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山口 犬

5-31 モイスとシュナイド









『お前……モイスとどういう関係だ。答えよ!?』


サナは、今までとは少し様子が違うシュナイドに状況の変化を感じとる。
だが、シュナイドからの質問に答えないと再び状況が悪化すると考え、サナは質問に対して応じた。



「あ……はい。モイス様には加護を頂いております……」


その言葉に、姿は見えないが明らかに動揺した気配が伝わってくる。
そしてその驚きは、サナの言葉に対する反応の速さからもそれが読み取れた。


『なぬ!あいつの加護だと!?……お前たち、まさか王選の関係者か!?』

「――??えっと、はい。私たちはステイビル王子と一緒に旅をしておりまして……」



そこからサナは、シュナイドにモイスの加護を受けるまでになった経緯を説明をする。
サナが伝えている間、シュナイドは何の反応を示さずにただサナの話す声を聴いていた。

そんな様子を離れた場所から見守るブンデルは、とりあえずサナの命が助かったことに安堵しつつ次の一手に対して考えを巡らせた。
今はただ見守ることしかできないが、何か起きた時はすぐに動けるように周囲に気を配りつつ二人の状況を注視した。


そしてサナがフレイガルの町に入るまでを説明し終えると、この空間には音のない沈黙が漂った。




シュナイドは探していた、その気配の後ろ隠れているモイスの存在を。
モイスは空間作り出すの能力を有しており、この二人のどちらかにその身を隠しているのではないかとシュナイドは警戒する。


「あの……シュナイド様?」


その沈黙を目の前のドワーフから


『むっ!?……な、なんだ?』


「シュナイド様は、モイス様のこと……ご存じなのですか?」



サナの質問に、ブンデルは”当たり前なことを聞いてどうする!?”と頭の中で焦る。
大竜神という存在が、話に聞く四つの属性の竜以外の話は聞いたことがない。

そんな意味のないことを問いかけて、目の前いると思われる存在の”機嫌を損ねてしまったら……”とブンデルは息を飲み込んで静かにこの状況を再び見守った。


『あぁ、知っているもなにも。ワシはアイツと殺し合った。そう、長い期間ずっと……な』


頭の中に直接響くシュナイドの言葉だが、そこにはため息にも似た雰囲気が混じっていた。



『最近生まれたお前たちは知らぬだろう……あの時の戦いのことを』


ブンデルはエルフで、ドワーフのサナも人間の尺度からすればそれよりも長い時を生きる。
だが、シュナイドが頭の中に描いている時間はそれよりも遥か遠い時間であると二人は感じていた。
そう、目の前にいる大竜神と呼ばれる存在は、この世界を造り出した存在とも言われている。
そんな存在が昔という言葉で語る時間は、ブンデルやサナが考えている時間よりももっと更に先の時間であることが伺えた。


シュナイドは最初の頃の勢いも失せて、ゆっくりとその当時のことを語り始めた。

この世界に人やその他の生物がまだ、国や町など集団で暮らすことを始める前の頃。
シュナイドはモイスと争ったことがあった。
きっかけは、シュナイドがこの世の生き物を殺めていくことに対して、モイスが説得をしたことから始まる。
モイスはその当時から姿を隠してはいながらも、この世界で生きる生き物たちに協力的に接していた。

シュナイドは自分の感情のままに、生き物に手をかけていった。
シュナイドはお腹が空いたわけではないが、その味が判らないわけでもない。
弱いものを狩りとして楽しむように、生き物を殺めていった。

モイスはその行動を止めるようにと、シュナイドに告げる。
しかしこの世界の中で巨大な存在として、その力を使うことの何が悪いとモイスの言うことを突っぱねた。


そこから、二つの存在の争いが始まった。
戦いは長い間続けられ、その一帯は何年も生き物が生息することができず、地面は焼けただれ解けることのない氷塊が周囲には突き刺さっていた。
いよいよ争いは終わりを迎えることになる、シュナイドがモイスに押し込まれた。
元々、火は水には勝つことは難しい。
それでもここまで長く抵抗できたのは、地力ではシュナイドの方がモイスよりも上だったためだ。

シュナイドは悔しがりながら、その地の地下に逃げ込んだ。
モイスに受けた傷を引きずりながら。


それが、いまこの場所となっていたとサナは知った。

「……それで、どのくらいこの地にいらっしゃるのですか?」



『そんなの数えてはおらん。我らはお主たちと違い、寿命と呼ばれるものはないからな。そもそもそういう設……』


『――はい、そこまでにしてもらいましょうかね』



またしても、この狭い空間の中に、新しい”存在”が現れた。











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