問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

5-42 落ち着いた時間







その夜……
全員は再び、あの店に集まった。

食事を摂り終えたステイビルたちは、酒とつまみを目の前にして報告と事実の確認を話し合う。
その驚きは初めてことを知るソルベティとマーホンにとって、食事の後でよかったと思うほど衝撃的な話題が続いた。


ステイビルたちは、ガブリエルと別れてからすぐに、フレイガルの町へと帰還した。
それに要した時間は往路の三分の一程度の時間だけで済んだ。
勿論それは、ガスによる影響を受けることがなく、それ以外の障害もなくスムーズに進むことができたためだった。
ガスの噴出は、ステイビルたちが町に戻るまではシュナイドに止めてもらっていた。
サナのヒールが効果を見せてからガスの噴出は止まっているため、町の方でも異変に気付き始めている者もいた。
それも、今は町の中に戻ることを最優先として判断した結果だった。


ガス地帯を抜け、その入り口にはソルベティが待っていた。
そこには数人の警備兵とガスを管理している者たちと言い争っている姿があった。
やはり、ガスの供給が止まったことにより、その様子を見に来た者たちが中に入って何が起きたのかを調べたいと言っていった。
それをソルベティが、いまステイビルたちがこの地帯を捜索しているため、何らかの事情があってのことだと中に入ることを止めるよう説得をしていた。
だが、そのやりとりも遠くからステイビルたちが姿を見せたことにより争いは無事に収まった。


ステイビルはその具体的な理由は告げずに、ガスが止まっているのは一時的のことであるため問題ないと説明をすることで納得をさせた。
すると言葉通り、ステイビルたちが安全な場所に付いたと同時に独特の臭気が漂い始め、いつもの”危険な場所”へとその姿を戻した。


そして、ステイビルたちは一度宿に戻りマーホンにまたあの店を予約させてもらうように頼んだ。
その依頼に、予約は必要はないと思ったが、マーホンはステイビルの指示に従った。




「……さて、これからどうするべきだと思う?」


マーホンとソルベティだけでなく、ハルナとエレーナもサナとブンデルの話を聞き、改めて事の大きさをかみしめていた。
そのサナは、肩に乗ったシュナイドに対し辛みの強い赤い粉が掛けられた肉をサナの指から奪い取り口にしていた。
シュナイドをかわいがっているサナのことを、寂しそうに見つめるブンデルの表情が哀れに感じられた。


その様子を苦笑いで見つめるソルベティは、今までの話が決して嘘ではないことという証拠であると判断した。
あの場所を管理している施設から、お咎めも何もない。
ガスが出なくなったことすらも、ハルナの意見を聞いてからそれらを認めているようにも思えた。


最初のステイビルの問い掛けに、エレーナが代表して言葉を返した。


「一旦、王都に戻ってはいかがでしょうか?今までに比べてあっさりし過ぎてはいますが、その苦労をサナさんとブンデルさんがひきうけてくれたのでしょう……結果的には、ここで必要とすべき行動は行われ、現時点ではこれ以上ここにいる必要もないかと思いますが」



「確かに……エレーナの意見は間違ってはいないだろう。正直に言って、私もそう思っているのだ。だが、何か見落としたことや、思いついたことがないかと思ってな。聞いてみたかったのだ」


ハルナはキャスメルもこの町に来て、加護を受けたのかという疑問が浮かんだ。
それを伝えると、相手の行動についてはお互い知ることができないため、考えても仕方のないことだと言われた。
ソルベティの方を見ても、ステイビルと同じ考えのようだった。


「では、数日後に王都へ戻る……そういうことでいいな?」


その問い掛けに、この場にいる者たちは頷いた。

そして出発までの間で、受けた加護について試してみたり、荷物を用意しながらその日までフレイガルの中で過ごしていった。







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品