問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

5-149 不用心








「……ねぇ、ハル姉ちゃん。何か大変なことが起きてるみたいだよ!」


「え?なんで?っていうか、フーちゃんわかるの!?」


『確かフウカは、言葉の通じない亜人や生物にもその意思が通じる能力がありましたな。その能力が今回の変化によって、その範囲が広がったのかもしれません。なんにせよ、まずはその言葉を確認しておくべきかと……』





モイスの提案を受けて、ハルナはフウカに何を伝えたがっているのかを確認した。
すると、相手は片言の単語しか伝わってこないとのことだったが、その言葉は何とか聞き取れたという。




「えーっと……なになに?……”ソ……ガレブ”……えー、ちがうの?……んー……あ!もしかして、”オスロガルム”!?」




フウカの言葉に、悪魔はその言葉が正しいという反応を見せる。




「オスロガルム?……この悪魔、もしかしてオスロガルムの使い?」


「ちょっと待ってよ……まだ聞いてる途中だから!?」


「ご……ごめん、フーちゃん!?」




フウカに叱られたハルナは、反省して下にうつむく。
モイスは、その様子を見て笑い出しそうになったが必死でそれをこらえた。
自分も怒られてしまってはかなわないと、直前のハルナの行動を見て学習をした結果だった。



フウカは、必死に悪魔の言葉を聞き取りその単語の確証を得ていく。
そして、それは”オスロガルム”、”ヴァスティーユ”、”ヴェスティーユ”、”サヤ”という単語が並べられた。

そのことを聞き、ハルナとモイスは頭を悩ませた。
完全にそれらの名は、向こう側の者たちの名が並べられていた。


ハルナはフウカにその名で間違いないが確認させたが、それは間違いないとのこと。
低級の悪魔と言えども、指示された任務を実行するにはその程度の知識は持ち合わせていないと難しい。
そのため、その名を挙げたことが間違いではないという判断にモイスとすり合わせ、二人はそう結論付けた。



「でも、それだけじゃあ何が起きてるのかわからないわ」


『しかし、この使い魔も何か焦っている様子。でなければ、我らにこうも無害に近付いてくることもありますまい』


「……うーん、それはそうだけど。何かの罠だったとしたら」




悪魔はそんなハルナたちの結論が出ない状況に業を煮やしたのか、”キー!”と一声鳴いて自分の身体を変化させていった。
そのことを警戒し、モイスは急いで悪魔から距離をとるため重力の力を借りながら急降下する。
ハルナはその行動に振り落とされそうになったが、足に力を入れて振り落とされないようにモイスの身体にしがみついた。



「――まって!!ちょっと待って!!」




必死に距離をとろうとする、慌てるモイスの行動を止めたのはフウカだった。



「何か違うよ!?私たちを傷つけるためじゃないみたい」


「え?」




ハルナも、フウカの言葉を信じられなかった。
だが、この場でこの悪魔の行動を一番理解しているのはフウカであることも確かだった。

ハルナはフウカの言葉を信じ、モイスに止まるようにお願いをする。
ある程度離れた距離から、上を見るとそこには黒い球体が浮かんでいるのが見えた。
モイスはハルナの言指示に従い、ゆっくりと浮上しその球体と同じ高さまで近づく。



「これって……なんですかね?」


『あの悪魔を構成していた魔素の塊のようですが……自分の意思でこのような形に変形するのは初めて見ました。爆発する危険もなさそうですね……存在としては落ち着いているようです』


「へー……そうなんですね」


『あ、ハルナ様!?何を!!!』




モイスの言葉が聞こえるよりも早く、ハルナは不用意にその球体に手を伸ばし手触れた。



 その途端にハルナは、再び真っ黒な視界の中に包まれていった。










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