なろう作家が転生して、なろう作品の主人公になりました!〜物語を自由に紡げるチートスキルに、矛盾メーターがMAXになると死亡するデメリットを添えて〜

安田 孔明

第34話 アズちゃんvsステイプラー

 ――ステイプラーの雰囲気が完全に変わった!
 その人格の正体は、ステイプラーの『残骸』だ!
 炎になって俺の胸の中で眠るって言ってたのに出てくるんかい!

「すすすすすす、好きなんですかノベルが! そんな、堂々と良く私に言えたものですね! 残念ですが、アズちゃんとあなたでは絆の深さの格が違います! 私の方が4ヶ月も一緒にいた期間は長い! ですが、あなたはたったの数時間でしょう! お話になりませんね」

「残念だったわね! 私の場合はノベルと『裸のお付き合い』を経験してるのよ!」

 瞬間、アズリエルはこの世のものではないような顔をする!
 漫画でよく見る『驚いたー!』って顔だ!

「ののの、ノベル! 裸の付き合いとはなんですか! 何をし腐りはがりクソエロマゾ畜生です!」

「うわぁ、いらん事を言うなステイプラー! 違うからな、これは夢の中での話なんだアズリエル! だから決してエロいことでは」

「は、もしかして女狐は嘘をほざいたのですか! それなら、乗り越えられないほどのマウントを取ってあげましょう! ノベルはですね、監獄に閉じ込められていた期間、ずっとアズちゃんの裸を想像していたのですよ!」

 ――はぁぁぁぁぁ?!
 ちげぇわ馬鹿野郎……って否定したいけど、否定できない!
 だってよ、監獄にいる4ヶ月は全くの女っ気無しだぜ?!
 身近にいる女の子を脳内で裸にしたりとかそういう想像するお年頃なの、成熟したオスなの!
 くそぉ……こんなことまでノベルメイカーに自動推敲されてんのか!
 ってことは待てよ?!
 ちょっとそれは非常にまずいこともバレているのでは?!

「ふん、私の方が勝ちね! 私はノベルのアソコの長さを知ってるわ! 彼のムスコの長さはマックス6インチ」

「わぁぁぁぁ! もうやめてくれお前ら!」

「それだけですか?! こちとら、ノベルはアズちゃんの全裸を想像しながら便器に向かって激しくオナ」

「わぁぁぁぁ! もういいわ! 俺の暴露大会じゃねぇか!」


 もはやお前ら息ぴったりまであるだろ!
 なんだよ急に俺のエロ話で花を咲かせてんじゃねぇよ!

「……はぁ、はぁ。ノベルが1番に思ってくれているのは、このアズちゃんなのです! 割り込む気なら諦めてください!」

「そんなことないわよ、私の方が胸が大きい! 未熟な体型のあなたではノベルを誘惑できないわね!」

 あぁ、どうしてこんなことになったんだろうか。
 練習通りに事を進めてくれるだけでよかったんだけどなぁ……。

「そんなもの関係ないです! 体の美しさで勝負です! アズちゃんは天使なので体の艶とかは自信があるのですよ!」

 わぁ、なんで服を脱ごうとしてんだ!
 ステイプラー!
 そろそろ本当のお前が言ってやれ!
 お前が何もしないから、昔のステイプラーがフォローを入れてくれてんだぞ!

「の、ノベル。確かにその通りだ。……すまない私。久しぶりに喋れたから嬉しくてな」


「ほらどうしたんですか! ヘソの綺麗さで勝負です! アズちゃんが勝てば、ノベルのことはもう」

 と、ステイプラーは全力で頭を下げ、右手を前に突き出した!
 そうだステイプラー!
 あとは練習通りだ練習通り!

 ◆

『アズリエルって子と友達になりたいわけではないよ。ただ……邪魔になりたくないだけだもの。私がいることで空気が悪くなるのが怖くて』

『そういうなよステイプラー。お前は俺の使い魔になったんだ。今のうちにアズリエルと仲良くしておかないと、変な感じになるぞ?』

『ううっ……仕方がない。もし天使の子がかかってきたら、やっつけてやるもの!』

『いや、それは是非やめて欲しいものだが……』

 ◆


「わ、私と……」

 そうだステイプラー!
 お前の2時間の努力、見せつけてやれ!

「な、なんですか急に。降参するつもりですか? へぇ、とうとうアズちゃんの可愛さを認めたというのであれば、この手を取る事を考えてやっても」


「弟子にしてください!」


 は?

「え?」

「はっ……かぁ〜!」

 弟子にしてください?
 どっからその単語が出たんだよステイプラー!
 2時間、みっちり「友達になってください」作戦の予行練習をしたよな?
 心配だからって、30パターンもシナリオ作って練習しただろ!

