なろう作家が転生して、なろう作品の主人公になりました!〜物語を自由に紡げるチートスキルに、矛盾メーターがMAXになると死亡するデメリットを添えて〜
第50話 幸せは無限に続かない
◆
一緒にココアを飲み、一緒にトランプで遊び、一緒に歯を磨き、一緒に布団に入った。
僅かこんな字面だけの出来事だが、アズリエルとならば大きな幸せになった。
どんな時でも彼女は笑っているし、どんな時でも俺を褒めてくれるし、どんな時でも俺を幸せにしてくれた。
この異世界に来て、彼女の応援の言葉を忘れたことなんて1秒たりともない。
愛とは実に素晴らしい感情だ。
好きな人を考えているだけで幸せになれるし、好きな人を守りたいと思うと強くなれる。
俺は、それだったんだよ。
アズリエル、お前がずっと俺を見守っていてくれたから強くなれたんだ。
だから、俺はお前を守るためにこれからも強くなりたい。
強くなって、アズリエルを甘やかしたい、養いたい、尽くしたい!
物語の初めから、俺はお前のために生きていくことは決まってたんだぜアズリエル。
「ノベル。起きてますか?」
「おう、なんだ?」
「明日で全て終わるんですか?」
「だろうな。ノベルメイカーを見たら、残り3000字くらいしかない。明日、俺は誰にも言わずにひっそりとこの場を離れるつもりだ。親父にその旨は伝えてある」
「どうしてですか! ここにノベルが残ってくれないと、ナンバーズが欠けちゃいますよ!」
「そりゃ大丈夫だ。ルーラーにも伝えてある。『ナンバーズになるために強くなってくれ』って言ったら、『任せてください』だってよ。守られるばかりじゃ嫌なんだとさ、ルーラーは。イレイザーと共に戦う、獣人の格差を無くす社会を作りたいんだと」
俺は、1000G札のデザインを思い出す。
偉そうな、猫耳のおじさんの顔が描かれている。
なんでこんな差別があるような獣人が札に印刷されているか。
正解は、『獣人の格差が徐々になくなりつつある』っていう暗示だろう。
今、獣人の素晴らしさをルーラーのような可愛くて強い女の子が演説してくれればそれでいい。
だから、ルーラーにはもっと強くなって欲しい。
ハイライターなんかよりも強く、ランクレベル8以上になって、世界を変えてほしいんだ。
――格差のない社会を作り上げる理想を、俺の代わりに叶えてほしいんだよ。
「……もう、ノベルは現世に帰る用意はできてるんですね」
「あぁ。でも、まだ俺にはやり残したことが数多い。魔物を1体も倒してないし、どこかにいるとされる魔王の討伐もしてない。俺はまだまだやり残したことが多いんだ。それにな、アズリエル」
俺はベッドの中で丸くなるアズリエルに抱きつき、彼女の耳元でそっと囁くのである。
――ここは、異世界。
主人公が中心となって世界を回し、最強の名を欲しいがままにする理想郷なんだ。
ただし、俺はそんな半端なラノベの主人公なんかとは一緒にしないでほしい。
地獄のような鍛錬を積み、不殺の心で人と向き合い、困った人はもれなく救い、一夫多妻ではなく愛した人だけを愛したい。
俺は、恐らく主人公失敗だ。
強欲でなければ貪欲でもない。
最強ではなければ、SSSランクの武器も持ってない。
ハーレムでも無いし、チート能力でも無いし、ただのんびり過ごしてきた、ちょっと強い一般人だ。
でも、それでもいいんだ。
俺はそういうラノベを書いてみたかった。
なんの取り柄もない、ただ普通にファンタジーを生きる、普通の主人公に。
「好きなんだアズリエル。お前のことが大好きだ」
この4ヶ月間、アズリエルは俺のことばかりを見ててくれて。
俺の隣にいつもいてくれて、俺のことで泣いてくれて。
俺に尽くしてくれて、努力を認めてくれて、俺のために本まで書いてくれて。
ずっと、ずっとずっとずっと!
