問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
5-43 王都へ
「それでは……いくぞ!」
ステイビルが手をあげ、その掛け声と共に馬車は走り始める。
王都への道程の途中で、今回ガブリエルからヴィーネに授かった加護の力を確認したほうがいいという意見が出て、その途中で確かめることになった。
まずはアルベルトから試してみると、ヴィーネはアルベルトの中に身を隠した。
そしてその力を発動させると、エレーナからは元素が抜けていくのを感じ、アルベルトの方には不思議な感覚が生まれてくる。
発動させた対象者の能力が向上するとともに回復力が早まるということだった。
だが、現在負傷をしていないアルベルトにはその効果は確かめることはできない。
そして、実際の攻撃力と防御力がどれほど上昇したのか。
それを確かめるために、ソフィーネとアルベルトは木刀の先を合わせて向かい合った。
ステイビルの掛け声とともに砂時計は落ち始め、二人はバックステップで距離を取り合う。
少しの間二人はお互いの動きを探っていたが、様子見ではその能力を見ることができないとアルベルトから仕掛けた。
ソフィーネは最初の一撃を受け、一段階速度を上げる。
今までアルベルトと相手をしたが、見てわかるほどにその身体能力が上昇していた。
そこから何度もお互いの攻撃は繰り出される度、相手の剣にはじかれて木が打ち合う高く深い音が周囲に響き渡る。
「――そこまで!!」
再びのステイビルの掛け声とともに、二人の動きがピタリと止まった。
様子を見ていたハルナの手は自然と力が入っており、握りしめていた手の中は自分の汗で濡れていた。
砂時計は完全に落ちており、五分間という時間はあっという間に流れて行っていた。
そして二人は再び木刀の先を合わせ、お互いの技術と勇気を称え合った。
「ありがとうございました……ソフィーネ様」
「こちらこそ……」
ソフィーネはもう少し、久々に力を出せる相手に付き合ってほしかったがエレーナもそろそろ限界に来ていたためこれ以上は無理だと判断した。
「それで……どうだった、加護の力は?」
ステイビルは、汗一つ流れず息も切れていないアルベルトに問いかけた。
「はい……今までにない感じですね。身体の重さを感じず、動くたびに内側から力が湧いてくる感じがしていました。ですが……」
アルベルトはエレーナの顔を見る、そこには今までにない疲労の色が見て取れた。
ステイビルもアルベルトの視線を追って、ハルナがエレーナに飲み物を渡している姿をみつめる。
「その力……嘘ではないようだが……使いどころが難しいかもしれんな。ソフィーネはどうだった?」
「はい、今までよりもアルベルト様の動きと異なっておりました。攻撃、防御、反応の面においても今までにないほど上昇しております」
ソフィーネはその続きを言葉にしようとしたが、ステイビルをはじめこの場にいる全員が感じているため口にはしなかった。
「……有用な力ではあるが、先ほども言ったように使いどころが難しいな。それよりも精霊の力を今まで通り使用した方がいいのかもしれん。それともこれから使っていけるようになるものかも見極めなければな」
ステイビルの言うことは正しいと、この場のもの全員が感じていた。
アルベルトやソフィーネの実力以上の敵に使われるべきであろう今回授かった能力であるが、今まではそのような敵に出会っておらず現時点の能力で対応が可能だった。
あるとすれば回復力の増加の面もあるが、それは戦闘時以外の場面でも使用できるため危険な状態でなければ問題ない。
とにかく、鍛えれば何とかなるのかなどを含め今後の課題とすることにした。
ステイビルたちは疲れたエレーナを除き、野営の準備を開始した。
エレーナも三十分もすれば、空になった元素が回復し身体を動かせるようになった。
そして、一夜明けステイビルたちは再び王都を目指して馬車を進めていく。
その間、何も問題は起きず一同は無事に王都までたどり着くことができた。
しかし、王都の中は今までにないほどにあわただしく緊張した空気が流れていた。
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