問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

3-282 HP






「”えいち・ぴー”?……ハルナ、何なのそれ??」

「え……あ、うん。向こうの元いた世界の時の遊びでキャラ……じゃなくて、人の生命力の大きさを表す言葉なのよ」


ハルナはざっくりと、元の世界で一般的に使われていたRPGのゲームシステムのステイタス値について軽く説明をした。

「ほー、人の能力を数値化して考えるのか……いい仕組みだな」

「へー、モイス様の加護で、その私たちの”えいちぴー”が上がったのね……でも、なんでハルナのえいちぴーは上がらないのかしら?」


「あのー……」

ブンデル後ろに隠れていたサナが、静かに手を挙げて何か言いたそうにしている。
その雰囲気を感じ取った、ステイビルがサナに対して発言を促した。


「あ、でも……外れてるかもしれないですし、私がそんなこと言っても説得力もないかもしれませんし!?」

サナは、この場で発言すること自体が場違いではないかと感じ、ブンデルの背中の服を摘まんだまま慌てふためく。

「……大丈夫ですよ、サナさん。ここでは何もかもが初めてなことばかりなので、様々な状況を考慮すべきでしょう。何か思いついたことがあるのですか?」

ステイビルは、怯えながら発言しようか迷っているサナに言葉をかけ続きを促す。
そんなサナの姿を見て、ブンデルはサナの方を向きはっきりしないサナを諭した。

「サナ……そこまで言ったのなら話した方がいいよ。ほら、みんな待ってるじゃないか」


サナは意識をステイビル以外に向けると、全員がこちらに意識を向けていることを感じた。
ブンデルの言葉にサナは決心して、背中を掴む手に力を入れてステイビルに告げる。


「で……では。私、”ヒール”の魔法が使えるのはご存じだと思いますが、最初は傷口を治すことでその効果を判断していました。ですが、近頃では何となく感じるようになったのです」

「”感じる”?……何を?」


エレーナが先ほどから、未知なものに対して物凄く強く反応を見せる。
その内容が確定ではないにしても、その興味は沸き上がって止まらい様子だ。
そんなエレーナの勢いに対して自信がないサナは、恐る恐る自分の考えを告げた。

「はい……それは、相手の命といいますか、私の感覚では生命力の量です」

サナが言うには、ヒールを掛けると傷口が塞がると同時に相手の体力が回復していることに気付いた。
始めはケガをした相手にのみヒールを使っていたが、この旅の中でブンデルに対して使用すると疲れていたブンデルの身体の調子が回復していることに気付いた。

一日に三度しか使えない魔法のため、他の人の回数を考えるとそんなに実験はできないが、ブンデルにワザと疲れてもらっても体力は回復した。
ただ魔力に関しては、回復しないようだった。

「へー、二人でそんなこと試してたのね!」

こういうことが好きなのだろう、サナを見つめるエレーナの目がキラキラと輝く。
エレーナは自分も試してみたいことがあるのか、今度一緒に実験をさせてもらおうと考えた。

「……それで、それがいまのハルナ様の状況と、どういう繋がりがあるのでしょうか?」

ソフィーネがエレーナの言葉に続けて、話しを先に進めさせようとした。

「それで、今回のハルナさんの件で思いついたことは二つです」

「そ……それは?」

ハルナは身を乗り出して、その話しの先を待った。
モイスもサナのことをずっと見守っていた。


「一つ目は、ハルナさんが何らかの理由でモイス様の加護を”受けることができない”ということ――」

「そんなことは、この状況を見ればわかって……」


ブンデルはサナの言葉を聞き”何をあたりまえなことを”と言いかけたが、その途中でナンブルが息子の発言を止めた。

”何らかの理由”……それは今は判らないが、そういう原因でハルナが加護を受けられないことはこの場にいるほとんどの者がそう考えていた。
その原因が”プラスな面が働いているのか”、それとも”マイナスな面が働いているのか”は、これから調べていく必要があるだろう。
更にサナは、話しを続けていく。


「……二つ目は、ハルナさんが”モイス様の加護を受ける必要がない”ということです」

「……ん。そういうことか」

サナが出したその仮説に、反応示したはナンブルだった。
同時に、ステイビルとソフィーネも同じ結論に達していた様子だ。

「……それってどういうことですか?」

ハルナ自身はサナの仮説がわかったようなわからないような、モヤモヤとした霧が頭の中で邪魔をして早くそれをスッキリとさせたい気持ちだけが前に出てきていた。

「ハルナ様、サナさんがお考えになられていたことはこういうことです……」

ソフィーネがハルナに対して、サナが考えた二つ目の理由を説明した。

モイスの加護を受ける必要がない……それは既にハルナの能力値が、”上限に達しているのではないか”ということだった。
そのソフィーネの回答に対し、サナは間違いではないと頭を数回縦に振った。
ナンブルもステイビルも、同じ回答に辿り着いていた。









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