俺は、アズリエルのことが好きだったんだ。
「……ズルイです、ノベル。別れ際にそんなこと言うだなんて。そんなこと言われたら、アズちゃん……ノベルとずっと一緒に居たくなってしまうではないですか」
「ごめんなアズリエル。ただ、俺は言えなくなってしまう前に言いたかったんだ。アズリエルは可愛くて強くて、誰よりも繊細な子だ。そのくせ、強気になってドジしたり、口が悪いけど本当は本心じゃない。そこが可愛くて、俺はどうしようもなかった。だから、俺はお前のことが好きだ!」
アズリエルは俺の服を掴み、胸の中で震え始める。
ごめんな、最後の1日がこんなにも湿っぽくてよ。
それでも、俺はお前に伝えなきゃならなかった。
「アズちゃんだって、ノベルのことが好きです、愛しています! 物語の設定なんて関係ない! アズちゃんは心の底から本当にノベルのことを愛しています! 努力しているところを見るとキュンとして、笑顔を見るとドキドキして、手を繋いだら幸せになった! ノベル、アズちゃんは君を愛してます!」
「あぁ、ありがとなアズリエル。俺のこと、そんなふうに思ってたのは流石に驚いたけどな?」
「いつも言ってたじゃないですか! 『ノベルはカッコいい』って! 以前、アズちゃんが担当した人は、たった3時間で魔王を倒しました! 努力もせず、チートスキルですぐにこの物語をクリアしていきました! アズちゃんはその時、何もできなかった。ノベル、今回はちゃんとお役に立てましたか?!」
「あぁ、超絶お役に立ったぞ? お前がいたから、俺はこんなにも頑張って来れたんだぜ?」
「ううっ……ノベルぅ!」
――アズリエルは泣きまくり、俺は上から被さって彼女のことを何度も撫でてあげた。
アズリエルはアズリエルなりにちゃんと考えてくれている。
ただのグータラ娘なんかじゃない。
「好きです、好きです、大好きです! 元の世界に帰っちゃ嫌だぁ! うわぁぁぁぁん!」
俺は黙ったまま、アズリエルが泣き疲れるまで永遠に彼女のことを抱き続けた。
今までありがとう、アズリエル。
ちゃんと、想いが伝えられて良かった。
これで、もうこの世界に思い残すことは何もない。
あとは、俺のことを引き継いで行ってくれ。
ステイプラーの能力は持ち帰ってしまうけど、それはマジでごめん。
ハイライター、本当に良い兄貴分だった。
イレイザーとルーラーはもっと幸せになってくれ。
親父は、俺が小説を書くところをここで見ててくれ。
ナンバーズの人たちも、これから世界を変えていってほしい。
今までみんな、本当にありがとう!
ありがとう、ありがとう……。
◆
かなり激しい音を立てて、雨が降っている。
耳に飛び込んできた雑音に驚いて、俺はザッと目を開けた!
すげぇ雨だ!
親父の天気予報では、旅立つ朝は晴れだって言ってたはずだ!
親父……まさか、間違えやがったか?!
土砂降りの雨の中、1人寂しく外に出て行くのは嫌だなぁ……。
あれ、アズリエルがいない!
まさか、1人で部屋に帰ったのか?
「起きろノベル!」
「うわっ、テメェ! また俺の部屋のドアを壊しやがったな! しかも、今日は有給を取るってあれほど」
「今日は特別な日だぞ! パーティーだパーティー! 俺様たちがカップル誕生を爆発的に祝うのだ!」
――は?
今、お前はなんて?
「え、えっと……ま、まだ朝の5時だぞ! パーティーは今日の18時だろ! 8時から勤務だってのに、これからどうすんだこのバカ!」
「待ちきれんのだ! 俺様がパーティー会場を設計するとあれば、朝早くから行動して完成させておくしかあるまい!」
「ほ……本当にバカなのかよ! パーティー会場は食堂なんだぞ! ええっと……夜だけ貸し切りだ!」
「は、そうだったか! いや、だがやれることはあるはずだ! それではノベル、張り切っていくゾォ!」
そして俺はハイライターに引っ張られて外に出る!
4階でイレイザーとルーラーと出会い、エロいことをしてたことを指摘する!
