問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
3-108 確認1
「ブンデルさんも、それでいいか?」
「わ、私は特に……何もありませんよ。私は、ここの水の問題であなた方のお手伝いをしているだけですから」
そういいながら、必死に平常心を保とうとしているブンデルが顔を横に逸らしながら告げる。
「よし、それでは明日、このことについてイナさんたちと話し合おう……サナ殿が来てくれる意思があるのは嬉しいが、向こうにも事情があるだろう。その辺りは、理解しておいてくれ」
「「はい」」
そういってハルナたちも解散し、ドワーフの町で初めての眠りについた。
花の香りのするベッドの毛布に身を包み、ハルナは目を閉じて大きく深呼吸をした。
どこからか外気をとり入れているのだろう、少しだけ町が焼ける焦げた臭いが流れてきた。
明かりを消して目をつぶると、今日起きた出来事が頭の中に浮かんでくる。
サナとの合流、閉鎖されたドワーフの町への侵入、ブウムとの交戦
この町が受けた被害は、ハルナたちが関わったことによるものではないか……本当にこれでよかったのか?
(いらないお世話だったんじゃ……)
幼い頃一緒に過ごしてきた、サナさんたちの仲間も亡くなってしまった。
でも、あの時はやられない様に必死に対応した、みんなを守りたい気持ちがあった。
だってあの時はヴェスティーユたちもいたんだから。
残ったドワーフたちは、人間のことを受け入れてくれた。
サナも、ハルナのことを信用してくれて恋愛話で盛り上がった。
やっぱり仲間として認められるのは、嬉しいことだ。
(この世界に来てどのくらい経ったんだっけ……)
ふと、一緒に過ごしてきた家族の顔が頭に浮かぶ。
前ほどではないが、やはり思い出すと胸が息苦しくなってしまう。
「ハル姉ちゃん……?」
フウカが、ハルナの感情の波を感じ気を使って声をかけた。
「ごめんね……だいじょうぶ。……大丈夫よ」
ハルナは今も外れない指輪をそっと触れると落ち着いた気持ちになり、そこからゆっくりと深い意識の中に潜っていった。
一夜が明けて食事が終わり身支度が整った頃、話があるとのことでハルナたちは長老の部屋に呼ばれた。
メイドに連れられ、ステイビルを先頭に大きな広間に向かって歩いていく。
「……どうぞお入りください、長老がお待ちでございます」
昨夜の会食では笑顔で気軽に接してくれていたドワーフも、いまは真剣な表情で仕事をしている。
ハルナも気を引きしめて、部屋の中に入っていった。
「お時間をいただき、ありがとうございます」
「昨夜はゆっくりと、お休みになられましたか?」
「昨夜は我々をもてなしていただき、大変楽しい時間が過ごせました。感謝いたします」
上から聞こえたドワーフの長老の言葉に、ステイビルがお礼を返した。
挨拶が終わり、ハルナたちも下げていた頭を上げ、その姿を確認した。
(……あれ?)
ハルナはドワーフの三姉妹がいる場所を見上げ、違和感を覚えた。
さらに目を細めてみると、ドワーフの影が二人しかいないことに気付いた。
ハルナはきょろきょろとして、周りを見ると部屋の端に一人で座っているサナの姿が見えた。
同じことに気付いたステイビルが、再度上のドワーフに話しかける。
「これは……一体、どういうことなのですか?」
その声に応じ、イナが立ち席を立ちこちらに近付いてくる。
「どうやら……ご説明しなくても、わかりそうな雰囲気ですね」
その言葉にステイビルは、横目でサナを見てもう一度イナと目を合わせる。
「もしかして、お話とは……サナさんのことでしょうか?」
「そうです。サナがあなた方について行きたいと……申しているそうですね?」
ステイビルは、この状況をサナが既に身内に相談したものと判断した。
そうでないにしても、こちらの対応は昨夜話し合った通りで、要はドワーフ側がそのことを”どう思っているか”に尽きる。
「はい。そのことについては、ハルナからサナさんご本人から要望があったと伺っています」
ハルナは気になってサナの方を見るが、サナは下を向いたままうつむいてじっとしている。
「それで、あなた方はサナをどうされるおつもりですか?」
「我々としては、ドワーフ側が良ければ手伝って欲しいと考えているが?そちらについてはどのように考えておられるのだろうか」
ステイビルは昨夜みんなで話し合ったことは省き、決定したことだけを告げた。
その言葉を聞いたうえで、イナはその返答をする。
「こちら側としては、サナを外に出すわけには行きません。なぜなら、サナは長老の一員なのです。この町を運営していく”義務”があります。自分だけの欲望で勝手に町を出るなど裏切り行為です、町に残された者や過去の長老に対しても示しが付きません」
「それでも出ていくというならば……あなたと私たちとの縁はこれまでだってことよ、サナ。そして、二度とこの町には入ることはできなくなるでしょうね」
イナの言葉の後に、隣にいるニナがサナが町を出て行った場合の展開を告げた。
「ですが、私たちはサナを町の外へ出すことは許さないでしょう。そう、サナがバカな考えを忘れてくれれば、またいつも通りの私たちに戻るのです……ねぇ、サナ?」
「――ちょっと待ってくれ!?」
今まで黙っていたブンデルが、立ち上がって突然声を荒げる。
          
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