問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
4-101 砂漠の施設15
「――誰だ!!」
誰もいないはずの部屋にすでに人がいたことに驚き、コルムは手にしたナイフを握り警戒する。
そこには男が一人、女が二人いた。
その女のうち、一人は見たことのある姿だった。
(め……メリル!なぜこんなところに!?それに警備兵……!くそ、あいつら失敗したのか!?)
コルムは、舌打ちをして今の状況を呪った。
「お、お前はコルム!」
メリルの近くにいる男が声を上げる。
その声に反応して、メリルの傍にいた女の視線がコラムに突き刺さるように向けられた。
この感覚はつい先ほどまで浴びせられていた緊張感に似ているとコルムは感じ取り足が一瞬恐怖で固まった。
「あら?あなた傷を負っているのね……」
その女は、コルムを警戒した様子もなく話しかけてくる。
そんなところまで、先ほどまで対峙していたあの女と似ていて腹が立ってくる。
だが、あの女の関係者であれば、戦闘技術は同等またはそれ以上と考えた方がいいと判断した。
それでなければ、ここまでこの複雑な建物の中に入り込めないし、メリルがこの女と一緒にいることも考えられない。
さらには、その女は自分が必要としていたものを手にしていた。その視線に気づいたのか、女はそれを目の前に突き出してきた。
「……もしかして、あなたが探していたのはコレ?」
コルムはこの場をどう切り抜けるべきか、一度に数パターンの回答を思い浮かべ検証する。
ここは、誤魔化すとそれが手に入らない可能性があると正直に認めることから交渉を始めた。
「そうだ……それは、我々のモノだ。今すぐ返してもらおう」
コルムは自分が所有権があると告げ、何も情報を渡さずにそのまま引き渡しを求める。
これが重要なものであると知られた場合、それを元にして相手がこちらに条件を突きつけてくる可能性がある。
相手が手にした物の価値が知らないうちに、できればそのまま情報を渡さないまま交渉を進めていきたいとコルムは考えた。
その言葉を聞き、女は手にした小瓶を親指と人差し指の間に挟んで眺める。
瓶の中の液体は揺れ、その表面は手に伝わる鼓動に反応し波打っている。
コルムは次の一手を打つべきか迷っていたが、そのまま相手の反応を待つことにした。
こういう時は、焦ってしまうと相手に弱みを握られてしまうことが多く、あくまでも立場が五分であることを保たなければこの場はうまくことを運べないと気持ちを落ち着かせていた。
「あなたのモノというなら……聞かせてくれないかしら。この瓶は”ここにいくつあった”と思う?」
(――っ!?)
コルムの胸の鼓動が、今までにないくらい跳ね上がる。
その表情は決して崩してはいないため、動揺したことはバレていないだろう。
そこから再びコルムは高速で頭の思考を回転させる。
実際には何本用意されているかは知らなかった、ロイから製法を聞いた際にこの液体が重要であるということだけだった。
そこから時間をかけてこの場所を特定し、いざとなったら持ち逃げしようと考えていただけで、いま初めてその物の存在を確認している。
(もうこれは掛けに出るしかない……)
コルムは女が一つ手にしているものの他にいくつあるのか?
自分だったらそんな重要なものを一つだけしか用意していないことはない。
かといって、大量に用意していれば情報や液体そのものの流出の危険性が高まる。
女の質問から数秒しか経っていないが、そろそろ回答の時間のタイムリミットだ。
「……二つだ」
コルムは自信がある表情で答えた、その間およそ三秒ほどの間があっただろう。
それは決して怪しまれる時間ではないと、コルムの中では強い自信があった。
最終的には、”在庫は他の者が管理していた”で押し通すつもりでいた。
「――おぉっと!?」
メイヤはにっこりと笑い、手にしていた小瓶を下から放り投げてコルムに渡した。
コルムはその予想外の展開に、小瓶をお落としそうになったが胸元で小さな瓶をしっかりと受け止めた。
「こ……これは?」
「あなたの勝ちよ……ただ一つは中身を検証させてもらうためこちらが持って行かせてもらうわ」
コルムはニヤッと笑い、勝負に勝ったこと喜びその証をもって部屋を出ていく。
「ま……待て!……な、なにをする!?」
警備兵がコルムを引き留めようとしたが、メイヤがそれを止めた。
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