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山口 犬

5-65 謎






そして、最後にステイビルが持っていた盾についての話題が出された。

あの現象は一体何だったのかということ。
オスロガルムのブレスを防いだ盾は、何か特別な装備であるに違いない。
だが、その効果を知っている者はこの中にはいない。
この中で一番の長寿であるシュナイドに、何か知っていることはないか尋ねる。
だが、シュナイドはモイスとは異なりずっと人間と関わらずに生きてきたため、そのような情報を持ち合わせてはいないという答えだった。


東西の王国は二組の双子のそれぞれが興したことは、モイスが語ってくれた内容から間違いないと判断していた。
父も母も教えてはくれなかったが、今までの歴代の王選を経験した王はこの話を知っていたことだろう。
だが、両国が宝として持っていた剣と盾は、誰が一体何の目的があってあの二人に渡したのか……それについては謎のままだった。

今回の襲撃で、また謎が増えたことに深いため息をつく。

ステイビルたちは、とりあえず今考えても答えが出ないことは後回しにした。
追撃に対するこれからの防衛や、国民の避難など考えることは数多くある。
優先順位を間違えてはいけないと、ステイビルは自分に言い聞かせるようにこの場の者たちに伝える。


そこから数日が経過するも、西の王国はあの日以降魔物に襲われることはなかった。
西の国民は一部の者は王都内に残り、自らの家やこの場所を守ることに力を貸してくれた。
残りはマギーの宿の周辺に簡易な居住をこしらえ、東西両方の兵に守られながら身を寄せることにした。
そこから希望者には、東の王国への避難もしくは移住が許可された。


そして、体勢は整い再び魔物が襲撃してきたとしても非戦闘員の避難や東西の兵が力を合わせて立ち向かえるまでに用意ができた。
ステイビルは、オスロガルムのことも探している剣のことも気になっていため、一旦東側に戻ることにした。
カステオはステイビルに感謝の言葉を告げ、これからの道中の安全を願いつつ王都を送りだした。












「キャスメル王子……そろそろお休みくださいませ。続きは私がお調べいたしますので……このままでは」


シュクルスはキャスメルにそう声をかけたが、キャスメルは今自分が行っている行動を止めることはなかった。
その外見は、誰かが見ると王子とも思えないような様相をしている。

地べたに這いつくばり、ひたすら何かを探そうとしている――その場所はクリエの姿が消えてしまう直前に立っていた場所。
カルディをはじめ、他の者たちは一旦グラキース山を降りることを提案した。
だが、キャスメルはその提案を受け入れることはなく、今までに見せたことのない姿を見せた。
その日から何かにように、クリエがいた場所を地面にへばりつきながらその痕跡を探すようになった。


そこからすでに五日は経過しているが、いまだクリエの痕跡を発見することはできていない。
キャスメルはその間、一日も山を降りずに病んだように同じ場所を何度も探し続ける……ずっとクリエの名を口にしながら。
そんな姿を見かねたカルディとアリルビートは交代で山を降りて、食料を運んでくることにした。
シュクルスとオーサはキャスメルに守る役目となったが、この状況は守ることができているのかと不安になっていた。
しかし、キャスメルの気持ちもわからないではないため、いまはキャスメルに寄り添いクリエの無事を祈るだけだった。








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