なろう作家が転生して、なろう作品の主人公になりました!〜物語を自由に紡げるチートスキルに、矛盾メーターがMAXになると死亡するデメリットを添えて〜
第26話 剣術の特訓
◆
ヒロインは、死ぬ運命にある道具ではない。
今ではあまり見なくなったが、過去の作品では『感動』を煽るためだけに無意味にヒロインが死ぬことが多かった。
人が死ぬことは悲しいことであり、もう2度とその人に出会う事はできない。
それが理由で、『感動させるためなら、ヒロインを殺せばいいじゃん』と安易な作者の空想によってコロコロと人が死んでいくのだ。
ヒロインとは、主人公に最も近い人物であり、読者からすれば結婚相手や家族と同等の関係なのだ。(男性主人公の場合)
言っておくけど、ヒロインは感動を誘うための道具じゃないからね?
ラノベの中だとしても、文字は生きて動いているんだぞ!
よくもまあそんな簡単に人を殺せるな!
とりあえず、心が癒されるような絵本を読んだり
、童謡を歌って子供の頃の純粋な気持ちからやり直せ!
◆
「おし、構えろノベル! お前はカナヤの傭兵になったんだ! 剣と盾を用いた戦い方くらいは覚えなきゃなぁ!」
「分かってるぜハイライター! 死ぬほど鍛えたこの体、余すことなく使いこなしてやるよっ!」
――それから俺は、カナヤの傭兵の中で1番強い人物である、最高騎士長・ハイライターから剣の稽古を受け始めた!
筋肉は最高調に鍛え上げられたものの、戦闘の基礎である剣士の戦い方や魔法の扱い方などは全く学んでいない。
それを察したハイライターは、朝の6時から9時頃まで稽古をつけてくれることになった!
「ふぁー。本当、朝早くからよく体を動かせますね。アズちゃんは眠いです」
「お前が起こしてくれって言ったんだろうが!」
「ほら、どこ見てるノベル! 俺様から目を離していいのかなぁ?!」
ハイライターはぐるりと一回転すると、右腕の剣が俺の盾に向けてくるのが分かった!
そんな攻撃、俺の盾ですぐに受け止めてやる!
「だろうな! 熟練度がモノを云うのだよノベル!」
――瞬間、俺の足が宙に浮き、後ろ向きに倒れる!
マジか、ハイライトの野郎、足を引っ掛けやがった!
剣ばかりに目が行って、俺の盾で遮られる足元の部分から攻撃を仕掛けてきた!
やっぱり、最高騎士長と言うだけあって、戦闘能力と経験値は馬鹿にならない!
「あいたっ!」
俺はすぐに目を開いて剣を構えようとするが、すでにハイライターの剣先は、俺の頭の上にある。
「どうして立ち上がろうとする? 重厚な鎧を着てるのに、体を起こせるかな?」
「……確かに」
「じゃあ問題だ。ノベルは俺の前に倒れた。次はどうすればいい?」
「そりゃ、剣を避けるのが優先だ! 回転しながら避けるとか?」
「残念。正解は、『パリィ』と言う技術で剣を弾くことだ。ただし、これは剣対剣の条件下でだ。槍などの武器ではまた判断が変わってくる。それに、魔術を駆使するものや、二刀流の敵もいるだろう。その場合は――」
ハイライターは珍しく、真面目な顔で俺に事細かく説明をしてくれる。
普段はただのユーモア聞かせたお兄さんって感じだけど、いざ戦いのことになると騎士長という風格を醸し出す。
――すげぇじゃねぇか異世界!
これってもしかして、めちゃくちゃラッキーなことなんじゃないか?
「もっと、もっと俺に剣術を教えてくれよハイライター!」
「そのつもりだぜ? 俺様に剣を教われば、間違いなく最短で全ての技をこなせるだろう。――ただし、甘いことは一切しねぇ。ここで手足が切り落とされたとしても、それは全部手前の実技不良ってだけだ。それに、俺様は1度教えたことは2度と教えねぇ。分かったか新米騎士!」
「あぁ! 全力で俺を殺しに来い!」
「ここは戦場だ! 俺様の独壇場のなぁ!」
そして、俺はハイライターの剣をパリィする!
教わったことは全て吸収、スポンジよりも強く吸収する!
攻撃は最大の防御って言葉は本当なんだって体に染み込ませる!
怯えるくらいなら、初めから剣術なんて習わないさ!
俺は最終目的のためにこの時間を生きている!
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
◆
稽古が終わり、俺とハイライターは大浴場で汗を流す。
そのあとは、街の中をパトロールしたり、色々な店に行って税金を徴収する。
ルールを守ろうとしない人間たちに罰金を払わせたり、区画整理の手伝いや馬・竜車の車両点検、関税の改正報告や物価の目安を掲示板に貼ったりする。
新聞配達、持ち物検査、乱闘の取締り、強盗の足取りを追う。
それら全てを、この1週間という短い期間で学ばせてもらった。
俺とハイライターは、2人でバディを組んで仕事を行い、上司の彼が俺の適性を見抜いて課を分けてくれるとの事。
まずは、1課の説明だ。
1課は主に殺人・戦闘などの危険な仕事を取り仕切る戦闘部隊だ。
ハイライターやイレイザーなどのランクレベルが高い人間は1課に勤め、命を賭けて街の安全を守り、他の街の派遣兵士として正義執行する部署だ。
次に、2課。
以前、ルーラーに酷いことをしたチンピラ三人衆がここにいるとの事。
この部署は主に街のパトロールや税金回収などを行うところだ。
強面であるほど良いとされており、意志を曲げない強い心を持つ人間や、税を納めようとしない人の家に訪問して取り立てに行ったりする勇気がある人間が好まれる。
最後に、3課。
主に交通整備や街づくり、財政管理などを始め、雑務である門番や夜の警備なども行っている。
1番やることが多いが、危険度のみを考えれば最も低く、魔法を使えない一般庶民でもなれる。
つまりランクレベルが低め……あまり戦闘力に恵まれなかった人たちが入る部署だ。
1課を戦闘部隊、2課を警察官とするならば、3課は国家公務員だ。
魔力はほとんど持たんけど頭がキレる人間や、政治に対して強い適応力があるならばこの部署が好まれる。
――まぁ、俺はこの仕事たちを見学させてもらう前からどの部署に入るかは決まってはいるのだが。
「マスターから任命されてノベルを見学させてやったが、本当に意味はあるのか? どうせおまえは1課だろう?」
「意味がないことを親父は言わないさ。『街はこんな苦労があって成り立っている』ってのを俺に教えたくて見学させてくれてるんだろうな」
「ふーん。俺様にとっちゃ、非効率極まりないような気がするが! ノベルは1課だぜ、もっと剣術を覚えて自分の戦闘術を確立しなきゃだし! あー、戦いたい!早くノベルをぶっ飛ばしてぇぜ!」
何をいってるんですか師匠!
言っておきますけど、俺はハイライターの遊び道具じゃないしサンドバックでもないからな?!
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