問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
3-223 東の王国27
二対一の攻防が続いている。
エンテリアとブランビートは、僅か十数分前の動きとは異なっている。
気にかけるものは、今まで一緒に過ごしてきた息の合った身近な存在だけだった。
いや、相手を気にかけることなど無くまるで二人が一つの存在であるかのような動きを見せていた。
その動きの変りように、トライアは急速に情報を修正している。。
今まで自分の方が優勢であると思っていた状況が、次第に変化を見せていた。
それでも、自分が望んでいない方向へと変わってことに対して苛立つことはなく、淡々と二人の攻撃を防ぎつつ致命傷を狙い続ける。
ようやく二人が相手の反応速度を理解し始めたところ、エンテリアの剣がトライアの身体に傷をつけ始めた。
先に相手から傷を負わされたことにより即座に反撃に出たトライアだが、ブランビートの盾によって弾かれた。
ここから、五分五分であった状況を示す天秤は六対四へと傾き始める。
攻撃の回数が十回のうち一回くらいの割合で届いてた剣は、次第に二回三回とその回数は増えていった。
それに合わせて、トライアの切り傷は増えていく。
だが、不思議な現象をエンテリアは見る。
エンテリアが付けた切創は、相手の動きを奪うための傷が多かった。
人であれば、腱を切ればその先の関節は動かないはず……だった。
肘、肩、手根、掌に対し行った攻撃は、それらを切断するに十分な深さだった。
だが、トライアはそれらのことがなかったかのように腕を振るい続ける。
更にいえば、そこから血は一滴も流れていなかった。
そのことに気付いたエンテリアは、ブランビートに声を掛けた。
「ブランビート!」
「あぁ、わかってる!」
どうやらブランビートも、同じことに気付いていたようだった。
二人は同時に力任せに胸部を蹴り付け、トライアは腕を交差して攻撃に耐えてみせた。
その攻撃によってトライアは後方に下げられ、両腕を使ったことにより次の攻撃に移ることはできなかった。
そうすることによって二人はトライアと距離を置き、今まで続けてきた攻撃を不利にならない形で止めた。
エンテリアは、剣の刃をみて相手の血や組織が付いていないことを確認する。
そして、頭に浮かんだ一つの可能性をトライアに告げた。
「お前……魔物か?」
「くくくくくくく……酷いやつだな。化け物の扱いか?それとも、俺の強さが……っていうわけでもなさそうだな。……ようやく判ったか、そうだ俺は人の姿をもらえたんだようやくな」
「もらえた……だと?誰からだ?お前の目的は一体?」
「そろそろ、教えてもいいか。実際目的にも辿り着けたわけだしなぁ……おい、そこの二人こっちに出て来い!」
ブランビートは不意打ちを考慮しトライアの方を向いたままだが、エンテリアは構えを解かないまま顔だけで後ろを振り返る。
家の影から、エイミとセイラがゆっくりと姿を見せた。
「エイミさんセイラさん……どうして、戻って……まさか、この魔物のことを!?」
驚いてこっちを見るエンテリアに、セイラは否定するために手を顔の前で必死に振る。
否定してくれたおかげで、安心感が押し寄せてくるが状況に変化はない……むしろ二人が戻ってきたことでまた戦い辛い状況になると感じていた。
「それで、あなたは一体何者なの?」
エイミが、人間に見えてそうでないものに対して問いかける。
その姿は堂々としたものだった。
エイミもセイラも、精霊と契約してから自分の周りに起きてきた今までにない経験をしている。
今回も未知なことが起ころうとしているが、それを否定することもなくありのまま受け入れようとする。
「ほぉ……ぅ、随分と肝が据わっているみたいだな。ところで聞くが、お前たちは”精霊”の力を既に宿しているのか?」
トライアの質問に、二人は一瞬驚きを見せた。
誰にも見られていないはず……でも、目の前の男は精霊のことを知っている。
二人は頭の中でグルグルと、思慮を巡らせているが意味がないことだとすぐに気付いた。
「そうよ……それがどうかしたの!?」
次はセイラがトライアの質問に対して応えた。
トライアは探していた精霊を扱う者に出会ったことに喜び、エイミとセイラは次の反応を待ち、エンテリアとブランビートは目の前の異常な存在と今までに聞いたことない情報が持ち出され困惑している。
「そうか、そうか!やはりお前たちが!!……やっと生まれたんだな、精霊使いの者が……随分と待ちわびたぞ……これでやっと命令がはたせるのだ!!!」
トライアは、長年待ち続けた精霊使いと出会えた喜びのあまりに大声で笑う。
それと同時に身体の周りからは、黒い瘴気があふれ出した。
始めてみる現象だがエンテリアとブランビートはとっさに危険を感じ、二人の女性がいる辺りまで距離を取った。
「何ですか……あれは!?」
エンテリアは、後ろにいるエイミに聞いた。
「いや、私に聞かれても困るんですけど……」
人は異様な光景から目を離すことなく、情報の確認を行った。
今の答えから、向こうはエイミたちをなぜか知っており、こちらは相手のことを知らないのだと理解した。
笑い声が収まると、あふれ出す瘴気を抑えることなくトライアは四人の人間を見た。
「それでは、いま長い間果たせなかった命令を果たすとしよう……お前たち、死ね!!」
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