問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

2-83 拠点襲撃




金属がぶつかり合って、甲高い音が鳴り響く。
その中には、怒号の声も紛れている。

ボーキンはこの状況に、緊急性を感じエルメトに先に行くように指示を出す。



「エルメト!」

「はい!」




ボーキンに支持されたエルメトは、その音の方に向かって走り出した。



ボーキンは、ニーナを守りつつ辺りを警戒する。
その緊張間に引っ張られて、ハルナも警戒した。


カルディとソフィーネが、ハルナとクリエを守るように前に出る。
その後ろにニーナも下げられた。




――ガン!、ギン!




盾と剣がぶつかり合う音が近くなる。
その中に紛れて、水で人を弾き飛ばす音も聞こえてきた。


ハルナたちがふもとに着いた時には、敵味方混ざり合った状態で入り乱れていた。



「ふんぬぉぁぁー!!」



ドイルは、戦闘斧を腕に付けたラウンドシールドで弾き飛ばす。

斧を弾き飛ばされた男は、振り下ろした左下に向かって身体が流れる。
その隙を見逃さず、アーリスはその脇腹にすかさず蹴りを入れる。


「――グァッ!」



ドイルを狙った男は、蹴りによって呼吸を乱され悶絶する。
アーリスがドイルの無事を確認する。
が、その隙を狙ったアーチャーの矢先がアーリスを狙っている。
ドイルはその事に気付き、注意を促そうとするが間に合いそうにもない。


手を伸ばしアーリスに叫ぼうとする姿にアーリスは、後ろを振り返る。
そこには、自分を狙った矢が放たれるその様が見えた。




――ヤラレタ!




そう思って、アーリスは諦めて目を瞑る。
が、しかしいつまで経っても身体のどこにも痛みを感じることはなかった。



薄っすらと目を開けると、そこには見慣れた装備の男が立っていた。



「……ケガはないか、アーリス?」




幼い頃から聞き覚えがあり、安心感のある声だった。



「兄さん!」





声をかけて立ち上がり、近付こうとするアーリスをエルメトは制する。



「まだだ!左!」

アーリスは、手にしていた剣を左手に持ち変え背後に振り切った。
握った柄には剣先が何か柔らかいものを切り裂いた感触が伝わる。




「グッ!」





攻撃した先を見ると、切られた男の胸元が斜めに切られていた。
伝わった感触から、骨には届いていないため致命傷というわけではないが相手をひるませるには十分だった。




――!!




その男の身体を、水の輪が身体を縛る。
上半身を抑えられバランスを崩した男は、受け身を取ることもできず前のめりに倒れこんだ。





「な、なぜお前たちがオレを狙っているんだ? た……助けてくれぇ!誰か!!!」





石の檻の中から、男が叫んで助けを求める。
その男は檻の外から狙う弓矢の先が、自分を狙っていることに気付いていた。
檻の中にいるため四肢は拘束されていないため自由に動けるのだが、隠れる場所も避けるものも何もなかった。




狙った男は、弓を引き矢を放った。




――ビョゥ!




檻の手前に小さな竜巻が発生する。
放たれた矢は、風に巻き込まれ真っ二つ折れてしまい目標物に届くことはできなくなった。



その風に気付いたエレーナは、風を作った人物の姿を探す。
山道の入り口に、その姿を見つけた。





「ハルナ!無事だったのね!!!」





先程矢を放った男は、アルベルトの攻撃を受けて戦闘不可能な状態となりロープによって拘束された。





「ただいま!エレーナも無事でよかった」




メイヤもソフィーネに目をやり、ソフィーネは一つだけ頷いた。
メイヤは満足そうに、ハルナ達の方へ歩いて行った。





「ハルナさん、ご無事でなによりです。クリエさんも、良かった」





ルーシーは、遅れてハルナたちを見つけハルナに近寄る。

東の警備隊を襲った野盗たちを一か所にまとめ、オリーブによってまた別の石の檻で閉じ込めた。






「襲撃に加わっていた、人数は八名です。特に東や西の国を示すようなものは所持しておりませんでした」


「だろうな……だが、今朝のマギーさんが言っていた人数と宿泊していた一組の人数と合わせると一致はしている」





エルメトの報告に、ボーキンが頷く。






「ボーキン様、申し訳ありませんでした。私の力が及ばないばかりにこんなことに……」


「……いいのですよ、アーリス。あなたはよく頑張りました」


「ニ……ニーナ様!?」





アーリスは驚きを隠せなかった。
本来こんなところに居てはいけない人物が、あの危険な山を越えて目の前にいる。





「それに、こんな心強い東の国の方々とも繋がりを持てることができたことは、私たちにとってこれは大きなメリットです」


「……ありがたきお言葉。感謝致します、王女様」


「ねぇ、ボーキン。東の方々にご挨拶を」


「はい、ニーナ様……アーリス、頼む」






ボーキンとニーナは、アーリスの後ろに付いて行く。
アーリスは、まずエレーナとルーシーのいる場所に向かって歩いていった。




「エレーナさん、ルーシーさん。ご紹介します、こちらのお方は西の王国のニーナ王女です」


「えぇ?王女……ってこんなところに居ていいんですか!?」


「初めまして、みなさま方。これには事情がありまして……」





ニーナはこの場にいる全員に説明をした。
これから西の王国でも、王選が開始されることになり、そのために自分の派閥を広げていく必要がある。
今回、これを機会に協力関係を結びディバイド山脈の安全に取り組んでいきたい旨を伝えた。




「お話しはわかりました……協力関係を結ぶことについては疑問はりません。しかし、ニーナ様に一つだけお伺いしたいことがございます」


「何でしょう?どうぞ、仰ってください」






ボーキンは、ルーシーのその言い方に不快感を感じていたが、ニーナが誠実に答えようとする姿を見て自分の感情を理性で押さえつけた。





「あなたはなぜ、その王選に参加されているのですか?」






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