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山口 犬

5-118 ばれた嘘






サヤは腰に掛けていた、剣を収めた鞘を外して目の前に用意された台の上に置いた。
いままでサヤの様子を見守っていたヴァスティーユが、手にしていた汗を拭きとるための布を手渡した。
サヤは額にはそれほど汗はかいていないが、その布を手にして顔に当てて拭った。

布によって遮られた視界が、再びその機能を取り戻すと目の前にはグラスに注がれた水分を用意してヴァスティーユが待っていた。
サヤはそれを手にすると、腰に手を当ててゆっくりと口の中に流し込んでいく。
だが、グラスの中の水分が三分の一ほど残った時点で、サヤはグラスから口を離した。



「!?……やれやれ、ようやくオスロガルムが気付いたようだねぇ」



サヤはオスロガルムが連れて行った悪魔の一体と意識を繋げ、その行動を見張っていた。
ラファエルから世界の崩壊が自分自身の消滅であると告げられ、これまでオスロガルムに告げてきた嘘がバレてしまった。


サヤはオスロガルムから世界が崩壊する話を聞いた時には、本当にそのことを知らなかった。
しかし時間が経過して行く中、サヤは自分自身が持つ能力を開発していく。
その際に、自分の記憶の中に経験したことのない記憶を見つけた。
しかもそこには、今よりも遠い先の時間の記憶が綴られていた。

その記憶は、きっとオスロガルムには知られていないだろうとサヤは判断する。
実際は知っていたが、時々オスロガルムにこれから起こることをサヤは確認していた。
それによって、オスロガルムはサヤが自身の中にある記憶の存在を知らないものと思っていた。

例えそれがバレたとしても、サヤは影響がないと思っていた。
自分が知っていることはあってもオスロガルムには知らないことがある。
それは、ある”事象”については、オスロガルムの口から聞かされることはなかったからだ。

今でも、その推測は正しいと思っている。
何故なら、このサヤは手にしている剣についてはオスロガルムは今の時点まで知ることがなかったためだ。





「それで、これからどうされるのですか?お母様」


「そうだね……まずは、ハルナのことを見付けないとね。どこに行ったか分からないのかい?」


「はい。いまヴェスティーユがその行方を追っておりますが、いまだにどこにいるかは判っておりません」





監視させていたヴェスティーユによると、ハルナはステイビルたちと別行動をしていると聞き、サヤは再びハルナと接触を試みようとした。

だが、その行方は判らなかった。
サヤはモイスの力にによって隠れていると判断し、この能力をヴェスティーユにも渡した。
それにより、ハルナが隠れた場所を探すことができるはずと。

あの能力は、ある一つの物質を起点に別な空間を作ることができる能力だった。
その対象が見つけ出せなければ、入ることもできない。
サヤであればその痕跡を探すこともできるだろうが、ヴェスティーユにはその能力はなかった。



「そうかい?……まぁいいさ。今まで随分と待ってきたんだ、このくらいどうてことないさ。とにかくヴェスティーユに、オスロガルムには注意するように言っておきなよ」


「はい、お母様」





そういってサヤは再び目の前に置いた剣を手に取り、扱い方を試すように何度か剣を振って感触を確かめていた。









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