――何が起こっているのかはもうすでにあらかた把握した。
嬉しいなぁ2度目のパーティー。
……そんなに、俺とずっと一緒にいたいってことなんだな?
一緒にココアを飲み、一緒にトランプで遊び、一緒に歯を磨き、一緒に布団に入った。
僅かこんな字面だけの出来事だが、アズリエルとならば大きな幸せになった。
どんな時でも彼女は笑っているし、どんな時でも俺を褒めてくれるし、どんな時でも俺を幸せにしてくれた。
この異世界に来て、彼女の応援の言葉を忘れたことなんて1秒たりともない。
愛とは実に素晴らしい感情だ。
好きな人を考えているだけで幸せになれるし、好きな人を守りたいと思うと強くなれる。
俺は、それだったんだよ。
アズリエル、お前がずっと俺を見守っていてくれたから強くなれたんだ。
だから、俺はお前を守るためにこれからも強くなりたい。
強くなって、アズリエルを甘やかしたい、養いたい、尽くしたい!
物語の初めから、俺はお前のために生きていくことは決まってたんだぜアズリエル。
「ノベル。起きてますか?」
「おう、なんだ?」
「明日で全て終わるんですか?」
「だろうな。ノベルメイカーを見たら、残り3000字くらいしかない。明日、俺は誰にも言わずにひっそりとこの場を離れるつもりだ。親父にその旨は伝えてある」
「どうしてですか! ここにノベルが残ってくれないと、ナンバーズが欠けちゃいますよ!」
「そりゃ大丈夫だ。ルーラーにも伝えてある。『ナンバーズになるために強くなってくれ』って言ったら、『任せてください』だってよ。守られるばかりじゃ嫌なんだとさ、ルーラーは。イレイザーと共に戦う、獣人の格差を無くす社会を作りたいんだと」
俺は、1000G札のデザインを思い出す。
偉そうな、猫耳のおじさんの顔が描かれている。
なんでこんな差別があるような獣人が札に印刷されているか。
正解は、『獣人の格差が徐々になくなりつつある』っていう暗示だろう。
今、獣人の素晴らしさをルーラーのような可愛くて強い女の子が演説してくれればそれでいい。
だから、ルーラーにはもっと強くなって欲しい。
ハイライターなんかよりも強く、ランクレベル8以上になって、世界を変えてほしいんだ。
――格差のない社会を作り上げる理想を、俺の代わりに叶えてほしいんだよ。
「……もう、ノベルは現世に帰る用意はできてるんですね」
「あぁ。でも、まだ俺にはやり残したことが数多い。魔物を1体も倒してないし、どこかにいるとされる魔王の討伐もしてない。俺はまだまだやり残したことが多いんだ。それにな、アズリエル」
俺はベッドの中で丸くなるアズリエルに抱きつき、彼女の耳元でそっと囁くのである。
――ここは、異世界。
主人公が中心となって世界を回し、最強の名を欲しいがままにする理想郷なんだ。
ただし、俺はそんな半端なラノベの主人公なんかとは一緒にしないでほしい。
地獄のような鍛錬を積み、不殺の心で人と向き合い、困った人はもれなく救い、一夫多妻ではなく愛した人だけを愛したい。
俺は、恐らく主人公失敗だ。
強欲でなければ貪欲でもない。
最強ではなければ、SSSランクの武器も持ってない。
ハーレムでも無いし、チート能力でも無いし、ただのんびり過ごしてきた、ちょっと強い一般人だ。
でも、それでもいいんだ。
俺はそういうラノベを書いてみたかった。
なんの取り柄もない、ただ普通にファンタジーを生きる、普通の主人公に。
「好きなんだアズリエル。お前のことが大好きだ」
この4ヶ月間、アズリエルは俺のことばかりを見ててくれて。
俺の隣にいつもいてくれて、俺のことで泣いてくれて。
俺に尽くしてくれて、努力を認めてくれて、俺のために本まで書いてくれて。
ずっと、ずっとずっとずっと!
