問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

4-124 作戦終了







「ハルナ様……申し訳ありませんでした!」


「大丈夫です!……それよりも、ソフィーネさんの方こそ……あの、大丈夫……ですか?」



ハルナはソフィーネの右頬に付いた赤い殴打の跡を気にしている。
ハルナから見れば、ソフィーネの容姿も綺麗といえる顔立ちをしている。
その美貌に傷が付き、痛々しさを醸し出している。


「ハルナ様……ソフィーネにそんな心配は無用です。悪いのはこの娘なんですから」


その言葉にソフィーネは、腰を折った状態で頭を上げメイヤを睨みつける。
先ほどまで存在していた、厳しい上下関係が嘘だったような厳しい視線を向ける。



「……それで、これからどうなさいますか?」


緊迫した空気を変えるべく、メリルは次の行動の確認をとる。

「……え?……わ、わたし!?」


ハルナは、その言葉をメイヤが返すはずだと見つめたが、メイヤは逆にハルナの言葉を待っていた。
そしてその言葉の向き先は、メイヤではなくハルナへと向けれられていることに遅れて気付いた。

今までの流れから、ハルナがこの中で一番命令権を持つ地位が高いと判断されていた。
戦力のあるメイヤとソフィーネの上に立ち、王選の精霊使いとして選ばれたものとしてステイビルの次に高い地位である。

まず、その者に判断を仰ぐことは当然の流れだったが、ハルナはまるでその気がなかった。



「うーん……どうしましょうか?」



ハルナは、この状況を改めて頭の中で整理する。
一番不安要素であったソフィーネは、こうして無事(?)にこの場にいる。
ソイランドでの問題は、エレーナやブンデルとサナたちが解決に向かっている。
ハルナたちの使命だったメリルは、いまこの場にいる。

この問題を作った組織は、ソフィーネを解放した後姿を消している。
いくらソフィーネでも、一人でダークエルフとメイヤを相手にするには戦力差がありすぎるため、逃がしてしまったのは仕方のないことだった。

今の状況では”そのダークエルフを負うべき”か、”このまま引き上げてステイビルたちと合流すべき”か……
この二つを天秤にかけ、一つの結論を導き出した。



「そうですね……もう、みんなのところへ戻りませんか?」


「それが良いと思います……ハルナ様」


ハルナの言葉の後、メイヤもその案に同意してくれたことでハルナも自分の判断に自信を持つことができた。
念のため、逃げたダークエルフのことはどうするべきかとこの場にいる三人に投げかけたが、そろって”今は深追いしない方がいい”との意見で一致した。




そしてハルナとメリルは馬車の準備をし、メイヤとソフィーネは二人で残りの数件の建物を回り、ソフィーネの成果と組織の証拠なる物がないかを探しに行った。
ここにはこれ以上何もないことを確認し、ハルナたちはシーモを迎えにあの建物まで戻っていった。

太陽はその姿を見せ、砂漠が続く帰り道は灼熱の中を進んでいく。
ハルナは暑さと緊張の解けた眠気の間を行き来し、メイヤの勧めの通り休めたのかわからないまま、目的地に到着した。






この建物中では、すでに争いは見られなかった。
メリルの話によると、この建物では警備兵と廃墟の者に対し、組織の者との仲が良くないようだった。
争っていたのはこの構図で、今は制圧が完了していた。


拘束されていたべラルドはすでにソイランドへ移送されており、馬車の一台が車庫から無くなっていた。
メイヤとメリルを案内してくれた男は、意識が戻り拘束を解かれて現場を取り仕切っていた。
男はメイヤの姿を見つけると、恨めしい目線を送る。
その視線に対し、メイヤは無事であることが喜ばしいと告げ笑顔で苦労を労った。

メイヤはその男に、この場を任せることを王国の権限を用いて命じた。
男は”なんで自分が……”とつぶやいていたが、メイヤは男の肩を”ポン”と叩いて励ました。




ハルナは、メイヤからこの場所でのやるべきことは終わったと報告を受けた。


「それじゃ……戻りましょうか?」



そう告げて、ハルナたちは来た時の馬車に乗り込みソイランドへ出発した。
こうして、ハルナたちの長い夜がようやく終わりを迎えた。








コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品