問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
2-48 王宮精霊使い2
ハルナ達はリリィに連れられて、別の部屋へ向かう。
「次はどこへ行くんですか?」
ハルナはリリィに問いかけた。
「次は、訓練室へご案内させて頂きます。そこには指導員の方もいらっしゃいますし、いろいろと活動状況なども聞けると思います」
「わかりました、リリィさん。よろしくお願いします」
ルーシーは、これから何が起こるか分からない状況に少し興奮している。
ハルナ達は、ある部屋の扉の前に到着した。
何を言っているか分からないが、大きな声が扉越しから聞こえてくる。
リリィは扉の前で取っ手に手を掛け、扉を開けるのを待っている。
ハルナ達はその様子を不思議に思ったが、ここはリリィに任せることにした。
リリィは中の様子を音で伺い、そのタイミングを待つ。
ほんのわずかに音が止み、リリィはドアを開けた。
「ご指導中、失礼します」
「おぉ、リリィか。ようやく入室のタイミングがわかってきたようだな。そのタイミングを忘れるでないぞ」
「お褒め頂き有難うございます、レイビル様」
訓練中は、どうしても指導する側も受ける側も集中しているため悪いタイミングで邪魔を入れたくないという思惑だった。
リリィも見習いとなってから何度か怒られていたため、比較的早くそのタイミングをつかむことが出来たのだった。
「で、その者たちはなんだ?……あ、その者たちが上から聞いていた新しく入ってきた者だな!?よし、こちらへ来い」
リリィは否定しようしたが、ルーシーに止められた。
そしてルーシーが最初に、レイビルという指導員の元へ近づいていく。
ハルナ達もルーシーの後に続いた。
そして、六人が横に並ぶ。
「よし、お前たちの属性を告げよ」
順番にルーシーが火、エレーナが水、ハルナが風、クリエが土、オリーブが土、カルディが水であることをレイビルに告げた。
「よし、ではお前たちの実力を見せてもらうか!」
そいうとレイビルは、標的とろうそくの炎と木の棒を立てた。
「まずは火の者よ、その線から火の玉を出しあのろうそくを倒さずに点けてみるがいい!」
そういわれて、ルーシーは落ち着いた表情で線の前に立つ。
そして、人差し指をろうそくの芯に向け、小さな火の玉を放った。
――ボっ
一瞬にしてろうそくに火が灯る。
「ん?」
レイビルは目の前で起きたことが少し信じられなかった。
「うむ、もう一回見せてもらってもいいか?ま……偶然(まぐれ)の可能性もあるしな」
レイビルは、震える声を押さえながら、ルーシーに命令する。
その命令に応えるべく、もう一本の火の灯っていないろうそくに人差し指を向けて構える。
そして
――ボっ
またしても、小さな火の玉がすごい速さでろうそくに火を灯した。
小さな炎でターゲットに向かって性格に飛ばす技術は、初心者にできるようなものではない。
レイビルは、なかなか目の前で起きたことが信じられずにいた。
「うむ、まあそんなものだろうよ。では、次は水の者よ。あのろうそくを倒さずに炎だけを消してみるがいい」
早くなった心拍数を押さえて平然を装いながら、エレーナとカルディに課題を与えた。
二人は、どちらが先にやるかを視線で会話していた。
結局、カルディが先にやることになった。
カルディは、ヤレヤレといった態度で線の前に立つ。
掌を上に向けて、ビー玉程度の小さな水の球を作り上げる。
カルディアその状態で腕を引き、ワンハンドスローの動作で水の球をとばす。
――ジュッ
一瞬音を立てて炎は消え、白い煙が昇っている。
またしても、信じられない正確さに言葉を失うレイビル。
「次は、私ね……」
そういうとエレーナは杖を取り出しその先を遠くの炎へ向ける。
杖の先には、氷の粒が一つ浮かんでいた。
片目を瞑り、狙いを定める。
エレーナは意識して、氷の粒を飛ばした。
「えいっ」
――カン!
氷の粒は、炎を消した後解けずに向こう側の壁にぶつかった。
「よ……よし。次は土の者よ。そこのテーブルの上に石を積み上げてみせよ」
本来は的に対して石を当てさせるつもりだったが、ここまでくると初期の訓練のようなものは簡単にこなしてしまいそうで難易度を上げてみた。
まずはオリーブからやることになった。
オリーブは机の上で石垣のようなものを作って苦も無く見せた。
バランスよく組み立てていくことのセンスが問われる技術だった。
次に、クリエ。
クリエはテーブルの上に小さなピラミッドを作って見せた。
小さなブロックをしたから積み上げていきピラミッドを完成させた。
その様子を見て、レイビルは黙ってしまった。
「で……では、最後に風の者よ。あの木の柱を風で切ってみせよ」
ハルナは、いいところを見せようと鼻息を荒くして線の前に立つ。
「あ。あたしがやりたい!」
と姿を見せるフウカ。
――!?
レイビルは、口をパクパクさせて何かを言おうとしているが言葉が出ない。
「いいけど、失敗しないでよね?私たちだけ失敗するとかっこ悪いよ?」
「まっかせてー!」
フウカは両手を上にあげると、フウカは頭の上に二つの風の円盤を作る。
「それっ!」
掛け声とともに、その円盤を着の柱に向かって投げた。
――ザン!……カラカラカラ
木の柱は二つの円盤に三棟分され、地面に転がった。
「やったー!!」
フウカはハルナに褒めてもらいたそうに、クルクルとハルナの周りをまわる。
「よくできたわね!偉いわ、フーちゃん!」
時々は褒めてあげないと、機嫌が悪くなると思いハルナはフウカを褒めた。
「えへへへへ……」
照れるフウカは、ハルナの頭の上に乗った。
「あの……今ので大丈夫ですか?」
ハルナは口が開いたままのレイビルに声を掛けた。
その声に正気を取り戻し、止まっていた呼吸を再開する。
「な……何なのあなたたちは!?」
「ただの……精霊使いですわ」
ルーシーは意地悪に笑いながら、応えた。
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