なろう作家が転生して、なろう作品の主人公になりました!〜物語を自由に紡げるチートスキルに、矛盾メーターがMAXになると死亡するデメリットを添えて〜
第21話 君のために貢献したい
◆
俺とハイライターは、赤いマントと金属の鎧を纏ってカーペットの上を歩いていく。
支給されたどこにでもある鉄の剣と鉄の盾を貰い、腰に剣を、盾を背負う。
イレイザーが被っていた帽子も被り俺は意気揚々とカーペットを踏んで歩いた!
ちなみにハイライターは帽子を被れないため着けないようだ。
彼の頭には天を貫くような長い角が2本もあるからな。
俺なんか、まだ殴られたコブくらいしか角が生えていない。
今に見てろよ、帽子が被れないくらい、ハイライターが驚くくらい立派な角を生やしてやるよ!
「あっ、ノベル! お久しぶりです!」
「あ、アズリエルっ!」
と、宮殿の階段を昇って来たのは、死を司る天使であるアズリエルだ!
お姫様のようなフリフリのドレスを着ており、今から結婚でもするんかってくらい綺麗に化粧をしていた!
見た目は中学生そこらのくせしてそんなにおめかしして!
ママの化粧道具を盗んで遊んだ後なのかな?
「ノベルさん! 本当に随分とお久しぶりです! 相も変わらず元気そうですね!」
「おいおい、お前ってば毎回それしか言わんよな。で、なんで2ヶ月間も面会に来てくれなかったんだ? 寂しかったんだぞ俺?」
「イレイザーが面会は禁止と言ったのです。アズちゃんたちがノベルの修行の妨げになると言い出したから、面会へは行けなかったのです。でも、久しぶりに会えてアズちゃんはとても嬉しいですよ!」
「そうだったか……。ってか、んだよ。前まではこんな戯れる奴じゃなかったろうよ?」
俺は、抱きついてくるアズリエルの頭をヨシヨシしてやる。
本当に久しぶりの再会だし、アズリエルも感激してくれてるのかこうやって甘えてくる。
……甘えさせてやれてなかったなそういえば。
約束通り、色々終わった後にアズリエルを遊びに連れてってやろうかな。
ふふっ、本当に妹ができたみたいだ。
「あら、ノベル様! 2ヶ月見ない間にそんなにお強くなられたのですね! 獣人の直感で分かります!」
再び階段の奥から現れたのは、ウサミミをぴこぴこさせて昇ってくるルーラーだ!
アズリエルと同じく、お姫様のようなティアラとドレスを身につけている!
おいおい、獣人ってのは庶民に虐げられるって設定じゃなかったか?
「久しぶりだなルーラー! なんだよ、可愛くなっちゃってよ」
「はい! ノベル様から助けられて以降、イレイザー様から色々施しを頂きまして。見てくださいこのティアラ! これ、イレイザー様から作って戴いたものなんです!」
ルーラーはそう言い、ルンルン気分で俺の前で華やかな衣装を見せてくれた。
随分と綺麗になったなルーラー。
最初は怯えた小動物のような形だったのに、今はこんなに素晴らしい体裁を受けてる。
ルーラーを助けて良かったなって、今になって確信できて嬉しい限りだ。
「お初にお目にかかる姫君。俺様の名はハイライター・ドラム、このカナヤの街の最高騎士長として街の心臓を司っている。どうか、よろしく頼む!」
ハイライターは柄にもなく、騎士っぽい動きでアズリエルとルーラーにお辞儀をする。
けっ、俺の時は適当な挨拶だったくせになんだよ。
「おぉ! あなたがノベルの筋トレ友達ですか! ノベルの担当天使のアズリエルです! 言っておきますが、アズちゃんは本物の天使ですからね! この黒い翼は飾りじゃないですよ! もう2度と説明はしませんからね!」
と、まだハイライターは何も言ってないのにプンスカ怒ってる。
その様から察するに、俺が牢獄にいた間、宮殿の人たちから天使ネタで馬鹿にされてたな?
そりゃ、この世界には天使なんてそうそういないらしいからな。
伝説レベルの生き物の格好をこんなロリっ子がしてたら、みんなコスプレだって思うわな。
「わ、私の名前はルーラーです。獣人なので、姓はありません。ただのルーラー……です」
ルーラーは恥ずかしそうにハイライターにそういう。
あー、やっぱりまだ人馴れは厳しかったか?
「おう、挨拶感謝する! それにしても、ルーラーとやらは綺麗で美しいな! イレイザーが君を側に置きたい理由が分かる! こりゃ、異種族カップリングの完成か! わっはははははは!」
ハイライターは竜麟でゴツゴツした手をルーラーの頭に乗せると、ワシワシと撫で回す!