「あ、いえ、その……なんと言うか」


「……はぁ?!?! なんですか! 一体なんなんですか!」

 お、終わった……。
 俺とステイプラーの2時間の努力は虚しく散った――。



「何故そのことを早く言わないのですか! 弟子にして欲しいならそう言えばいいのに!」

 は?

「へっ?!」

「もぉ〜! あなたは2番目なのですから、アズちゃんの下僕げぼくになるのは当然のことです! それに、アズちゃんはこの世界を統べる種族、天使族なのです! 妖精族ごときがアズちゃんに楯突くことなど億超単位で年数が足りないのです!」

 アズリエルは目を輝かせながらステイプラーの手を握り、ぶんぶんと縦の単振動をする。

「いやぁ、そんな気はしてたのですよ! あなたがアズちゃんの下につき、2番目として働く未来が見えてました! いやはや、最初はツンケンするから何事かと思いましたが、そう言うドッキリだったのですね! いやぁ〜可愛いところあるじゃないですか! さすがは妖精族ですね!」

「おお、おおおおおっ……」

 ステイプラーはこれ以上ないくらい焦り、顔に汗をたらたらかきはじめる。
 すでに握られた手、ステイプラーの頭を撫でるアズリエルの手、歪みひとつないアズリエルの本気の目!

 こいつ……チョロ過ぎる!

「仕方がないので、アズちゃんは弟子入りを認めてあげることにします! これからよろしくです、ステイプラー!」

 アズリエルは満足げな笑みを浮かべ、この世界を征服したかのようなテンションで高笑いをする。
 対するステイプラーはといえば……。

「ま、私はいつもこんな感じだから」

 意外と嫌がる素振りは見せなかった。
 むしろ、広角が上がって良い表情に仕上がったじゃないか。

「それでは、ステイプラー! 最初のミッションです! この部屋に散らばった透明な筒を拾い集めてください! その次に、ソウジキという近代兵器でこの部屋を掃除するのです!」

「わ、分かりました師匠! 私、ずっと師匠についていきます! なんなりと雑務をお申し付けください!」

「ははははは! これでアズちゃんのパーフェクトワールドの第一歩が開かれました! 最強グータラ伝説の幕開けです!」


 ――ってな感じで、水と油かに思われたアズリエルとステイプラーの2人だったが、なんと適当に攪拌かくはんするとあっという間に乳化しちまった。
 天使族と妖精族の師弟関係か、ラノベにおいてはなかなか無い展開で面白いぞ?

 それに、最初出会ったときは生き心地がしてないような顔をしてたステイプラーも、なんでか知らんが今は生き生きしてる。
 何はともあれ、ステイプラーがこんなに元気な姿を見せてくれて俺は嬉しいぞ。

 さすがは、俺の1番目の相棒だ。
 やっぱり、アズリエルは凄いやつだ。
 ありがとな、アズリエル。

「待てダメ天使。お前も掃除をしろ。ステイプラーばっかりにさせるな」

「ノベル! 違うのですよ、ステイプラーが掃除をしたいって!」

「言っとくが、『整理整頓ができる女性キャラはモテる』って話は、ラノベ界隈では有名だぞ?」

「なっ……そうなのですか?!」


 このダメ天使は単純でいて純粋だ。
 だから俺はこの子に興味を惹かれ、いつの間にか目で追ってしまうようになったのだろう。
 ダメダメでどうしようもない生意気な小娘だ。
 ただ、誰よりも生命について敏感で、どんなラノベの女の子よりも繊細だ。
 だから俺は、こうして今日もアズリエルに会うことが楽しくてたまらないんだろうな。

「アズちゃんが本を拾います! ステイプラーはソウジキを使ってください!」

「で、でも使い方がわからないです師匠! どうやってこれでゴミをくのですか?」

「あー! この時代の人たちは機械を知らないんですね! 分かりました、アズちゃんの弟子のステイプラーにだけ特別に教えてあげます! まず、コンセントと呼ばれる2つのお尻の穴に――」


 ありがとな、アズリエル。
 俺がこんなにも穏やかな心でいられるのは、全てアズリエルのおかげだ。


 ――ただ、一刻一刻と時は過ぎていく。
 いつまでも一緒にいられるわけじゃないんだ。



 残り、2万字。
 あとこれだけラノベが書き終えたら、俺はアズリエル達とバイバイしなきゃならない。
 再開した親父とも、俺を鍛えてくれたハイライターとも、俺を救ってくれたイレイザーとも、立ち直れないくらい心に傷を負ったルーラーとも。

 そして、大好きなアズリエルとも。

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