問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-33 軽率なことば
「私は……もう一度、全ての問題を解決するために……話し合いを行いたいと……思っている」
その言葉を聞き、感情を爆発させたのは傍にいたデイムだった。
「ハッ!!お前は愚か者だ!!そう言われて、話し合いの場に付いた時のお前たちの行動が許されるとおもっているのか!?まさか、自分たちのしたことをもう忘れたのか!!!それに……今お前は、ただの国民だと言った。王宮を追い出されたお前に一体何ができるというのだ!!……本当は、お前の権力を取り戻すために我らを利用しようとしているのだろうが!!そうなんだろう!?」
デイムの気持ちは痛いほど、ステイビルに伝わっていた。
実はデイムは、この会談にドワーフの未来が改善することを期待していた一人だった。
そのため、ステイビルの提案を同じ種族の仲間をジュンテイと供に説得し、同じく賛同するイナたちの願いが叶えられるように力を尽くしてくれた。
だが、結果は最悪の結末となってしまった。
デイムもステイビルの部下が暴走したことは理解をしている……だが、それは決して言い訳にはならない。
上に立つ者はそういうところにも目を光らせていなければならず、ステイビルにはその力がなかったということになる。
ましてや、これから協力し合う要人に対し危険な目に会うような状況を作ってしまうこととなったのは、ステイビルの責任である。
「……どうした!?何も言えないのか!!くそっ、何とか言ったらどうだ!!」
デイムは取り乱して、鉄格子を掴みステイビルを睨みつける。
その瞳は充血しており、ステイビルに騙された自分を責めているようでもあった。
イナたちは、デイムが苦しんでいることを知っていた。
ジュンテイの代わりに自分が身代わりになるべきだったと、その後何度も何度もジュンテイの墓の前で泣き崩れる姿を見かけた。
ステイビルのことも、初めはこんなにも悪く思っていなかった。
だが、ステイビルが王選に負けたことを聞いてから、デイムはその態度が変わった。
それまでずっと、ステイビルが王子になって再びこの会談をうまくまとめてくれるものだとそう信じていた。
デイムの中に、もうそれは叶わないという絶望が生まれた。
ジュンテイの夢でもあった、エルフとの和解も人間との協力も……全てが手の届かないところまで離れてしまった。
「すまない……確かに、私は一個人の国民だ。だが、これから協力者を探し再び……」
「それは本当に実現可能なのですか?あの……キャスメルという国王は我々と手を結んでくれると約束できるのですか?」
イナは、人間がエルフやドワーフを奴隷として扱っている者がいることを知っている。
表には出ていないが、裏では亜人の売買を行っている人間がいる。
ドワーフやエルフたちは、自分たちの集落でまとまって暮らしているため、直接人間の国とのやり取りを行うパイプを持っていない。
だから、王国にそれを直接止めるように言うことは出来ず、襲われた時に撃退することでしか身を守れなかった。
「……となれば、今の国王の政権を変えない限りここで協定を結んでも、難しいのではないですか?」
そのイナの言葉に、ステイビルは黙り込んでしまった。
「フーン……アンタがとっちゃえば?……政権をさ」
そう、軽々しく提案したのはサヤだった。
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