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山口 犬

4-118 ソフィーネ6









「ねぇ、あなた。いま、殺したい人……いる?」


その質問に対しては、ソフィーネの目が点になった。
その質問の意味……真意はどんなところにあるのか?

本来ならば、自分にとってこの世から消してしまいたいほどの憎い人物の名を口すればいいだけ。
だが、迂闊に話せばその者が本当にこの世から消してしまう可能性がある……この目の前の女が。

もしも自分を王国に連れてい行く代わりに、その者たちを始末してあげるという交換条件を出されたとしたら。
今の自分の力では、その者たちにソフィーネの怒りをぶつけることはできないと知っている。
だが、この目の前の女は、それすらも容易にこなしてしまいそうな雰囲気がある。
その返答は個人的には、拒否をしたい気持ちで満たされている。
憎いものたちではある……が、その敵は”自分の手で”とソフィーネは心に決めていた。



実際のところ、ソフィーネはまだこの手で人を殺したことはなかった。
それに近い状態にして、村の外の森に放りだしたことはある。
そこで血の匂いに誘われた獣たちの餌食になったかどうかはソフィーネが知ったことではない。
運よく生き延びた者も中にはいるだろうが、それ以降ソフィーネに再び牙をむいてくるものがいなかったため本当のことは判らなった。

でも、いつかは自らの手で確実に息の根を止めたい人物はいる。
その対象は、妹のミーチェを連れ去った人身売買の者と、実際に打った父親だ。
だからまず、そういう対象がいることだけを、マイヤに伝えることにした。



「……そう。いるにはいるのね」


マイヤは、ソフィーネの感情を考慮しそれ以上のことは聞きだそうとはしなかった。
そして、ソフィーネとの話し合いをここで終わらせた。




後日……

ソフィーネの村に王国内を定期的に巡回している警備兵がソフィーネの村に訪れた。
警備兵の隊長は、ソフィーネを呼び出し二通の封筒を渡した。

一つはソフィーネ本人宛と、もう一つはソフィーネの父親宛の書簡だった。
警備兵は、確かに渡した旨と文字が読めることをソフィーネに確認する。
ソフィーネもそれに関して問題がないことを返答した。

帰り際……まず、先にソフィーネ宛のものを誰もいないところで先に見るようにと小さい声で告げられる。
そして警備兵たちは、村に特に大きな問題がないかを確認しそのまま村を通過していった。



言われた通り、ソフィーネは誰もいない森の中に入り、紐で巻かれ蝋で封をされた書簡を開封する。
そこには、王国金貨が一枚入っていた。
ミーチェがいなくなったときに父親の前にあった金額よりも、多い金額がいま手元にある。

複雑な思いを胸の奥に仕舞い、これも蝋で糊付けされ折りたたまれた手紙を開く。
そこに書かれていた内容は王国軍への招集令状だった。

その下には、ソフィーネが行うべく役目とその訓練を行っていく旨が記述されていた。
与えられる役目は、先日訪れてきたマイヤと同じ職種だった。


ソフィーネは、その内容に興奮を隠せない。
あの後、何度も考えを重ねてもあのマイヤに触ることのイメージができなかった。
このまま小さな村の中で納まっていては、誰も守ることはできない。
さらなる力が必要だとソフィーネは感じていた。


この知らせが届いた際には、ソフィーネは王都に行くことは自分の中では決めていた。


そして、最後まで手紙を見ると入っていた金貨は、支度金のため自由に使って構わないことと、その金貨はこの命令を拒否したとして返還する必要がないことが記されていた。




(――?)

不思議に感じたソフィーネは、何度も手紙の内容を読み返す。
そこには、いつまでにという記述が見当たらなかった。
何か暗号のようなものがあるのではと、何度見直してもその情報はソフィーネには判らなかった。

探すことを諦めた時、手紙の下の空白に目がいく。
普通ならばただの空白としてみても問題ないが、ソフィーネはそこに疑問を感じ空白を指先で触れた。

その部分には、上にはない凸凹とした感触が指の腹に触れた。
ソフィーネの頭に、何かが閃き王国が正式な書簡として使用する綺麗な紙を地面に置いた。
そして指の先を汚し、紙の空白部分に擦り付けた。

そこには、今までになかった文字が浮かび上がり、ソフィーネの知りたい情報が書かれていた。











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