問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

5-142 モイスの推測









「――はっ!!!!」


『ハルナ様!?どうされました!!』




気が付けば、ハルナは元の世界に戻っていた。
あの爆発の威力の恐怖で、ハルナの口からは思わず声が漏れてしまっていた。
身体を確かめるもなんの損傷もなく、ハルナ自身には何の影響も見られなかった。

次に頭に浮かんだ疑問について、ハルナはモイスに確認する。




「モイスさん……私、どのくらい眠っていましたか?」


『……?何をおっしゃっているのですか?先ほど我々はこの地に到着したばかりですぞ……もしかして、何かあったのですか!?』




モイスが言うには、ハルナもモイスも今ここに到着したばかりで、ハルナが地面を見ていたところ大きな驚く声が聞こえて心配になったとのこと。
ハルナと一緒にいたフウカに確認しても、その答えた内容はモイスのものと同様だった。
そこでハルナは、これは自分しか見ていないものだったと気付き、今見たことの内容をモイスに話して聞かせた。



『な……なんと!?そんなことが……』




モイスもハルナから聞いた話を、なかなか長い喉の奥に飲み込めないでいた。
だが、相手はハルナのため、モイスはそのことを疑うための篩にもかけずに話の内容を精査する。
そして、ある可能性を導き出した。





『それはもしかすると……ヴァスティーユの記憶を見られたのではないでしょうか?』


「ヴァスティーユの……記憶?」




ハルナの言葉を肯定し、モイスはその判断に至った経緯を説明する。




ハルナが最後に見た爆発の映像は、今この現場で起きたことがその結果であるとまず説明をする。
遠くで鳴り響いていたあの爆音からしても、この場所がこのような状況となっていることを証明している。
そして、ハルナの見た映像が全てヴァスティーユの視点であり、ハルナ自身がその映像の中で関与することができなかった。
最後にモイスは、この現象で感じた自分の考察を述べた。






『きっと、その者……ヴァスティーユは、誰かにこのことを知らせたかったのではないでしょうか』


「知らせる?……何を?……誰に……ですか?」


『これもワシの考えですが、サヤかヴェスティーユにではないでしょうか?……最後にオスロガルムは、ヴァスティーユの中に入ってこようとした感覚を感じた……そうでしたな?』


「えぇ……そうです。思い出すだけでも……気持ちが……」


『きっとそれは、オスロガルムはヴァスティーユの身体を支配しようとしていたのではないですかな?』


「そうかも!?……でも、どうして?それに、あの爆発じゃ乗り移ったとしてもたすからないんじゃ……」


『ですが、ハルナ様。ヴァスティーユも、そのように考えていたのでしょう。サヤとヴェスティーユを逃がし、自分はオスロガルムとここで最期を迎える……そう思っていたはず。しかし、どのような手段を用いたのかはわかりませんが……このように最後の状況を見せるような行動をとったのは、何らかの理由があるとワシは考えます』


「確かに……あれ?で、でも……これ、私が見てもよかったのかな!?もしかして、これってサヤちゃんにみせたかったんじゃないかな!?」





そういうと、ハルナは先ほど掌で痛みの生じた場所を再度触れたが、もう何も起こることはなかった。





『それは、わかりかねます……ですが、ハルナ様がみたというのも何か理由がある気がします。何せハルナ様は、我々にはわからないような事ばかり起こしますからな』





そういうと、モイスはハルナに向かって微笑んで見せた。
これは今のハルナの心情に対して、慮った行動だった。




「そうですね……見てしまったものは仕方ないですし。サヤちゃんを探すことは変わらないわけですから、早くこのことを伝えてあげないと!」




そういうと、ハルナはモイスにお願いして再び背中に乗せてもらった。
そしてモイスは力強く羽を羽ばたき、再び上空へとハルナを乗せて浮上していった。











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