者たちですら感じ取っていた。
それは、この国のトップが意図しない者たちについては排除するという流れがあった。
その最たるものが、ステイビルの王宮追放だった。
「あぁ……そうだ。無抵抗の敵を前に、どのような態度を見せるのかということがその判断となるとドイルは私に教えてくれた」
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