問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

2-14 招かれた晩餐






「さて、遅くなってしまったね。軽食だと足りないだろう?私のところで、みんなで食事でもどうかな?」




その一言に、一同の視線がハイレインに集まった。




「え?いいんですか?」


「無論だとも。いろいろと話しを聞かせてくれないか?今まで何があったのか」




エレーナはその言葉に、うんうんと力強く頷いた。



「あの……私もいいのです……か?」




恐る恐る聞き直したのはオリーブだった。



「ん?……当然じゃないか。そういえば、他にも付いてきている者がいるんだったか?全員、来るといい」



ハルナ達は部屋で待っていたアルベルトとソフィーネと合流し、全員でハイレインの家へ移動する。







屋敷に着くと、ハイレインとディグドが、家の前で出迎えてくれた。


しかし、そこは驚くほどシンプルな家だった。
エントランスもなく普通の玄関で、庭もあるがフリーマスやスプレイズ家のものとは全く違う。




「ようこそ、我が屋敷へ」




そういって、全員を招き入れてくれた。

確かに家は小さかったが、内装や調度品などは一流のものだった。





「どうだ?狭くて驚いたか?」



「い、いえ。そんなことは……」




エレーナは誤魔化しながら答える。




「いいんだよ、無理しなくても。ただ、見栄を張るのが嫌いでね……確かに、一族の中では変わり者と言われているからな!」




あとで聞いた話だと、国も支援することを提案してくれたが親を含めた一族に恩はあるが利用されるのは嫌だった。
自分たちの生活を楽にするために、ハイレインを利用しようとしていたのだ。




「独り身だし、このぐらいの広さの方が気楽でいいものさ……」


「え!?おひとりなんですか??……こんなに綺麗なのに」




ハルナが驚く。
今の年齢でも、元の世界でモデルで通用しいそうなくらいな容姿なのだから。




「ありがとう、ハルナ。その言葉、素直に受け取っておこう」




そういって、ハイレインはみんなを食堂へ案内する。
その後ろを、ディグドが後を付いて行く。


長いテーブルがあり、横一列に座れる。

その家具は古いものというより、新しいデザインで特注品の一点ものとわかる品だ。
きっと値段が付けられるものではないだろう。


料理も、見事なものだった。
個別にコースで出されるものではなく、大皿から取り分けるような料理が並ぶ。
横には、取り分けてくれる専門のメイドが付いている。

指定すると、好みの量だけ取り分けてくれるようだ。




これは、ハイレインの配慮だと感じた。
結構クールに見えて、実は仲間意識が高いのだろう。
こうして気の置けない仲間と、みんなで食事をすることが好きなようだ。






食事も進み、軽いおつまみでお酒を楽しんでいるところ、ハルナがある提案をする。




「ねぇ、エレーナの精霊もフーちゃん経由だけど話せるようになったじゃない?その……名前とか付けてあげたらどう?」



そんなハルナの提案に、エレーナの精霊はソワソワした動きを見せる。



「……それも考えたんだけどね。でも、少し反省してほしいのよ。精霊様とはもっと仲良くなりたいけど、甘やかしすぎるのは他の精霊使いに示しがつかないわ」


その言葉を聞き、エレーナの精霊はがっくりした様子だった。




「でもね、私はそう遠くないと思っているの。私の精霊様が、フウカ様やディグド様と同じように単独で話せるようになる日が……ね」


エレーナの精霊は何も言わず、エレーナの周りをクルクルと回っている。



その光景を見て、ハイレインは次の話題を持ち出した。



「……そういえば、他の二名の精霊使いも、もうそろそろ到着する頃じゃないかな?」



そういわれて、二人は現実に戻される。

――そう。王選に参加する精霊使いとしての役割。



「どんな方なのかご存じなのですか?」


「いや、そこまではわからないな……実際にお前たちが来るまではどんな人物かも知らなかったのだ」


ブランデーを一口含んだ後、ハイレインは答えた。



「それじゃあ、ここからどういう風にして王選の旅が始まるのですか?」



「まず、全員が揃うと王の間で謁見する。そのあと、今回の精霊使い達の”実力”を見せてもらうことになる。その後、王室で話し合いが行われどちらの王子の担当とそのルートが決定される」


「それじゃあ、ハルナと別々になることも……」


「当然そういう可能性もあるだろうな……なにせ決めるのは王室側だからな」




ハルナとエレーナは急に不安になる。



「だが、そんなに心配する必要もないだろう。王選に選ばれるくらいの人物だ、困るようなことにはなるまいさ」



「そうですかね……」



ハルナは、ため息交じりにそう告げた。





「……さて、今日はもう遅いから泊まっていくといい。心配しなくても、部屋は人数分あるから。だが別に、誰が誰と一緒の部屋になっても構わんぞ?」


ハイレインは、エレーナを見て悪戯にそう告げる。
何故か、エレーナよりもアルベルトの方が耳を赤くしていた。







そうして、夜が更けていった。



次の朝、みんなで最初の施設に移動した。




ハイレインと共に入っていったが、何故か従者たちの目が鋭い。


元々、割り当てられた部屋へ向かおうとした際にハルナ達の前を歩く従者の一人に話しかけられた。



「……お前たちは、昨夜ハイレイン様の屋敷に泊ったのか?」



「――?え、はい。そうです。ハイレイン様に招かれ……」



――ドン



ハルナは急に立ち止まった従者の背中にぶつかった。
その際に鼻の頭をぶつけてしまい、その個所を擦る。



「……あの、どうされました?」


「い……いや、なんでもない」


そういうと従者はハルナ達の部屋に向かい再び歩き始めた。




午後になり、また新しい来訪者が訪れた。
これで、王選に参加する全ての精霊使いが王都にそろったことになる。



          

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