問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

4-106 砂漠の施設20








「メイヤさん!!ソフィーネさんが!!」


血相を変えて、息を切らしながらハルナが外から駆け込んできた。
べラルドを捕らえたこの場所は、馬車の出入口で大きな車庫になっている。
ハルナは、メイヤの傍に立つ女性がメリルと判ったが今はそれどころではなかった。



「落ち着いてくださいまし、ハルナ様。ソフィーネがどうしましたか?」


「ソフィーネさんが!見知らぬ男に連れ去れました!!早く助けに行かないと!!」


その一報を聞いてもメイヤには驚きはなく、それよりもハルナが手に持っている物に視点を合わせた。



「ハルナ様、その手にお持ちのモノは一体?」


「え?あぁ……これですか?」

メイヤの言葉にハルナは掌を開いて、小さな小瓶をメイヤに見せた。



「これは……どうしてハルナ様がこれを?あ、もしかしてコルムは……もう?」



メイヤが手にしている物の正体を知っている様子でしかも、コルムのことも知っていると安心した。
ハルナは、メイヤと別れた先ほどまでの様子を全て話した。
その途中で、ハルナを追いかけてきたシーモもこの話の中の輪の中に入ってきた。


「そうでしたか……でも、ハルナ様とフウカ様がご無事で何よりでした」


その言葉は決して、ソフィーネの命を下に見ているわけではなく、王選において精霊使いは王子の次に大切な存在だった。
その付き添いはその者たちを守るために、時には身代わりとなり犠牲になることもいとわない存在。

ハルナは自分が出した命令によって、その命が危険になっている状況に責任を感じていた。
メイヤにその役目を説明されても、割り切りることなどできず自責の念で心臓が握りつぶされるような痛さに襲われていた。



メイヤはソフィーネのことは心配する必要はないと思っているが、ハルナがこのままでは自分が出した指示による責任によって今後のソフィーネとの関係性および、今後の王選の旅に影響が出る可能性があると判断した。



「わかりました……助けにいきましょう。もちろん私もお手伝いさせて頂きます」

「私も参りましょう」


「え?メリル……さんですよね?」

「このような状況となってしまったのは、私のせいでもあります。多分噂で聞いているガラヌコアにいる盗賊たちでしょうから戦力が多い方がよいのではないですか?確か……ハルナ様でしたか。あなた様の精霊は風だとお聞きしております。防御に関しては少し苦手な属性ですよね?水の精霊の力があれば状況が優位になると思われますが……いかがでしょう?」



「それは……でも……」



いつもエレーナと一緒にいたハルナは、水の精霊の力に関しては疑うところはない。
エレーナはいつもハルナと一緒に行動を共にし、二人の呼吸は今では一流の域に達していた。
即席のペア、さらにはあまり相手のことを知らない状態でうまく立ち回れることができるか不安になってた。

メイヤはそんなハルナの姿を見て、ハルナに提案する。



「それでは、メイル様には防御に徹していただくのはいかがでしょうか。特にハルナ様とご自身の身を守るだけに専念していただければ、攻撃に関してはハルナ様が思うように判断されればよいと思います」

「え!?でも……」



「ちなみに、メリル様のお力は先ほど確認させていただきましたので、何の問題もないと判断いたしました。私の身も守っていただきましたので、体験済みですわ」


笑顔で話すメイヤの言葉は、メリルにとって少しむず痒い感じがした。
メリル自身は自分が何もしなくっても、あの場はメイヤ自身で切り開くことができたのは知っている。
反対に、余計な手出しをしてしまったのではないかという思いもメリルにはあった。
たまたまべラルドが負傷してくれたおかげであの場は収まったが、自分の行った一手がメイヤの邪魔になっていた可能性もあった。
だが、メイヤは今自分の行ったことを評価してくれていた、それだけでも少し気持ちが楽になる。



「どうですか?ハルナ様……」


「うぅ……」



この場で一人で決めなければならない状況で、ハルナは何が最適解か少ない経験と知識で必死に導き出そうとする。



(こうしている間にもソフィーネさんの身に危険が!?)


その考えにたどり着くと、ハルナの目には決意の力が宿った。




「ありがとうございます、メリルさん。力を貸してください!!」




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