なろう作家が転生して、なろう作品の主人公になりました!〜物語を自由に紡げるチートスキルに、矛盾メーターがMAXになると死亡するデメリットを添えて〜
第48話 ヒロイン
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俺はアズリエルの嘔吐で汚れた手を川で洗い、街の中を歩いていた。
四次元バッグに入れていた固形石鹸がこんな時に役に立つとはな。
今日は随分と綺麗な月が昇っている。
星は綺麗だし、親父の予報通り、今日の夜は雲一つない美しい星空だ。
――切なくなってしまう。
俺は酔った勢いを装って、アズリエルの小さな手を握り、カナヤ街で一番綺麗な川の周りを歩いていた。
「すみません、ノベル。ご迷惑をおかけしました」
「いいんだよ。お前は俺の担当天使だ。俺のためにしてきてくれたことの恩返し……それほどのことじゃないけどな」
川に星が映り、キラキラのイルミネーションのように見える。
もう夜の22時。
そろそろ街の人々が眠り始める頃、俺とアズリエルだけの世界が、川の近くに置かれたベンチにあった。
まるで、俺とアズリエルはカップルみたいだ。
夜に誰もいない海に遊びにきて、ずっとくだらないことで笑い合って。
そんな、そんな物語が――。
「今宵は月が綺麗だな」
「えっ! そ……そうですね。まん丸のお月様です」
アズリエルの手が強く握られた気がした。
なんだ、俺は日本の文豪のフレーズをバレないように言ったのだが、彼女はそれを知っているみたいだな。
「ねぇ、ノベル。ノベルはどうしてアズちゃんをこの世界に召喚したのですか?」
「そりゃ、お前に会ってみたかったからだ。二の次に、お前が俺を『ヲタク』って言うからお仕置きしてやりたかっただけだ」
「そうですか。初めて会った時に言ったことと逆じゃないですか?」
――こいつ、よく覚えてやがるな。
本当に酔っ払ってんのか?
「正直、あの時点でアズちゃんはこの世界に降り立つつもりはありませんでした。なぜならば、アズちゃんはこの世界に降り立つシーンがちゃんとあったからです」
アズリエルは俺の肩に頭をぽすんと乗せると、ぐりぐりと優しく頭突きしてきた。
――だろうな、それはなんとなく想像はついていた。
アズリエルを召喚した時に、なぜか矛盾メーターは上がらなかった。
先にも述べたが、異世界召喚を俺がこなしてしまえば間違いなくバランスが崩れるはず。
なのに、アズリエルが来ても矛盾メーターは震えなかった。
つまり――。
「本来なら、アズちゃんの方からノベルの元に舞い降りる設定でした。2日目、チンピラ三人衆にノベルは囲まれてて、フルボッコにされます。その時に、アズちゃんが天界から助けに来る――と言うシナリオがあったのです。……だけど、ノベルはすぐにアズちゃんを召喚してしまった。焦りましたよ、ある程度神様がくれていたシナリオから脱線してしまったのですから」
そう言うことだ。
アズリエルは最初からこの物語の中に登場しなければならなかったサポートキャラなんだ。
証拠に、ノベルメイカーにも『アズリエル』について言及されている。
彼女は、もともとからこのラノベの中の住人だったってことだ。
アズリエルのランクレベルが見えない理由は、異世界人だからって言う理由ではない。
それはもっと単純で難しいことだったんだ。
「今宵は月が綺麗ですね、ノベル。つい、胸がキュッとなってしまいます」
――彼女は、俺と戦う設定にされてない。
味方レベルも敵レベルでもない、もっと内側にいる存在だから。
「あぁ、本当に月が綺麗だ!」
アズリエルは、俺の最愛なるヒロインなのだ。
俺はアズリエルの嘔吐で汚れた手を川で洗い、街の中を歩いていた。
四次元バッグに入れていた固形石鹸がこんな時に役に立つとはな。
今日は随分と綺麗な月が昇っている。
星は綺麗だし、親父の予報通り、今日の夜は雲一つない美しい星空だ。
――切なくなってしまう。
俺は酔った勢いを装って、アズリエルの小さな手を握り、カナヤ街で一番綺麗な川の周りを歩いていた。
「すみません、ノベル。ご迷惑をおかけしました」
「いいんだよ。お前は俺の担当天使だ。俺のためにしてきてくれたことの恩返し……それほどのことじゃないけどな」
川に星が映り、キラキラのイルミネーションのように見える。
もう夜の22時。
そろそろ街の人々が眠り始める頃、俺とアズリエルだけの世界が、川の近くに置かれたベンチにあった。
まるで、俺とアズリエルはカップルみたいだ。
夜に誰もいない海に遊びにきて、ずっとくだらないことで笑い合って。
そんな、そんな物語が――。
「今宵は月が綺麗だな」
「えっ! そ……そうですね。まん丸のお月様です」
アズリエルの手が強く握られた気がした。
なんだ、俺は日本の文豪のフレーズをバレないように言ったのだが、彼女はそれを知っているみたいだな。
「ねぇ、ノベル。ノベルはどうしてアズちゃんをこの世界に召喚したのですか?」
「そりゃ、お前に会ってみたかったからだ。二の次に、お前が俺を『ヲタク』って言うからお仕置きしてやりたかっただけだ」
「そうですか。初めて会った時に言ったことと逆じゃないですか?」
――こいつ、よく覚えてやがるな。
本当に酔っ払ってんのか?
「正直、あの時点でアズちゃんはこの世界に降り立つつもりはありませんでした。なぜならば、アズちゃんはこの世界に降り立つシーンがちゃんとあったからです」
アズリエルは俺の肩に頭をぽすんと乗せると、ぐりぐりと優しく頭突きしてきた。
――だろうな、それはなんとなく想像はついていた。
アズリエルを召喚した時に、なぜか矛盾メーターは上がらなかった。
先にも述べたが、異世界召喚を俺がこなしてしまえば間違いなくバランスが崩れるはず。
なのに、アズリエルが来ても矛盾メーターは震えなかった。
つまり――。
「本来なら、アズちゃんの方からノベルの元に舞い降りる設定でした。2日目、チンピラ三人衆にノベルは囲まれてて、フルボッコにされます。その時に、アズちゃんが天界から助けに来る――と言うシナリオがあったのです。……だけど、ノベルはすぐにアズちゃんを召喚してしまった。焦りましたよ、ある程度神様がくれていたシナリオから脱線してしまったのですから」
そう言うことだ。
アズリエルは最初からこの物語の中に登場しなければならなかったサポートキャラなんだ。
証拠に、ノベルメイカーにも『アズリエル』について言及されている。
彼女は、もともとからこのラノベの中の住人だったってことだ。
アズリエルのランクレベルが見えない理由は、異世界人だからって言う理由ではない。
それはもっと単純で難しいことだったんだ。
「今宵は月が綺麗ですね、ノベル。つい、胸がキュッとなってしまいます」
――彼女は、俺と戦う設定にされてない。
味方レベルも敵レベルでもない、もっと内側にいる存在だから。
「あぁ、本当に月が綺麗だ!」
アズリエルは、俺の最愛なるヒロインなのだ。
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