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山口 犬

3-106 会食






大きなテーブルに、様々な料理が乗った皿が並ぶ。
皿の模様も今までに見たことのないようなデザインで、料理が映える皿が使われていた。


流石、手先が器用なドワーフの技が道具や料理、様々な場面で見受けられた。





「さぁ準備も整ったことですし……では、始めましょう!」




イナの合図で、会食が始まる。


最初は、お互い緊張しているのかあまり言葉を交わさず、取り分けられる料理を眺めていた。
次第に、ハルナ、エレーナ、ソフィーネや三姉妹同士の身内での会話が聞こえてくる。
そこからは徐々に緊張も解け始めて、皆で会話を交わすようになってきた。








「ナニコレ、美味しい!!」





ハルナがまず口にしたのは、チーズの入ったジャガイモのポタージュスープだった。




ニコニコとして、ハルナの傍に給仕の姿をしたドワーフが寄って来て話しかけた。





「これは芋を細かく刻み、じっくりとチーズを入れて煮込んだものですよ。ドワーフ秘伝の隠し味も入っております」






ハルナが声を出して、喜んでくれたのが嬉しかったようだ。

ドワーフはその後も、いろんな料理の作り方などを説明してくれた。
それを真剣に聞いていたのは、エレーナではなくアルベルトだった。


途中でアルベルトからも質問をされ、二人で調理の話で盛り上がっていた。



エレーナは緊張からお酒が進み、少しずついつものエレーナになってくる。



すると、その飲みっぷりにジュンテイが気に入ったようで、自慢の酒を持ち出してきた。





「それって、俗にいう”ドワーフの涙”っていうやつじゃ……」




「なんじゃそれは?」


ジュンテイは瓶の蓋をあけ、銀のレードルにとってその香りを味わう。




「ドワーフの方が作っているお酒は、とっても旨いという噂です。なんでも一口、口にするとその旨さのあまりに泣いてしまうことから、そういう名前が付いたって言われてますね。その他に、祝い事のうれし涙、度数が高すぎてむせて出てくる涙……いろんな噂がありますよ」





「ふぅむ、そうなのか……確かにこれはドワーフに代々伝わる酒で、ずっと同じ瓶で作っておる。各家でそれぞれの特徴見ないなものもあるみたいだがな」




そう言って、ジュンテイは酒の入ったレードルを差し出し、エレーナはグラスに注いでもらった。
ジュンテイも自分のグラスに酒を注いで、エレーナにグラスを向ける。


それに応え、お互いのグラスを打ち合い、耳に心地よい高い音が鳴り響いた。




「(クイッ)……ゴホッゴホッ!?」





そんなエレーナの様子を見て、ケタケタと笑うジュンテイ。
そんなお酒を平気で飲む、ソフィーネ。

この中にグレイも加わり、より一層話しが盛り上がっていく。







随分と仲が良くなったころ、ハルナはイナの傍に行って聞きたいことがあった。








「あの、イナさん?ちょっとよろしいですか?」


「あ、はい。なんでしょう、ハルナさん?」






ハルナはバイトをしていた時の経験から、これは隣に座っても問題ないと感じグラスを手にしていなの隣に座った。






「サナさんもニナさんも、魔法を習得されたようですが。イナさんも、何か習得されているんですよね?」


「はい。私は”ヴェリタム”という魔法で、相手の言葉の真偽を見分ける魔法なのです」


「……まぁ、昔からニナは勘がいいところがあったからね。ニナに似合っている魔法なのよ」


「あ、ニナさん……」


「ということは我々との話し合いの時も、その魔法は私用されていたのですか?」




この場にニナと、ステイビルも加わってきた。





「正直にもうしあげれば、”そうです”というお答えになりますね。ですが、それ以上に王子の言葉には信頼がおけましたので、前向きに進めさせて頂きました」




「その評価はありがたく受け取っておきます。……ですが、相手がその時だけ嘘をつかずにいた場合も考えられますが。その場合は?」



「ではその時は、真実なのでしょう。その際に下心があった場合は、それは”嘘”ですので魔法の効果が表れます……何かの参考にされるのですか?」






「おっと、これは失礼しました。そういう意図は全くなくって、どのくらいの効果があるか確認したかったのです」



「うふふふ。ごめんなさい、ステイビル王子。私たちのことを心配してくださってのことですよね?わかっておりましたが、ついつい……申し訳ありません」



「いえ、大丈夫です。私の心の中もお分かりのようですし、平気で嘘を言う悪いやつはこの世にたくさんいますからね。あ、ついでですがこれからのことについて少しご提案が……」





ステイビルは、イナとニナにこれからのことについて切りだした。
そこからこの場では、事務的で会議室のような重い雰囲気が流れだしたので、ハルナはそっと席を立った。





ふと目をやると、サナとブンデルが小さなテーブルで一緒にいた。
申し訳ないと思いつつ、ハルナはそこに足を運んだ。






「ブンデルさん、もうお身体は大丈夫ですか?」



「あ、ハルナさん!」





その問いかけに対し、すぐに反応したのはサナの方だった。





「身体は大丈夫ですが……」


「どこかまだ、具合が悪いのですか?」



「いえ、サナが一緒について行かせてくれって……しつこいんですよ」









          

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