問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-48 苛立ち
「――来たぞ!!」
その声によって、警備兵たちの間に緊張感が走る。
これまで相手の攻撃の初弾は、弓の一斉射撃や魔法などによる広範囲の攻撃から始まることが多かった。
そこで相手を混乱させた上で、切り込んで王国の兵士の戦力を削っていく。
そんな攻撃が、幾度となく繰り返されてきた。
今回も同様であると、最前列の警備兵たちは長盾構えて覗き穴から相手の様子を伺う。
しかし、その様子は今までと全く異なるものだった。
「おい!な……なんだ、あれは!?」
一人の警備兵が、その様子を見て思わず声を上げた。
エルフとドワーフの混合部隊……第一射撃の範囲攻撃は行われずに、武装を解除した状態で堂々と舗装された道の上をゆったりとした足取りで現れた。
亜人隊にはは何の緊張感もなく、ただこの周囲を散歩するかのような足取りで緊張した警備兵の前に姿を晒した。
その姿に、王国側もどう対処するべきか困惑している。
「な、何をしている!?撃て!お前たち、攻撃しろ!!」
そう精霊使い達に命令を出しているのは、後ろに下がっていたオギブスだった。
「し……しかし。相手はあのような状態でして……」
「ならば、こちらの好都合ではないか!あの忌まわしい亜人どもを撃て!!早くしろ!!」
その言葉を聞き、一人の騎士団員がオギブスの前に姿を見せる。
「お待ち下さい……この場の指揮官はドイル様です。あなたはいま、そのような権限をお持ちでないはず」
「なにをいうか!?攻撃してこないなど、奴らを絶好のチャンスではないか!!我らの仲間も奴らに傷つけられているのだ、どこに躊躇することがある!!」
「しかし、今の指揮官はドイル様です。我々は命令もしくは、敵からの攻撃がなければ、こちらから手を出すことは出来ません。そうでなければ、戦場という場所は混乱に陥ってしまいます。独自の判断で行動できるときは、命の危険を感じた場合のみ、そう法律にも記してございます」
騎士団員は、オギブスの威圧に対して屈することなく自分の主張を貫く。
その言葉を聞き、他の騎士団の者も姿勢を正してその意見が間違っていないことを態度で示す。
「ぐぬぬぬ……、小賢しいことばかりぬかしおって!?そこをどけ!!!」
オギブスは自分に反抗的な態度をとる騎士団員の腕をつかみ横に押しのけようとしたが、その身体は少しも動くことはなかった。
「お、おのれぇ!!」
オギブスは騎士団員を力ずくで移動させることを諦め、自らが避けてその先に進むことにした。
「ドイル!ドイル!!」
「どうされましたか?オギブス隊長?」
「なぜ攻撃をしない!!無抵抗な今だからこそ、同志の恨みを晴らすべきではないのか!ドイル隊長!!」
「少し落ち着いてください……我々の任務は王国の地を護ることであり、亜人の討伐ではありません。相手が攻撃をしないのであればなぜ攻撃する必要があるのか……わかりかねますな」
ドイルの視線は、防御壁の前に続々と姿を見せるドワーフとエルフの様子を見つめながら、そちらには目を向けずオギブスの言葉に返した。
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