なろう作家が転生して、なろう作品の主人公になりました!〜物語を自由に紡げるチートスキルに、矛盾メーターがMAXになると死亡するデメリットを添えて〜

安田 孔明

第38話 ノベルvsイレイザー①

 ◆

『ステイプラーの操るフリントロック式銃はどういう仕組みなんだ?』

『あれはね、召喚武器だよ。私の特有魔力は増幅。寝ている時に念じた武器をいくつも呼び出せるの』

『なるほどな。それで、500丁の銃を街中に垂らしてると?』

『うん。でも、その力はもうノベルのもの。ちゃんと使いこなしてね?』

『おうさ! ちなみになんだけど、銃のデザインってのは自分で決められるものなのか?』

 ◆

 ハイライターの号令の瞬間、イレイザーの姿がもう目の前に!
 彼はこのカナヤでたった1人の拳法使いらしい!
 それもそのはず、魔法や武器戦闘が発展しているこの異世界で拳法なんざ流行るわけがない!
 それなのに、イレイザーがわざわざ『拳』なんて武器を選んだ理由はたった1つ!
 ――身を賭してまで一撃必殺を与えてくる諸刃もろはな瞬間特攻しかない!

「詰みだね、ノベルくん」

「まぁ、くなよ先輩」

 ――俺は間違いなくそうくるだろうなと踏み、開始直後から何もかもを解放してんのさ。
 俺と契約しているステイプラーの魔力も借り、2人分の備蓄で呼び起こしたフリントロック式銃。
 ステイプラーの発想力とは異なり、俺は現代のAK -47のデザインを参考に作らせてもらった。
 こいつは現代では相当世話になってるからな。
 銃に乏しい俺でも姿くらいは覚えてら。
 経口はド派手に15ミリ、いくら魔法といえど連射式には流石に出来ないらしいから、マガジン部は省略。
 弾は、15ミリ×160ミリの超空想弾薬!
 全長1200ミリ、重量なんと15000グラム!
 もはや、スナイパーライフルって突っ込みたくなるが、こりゃ紛れもないフリントロックだ!
 発射初速度は解読不能、生身の人間なんかじゃ扱えない超絶弩級・頭の悪い究極の無知が考えた馬鹿馬鹿しい一品だ!


「――なんだこれ! やっべぇッス!」

 さて、俺は新竜人族ドラゴニアンだ。
 五感を一気に研ぎ澄ますことで、視覚が感じる時間を1秒間だけミリ単位に変換することができる。
 つまり、俺はイレイザーの1000倍早く思考できるわけだ!
 ま、これ使うとめっちゃ疲れるからあんまり乱用できいんだけど。

 すでにイレイザーの拳は俺の顎の真下から上へとアッパーを喰らわすつもりらしいが、残念ながらそれは届くことはない。
 なぜならば、俺の顔の左右に6丁、イレイザーの真上に2丁、こんなにも恐ろしいサイズのフリントロック式銃が召喚されてんだからな!


 俺は一斉に引き金を引くと、合計8丁が燧石ひうちいしを叩き、火薬に着火!
 ミサイルでも発射したんかと思うくらいの爆音が闘技場内で炸裂したのだ!

『凄いノベル……そんな作戦で『眠らず』に武器を召喚するだなんて!』

 俺の心の中に直接ステイプラーの言葉が聞こえてきた。
 俺はこの魔法を使っている時だけ彼女の考えていることが分かる。
 ――そう、この通りだ。



 轟音は大気を切り裂き、空気が鳴って雷が起きるほど強烈な一撃が繰り出された!
 土煙が巻き上がり、俺の前は何も見えなくなる。

 それにしても、こんな爆音が起きたというのに、どうして俺の耳は無事なのか?
 言わずもがな、ステイプラーからは『銃のノイズキャンセラーが必要である』ことは聞いている。
 こういう魔法なら、初めから対処できるスキルは習得しておくことが必須だ。
 だから、ノベルメイカーの設定記入欄に書いておいたよ。
『自分の魔法が発動時のみ、150デシベル以上の音がトリガーで消音・耐衝撃機能スキルが自動発動』ってな。

 ――まぁ、さすがに条件が揃い過ぎだし、明らかご都合主義って叩かれるような設定を足したから、矛盾メーターは6に上がってしまったが。


 先ほどの矛盾の説明もしよう。
 なぜ俺は、眠っていなければ発動できないステイプラーの能力を使うことができているか?

 通常、ステイプラーの最強能力である『風景念射スクリーンショット』は、眠っている時のみ発動できるスキルだ。
 無論、武器召喚も例外では無い。
 さて、なぜ俺は起きていながら武器を召喚させたて攻撃することができたか?

 さて、みんなはイルカの脳の構造を知っているだろうか?
 彼らは脳の半分だけ機能を停止させ、片脳だけで休息をとりながら泳ぐ。
 ただ、それだけの話だ。

 ノベルメイカーに『ノベルは片脳だけで眠れる』という設定を追加したまで!
 こうすれば起きた状態で眠ることができるわけだ!
 矛盾なんか起きるわけない、どんな人でも1つは持ってる、ただの特殊能力だからな!

 それよりも、闘技場の外が心配だ。
 爆心地にいるようなもんだ、本当に大丈夫なんだろうな、ハイライター?

「……馬鹿野郎、ノベル! 今の一撃で魔力防壁の耐久値が10%まで減ったぞ!」

 ――大丈夫そうだ。
 観客席に被害が出ないように、ハイライターには完璧な防御壁を張るように予めから申請していた。
 そりゃもう、とびっきり頑丈なやつをな。

「ノベル! こんな爆音を出すなら事前に言ってください!心臓が吐き出るところでしたよ!」

 アズリエルも元気そうで何より。
 ……ありゃ、ステイプラーはひっくり返ってやがる。
 失神したのか?
 あぁ、俺が彼女の魔力をすっからかんにしたから寝ちまったのか。
 すまねぇ、マジで。

「さぁてイレイザー。直撃したのはこの目で見えたぞ? お前の両手は粉々に吹き飛び、足も胴体も、神経系の機能は爆音でぜただろう。つまり、お前は10秒間立てなくて終わり――」



必中会心クリティカル』!!



 俺は耳をほじりながら小さな影を見つけた。
 その瞬間に、彼は俺の懐に潜り込み、腹に鉄拳を一撃入れたのである!

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