俺は、アズリエルのことが好きだったんだ。
「……ズルイです、ノベル。別れ際にそんなこと言うだなんて。そんなこと言われたら、アズちゃん……ノベルとずっと一緒に居たくなってしまうではないですか」
「ごめんなアズリエル。ただ、俺は言えなくなってしまう前に言いたかったんだ。アズリエルは可愛くて強くて、誰よりも繊細な子だ。そのくせ、強気になってドジしたり、口が悪いけど本当は本心じゃない。そこが可愛くて、俺はどうしようもなかった。だから、俺はお前のことが好きだ!」
アズリエルは俺の服を掴み、胸の中で震え始める。
ごめんな、最後の1日がこんなにも湿っぽくてよ。
それでも、俺はお前に伝えなきゃならなかった。
「アズちゃんだって、ノベルのことが好きです、愛しています! 物語の設定なんて関係ない! アズちゃんは心の底から本当にノベルのことを愛しています! 努力しているところを見るとキュンとして、笑顔を見るとドキドキして、手を繋いだら幸せになった! ノベル、アズちゃんは君を愛してます!」
「あぁ、ありがとなアズリエル。俺のこと、そんなふうに思ってたのは流石に驚いたけどな?」
「いつも言ってたじゃないですか! 『ノベルはカッコいい』って! 以前、アズちゃんが担当した人は、たった3時間で魔王を倒しました! 努力もせず、チートスキルですぐにこの物語をクリアしていきました! アズちゃんはその時、何もできなかった。ノベル、今回はちゃんとお役に立てましたか?!」
「あぁ、超絶お役に立ったぞ? お前がいたから、俺はこんなにも頑張って来れたんだぜ?」
「ううっ……ノベルぅ!」
――アズリエルは泣きまくり、俺は上から被さって彼女のことを何度も撫でてあげた。
アズリエルはアズリエルなりにちゃんと考えてくれている。
ただのグータラ娘なんかじゃない。
「好きです、好きです、大好きです! 元の世界に帰っちゃ嫌だぁ! うわぁぁぁぁん!」
俺は黙ったまま、アズリエルが泣き疲れるまで永遠に彼女のことを抱き続けた。
今までありがとう、アズリエル。
ちゃんと、想いが伝えられて良かった。
これで、もうこの世界に思い残すことは何もない。
あとは、俺のことを引き継いで行ってくれ。
ステイプラーの能力は持ち帰ってしまうけど、それはマジでごめん。
ハイライター、本当に良い兄貴分だった。
イレイザーとルーラーはもっと幸せになってくれ。
親父は、俺が小説を書くところをここで見ててくれ。
ナンバーズの人たちも、これから世界を変えていってほしい。
今までみんな、本当にありがとう!
ありがとう、ありがとう……。
◆
かなり激しい音を立てて、雨が降っている。
耳に飛び込んできた雑音に驚いて、俺はザッと目を開けた!
すげぇ雨だ!
親父の天気予報では、旅立つ朝は晴れだって言ってたはずだ!
親父……まさか、間違えやがったか?!
土砂降りの雨の中、1人寂しく外に出て行くのは嫌だなぁ……。
あれ、アズリエルがいない!
まさか、1人で部屋に帰ったのか?
「起きろノベル!」
「うわっ、テメェ! また俺の部屋のドアを壊しやがったな! しかも、今日は有給を取るってあれほど」
「今日は特別な日だぞ! パーティーだパーティー! 俺様たちがカップル誕生を爆発的に祝うのだ!」
――は?
今、お前はなんて?
「え、えっと……ま、まだ朝の5時だぞ! パーティーは今日の18時だろ! 8時から勤務だってのに、これからどうすんだこのバカ!」
「待ちきれんのだ! 俺様がパーティー会場を設計するとあれば、朝早くから行動して完成させておくしかあるまい!」
「ほ……本当にバカなのかよ! パーティー会場は食堂なんだぞ! ええっと……夜だけ貸し切りだ!」
「は、そうだったか! いや、だがやれることはあるはずだ! それではノベル、張り切っていくゾォ!」
そして俺はハイライターに引っ張られて外に出る!
4階でイレイザーとルーラーと出会い、エロいことをしてたことを指摘する!
――何が起こっているのかはもうすでにあらかた把握した。
嬉しいなぁ2度目のパーティー。
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