問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-30 ステイビルの責任





「そろそろ町の近くだ、気をつけてください」


「はい」




ハルナたちは村の入口を大きく迂回し、入口の反対側にあるグラキース山の登山口の方から村に入っていく方法を取った。
だが、そこではちょっとした小競り合いが行われており、ステイビルは仕方なくグラキース山の方へと更に進んで行った。


足元には折れた矢が散乱しており、ステイビルはその造りを見て亜人たちのものだと説明してくれた。
現在の戦況はドワーフとエルフの連合軍で、そこに王国の騎士たちが応戦しているとのことだった。

旅の途中、この村で起きている争いに付いて話を聞いた。
元々の原因はハルナが知っている内容であったが、そこから先の話がこの世界では違っていた。
しかもトラブルの原因が人間側であり、仲が良くなかったドワーフとエルフが共闘するほど恨みを買っているのだとステイビルは言う。



「で、責任とるってどうやってとるの?まさか自分の命を差し出すとかありきたりなこというんじゃないよね?」



サヤはステイビルにそう告げる。
しかし、ステイビル自身はそのつもりだった。サヤの言葉に対し、何も返さないのが答えだったのだろう。
そのステイビルに対し、サヤがさらに言葉を続ける。




「ふーん……アンタが死ねば、誰が納得するの?っていうか本当にそれで争いが収まると思う?元々は仲の悪かった種族なんでしょ?アタシが思うに人間が仮に全滅させられたら、また元の状態に戻るとおもうよ?かといってあんた達がドワーフとエルフを滅ぼそうとしているわけ?数は人間の方が多いんだろうけど、特殊能力を持つエルフやドワーフの方が戦力的に有利なんじゃない?」


「では……どうすればいいんだ!?」




ステイビルは、今まで誰にも見せたことのない感情を爆発させてサヤに振り向いた。
その白い目は充血で染まり、自分の決意をバカにされ多様な気がして感情を抑えることができなくなっていた。


だが、サヤは人を逆撫でするのが好きなようで、ステイビルのその怒りをまともに受けとることはなかった。





「大体さぁ、これは仕組まれたことだったんだよね?もしも、相手が”アンタが責任を感じて自決してその責任を取ろうとする”ところまで考えてたら……とか考えたことないの?」


「……」


「そうだとしたら……アンタ、まんまと相手の思う通りになっちゃってるってことになるよねぇ……そんなんでいいんだ?」




サヤは、ハルナが何かを自分に言おうとしたことに気付き、鋭い視線でそれを制した。
再びステイビルに目線を送り直すと、表情自体は怒りのままだったがその眼にはいつもの冷静さが戻ってきていた。

そしてサヤは、そこからさらに言葉を繋げていく。





「そうなったらアンタ……死んだ後も笑われるよ、きっと。”まんまと罠にはまって、こっちが手を掛けなくても勝手に死んでくれた!”ってね。そう考えたら、相手はアンタよりも賢いよね。移動中襲ってきた奴らも、そいつの依頼だろうしさ。でも、こうなることをわかってて少しずつ襲っていかせてるんだから……結構、性格悪いやつよね?」



同意を求められたハルナは、何を言っているのかさっぱりわからず”さ、さぁ……”と答えるのが精一杯だった。




「……動くな」





森の茂みの中に、三人以外の者が現れた。
ハルナたちは、両手をゆっくりと挙げて抵抗の意思がないことを示す。

声は一つだったが、そこからハルナたちを囲むように五人の亜人が矢をこちらに向けながら姿を現した。









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