そんなどストレートに女の子に美しいとかいうなよな!
どんだけキザなんだよこの竜人……今、イレイザーが何って言った?
すると、ルーラーは両手をグーにして顔の前に持っていって俯きながら、
「失礼な方です。イレイザー様はそんなハレンチな事はしませんので!」
と、ルーラーは顔を赤くしてウサミミを振るのだった――。
待て待て待て待て待て待て待て!
俺がいない間に、俺のヒロインになるかもしれないルーラーが、あの能天気男のイレイザーに陥落されているだとぉぉ?!
いや、何かの間違えだ!
「おぉ、おおおおおっ」
「なんですか、その顔!まさかとは思いますが、ルーラーとイレイザーが良い感じってことに嫉妬してないですよね?」
アズリエルは頬を膨らませて俺の隊服を強く引っ張る!
「ち、ちげぇよ! 俺がいない間に物語がここまで進んでて脳がついていかんだけ!」
「でも、今さっきそういう顔しましたよね?! もう良いです! アズちゃんのことに興味がないノベルは嫌いです!」
アズリエルは俺から離れるとツーンと唇を尖らせて腕を組む。
――ったく、急にどうしたんだよアズリエル!
俺がお前の心配を全くしなかったことに対してキレてんのか?
……じゃないな。
俺はアズリエルの頭にポンと手を乗せ、再びヨシヨシしてやった。
リアルの俺には妹がいないし、ラノベの知識でしか女の子の触れ方を知らない。
だから、ヨシヨシしてやることしかできんでごめん。
「なんですか突然」
「今まで、苦労かけてすまなかったな。お前に迷惑かけて、守られてばっかりだ」
「何のことかわかりません。ただ、アズちゃんはノベルの頑張る姿を保存して、白インクで文を消していただけです。たった120回だけ改稿しただけです」
アズリエルは俺の服をギュッと掴み、吐き出したい気持ちをギリギリになって留めていた。
――頑張っていたのは俺だけじゃない。
ノベルメイカーがオーバーフロウしないように毎日ずっと自動推敲される文章を書き直して白インクで消していく――。
小説家だから分かる。
毎日5000字ほど推敲される文章を短く簡潔に纏めるにはかなりの文章力が必要になる。
要点を纏め、出来る限り短い文章にする。
終わりがいつなのかもわからないこのレースに、アズリエルはめげずについてきてくれていた。
戦っていたのは俺だけじゃない、アズリエルも俺と同じだった。
そのための、
「ありがとな、アズリエル」
俺は素直にそう言いたくてたまらなかった。
ずっと俺の存在文章を見守ってくれていたアズリエル。
俺のことを忘れずにいてくれたアズリエル。
ずっと、お前に感謝の言葉を言いたかった。
「正直言って、カッコいいと思いました」
アズリエルは呟き、さらに強くグイッと俺の隊服を引っ張る。
「分かるんです。アズちゃんがノベルの頑張りを見ているたびに、どんどん強くなっていくのが。だから、アズちゃんはノベルがカッコよくなっていく様を読んで、毎日のように書き連ねていました」
「あ、アズリエル……」
すると、アズリエルは下げてきた可愛いリュックの中から一冊の分厚い本を手渡してきた。
見た目で1000ページほどある、魔術書のようなものを開くと、そこには――!
「こ、これって……!」
『ラノベにおいて、主人公が苦労するシーンは省くのが原則なんだ!』
――俺は、何か間違っていたのかもしれない。
面白いラノベは、強くなっていく様を出来るだけ省き、強くなったところを抜粋して見せるものだと思っていた。
「アズちゃんが勝手にしたことです。ノベルが頑張ってくれてるのに、アズちゃんばかりグータラしてたらダメだって。だから、アズちゃんなりに考えた『合格』の祝詞です」
俺はアズリエルからもらった本の中身を全て流し読む。
汚い字で、そしてインクが黒く滲んでいる。
眠気に襲われながら書いたページなんか可愛くてたまらない。
「お前、これ全部……俺の修行パートか?」
『修行するシーンの説明なんて、読者は期待してないからな!』
「消すにはあまりにも勿体ないと思ったんです。だから、ノベルの頑張りを全てこの本に書き写してあります。こうすれば、ノベルのカッコいい努力シーンが残ってくれると思ったから」
急に、涙がこぼれ落ちてきた。
4カ月という長い道のり。
その間、120回もアズリエルはこの分厚い書物に、自動推敲された文を模写してくれたのか?
――努力は消えたりはしない。
ただし、努力は保存できなかった。
だから、アズリエルは代わりにこの書物に書き写してくれたってことか?
「ぐぅ……」
アズリエルが急に本当に愛おしくなった。
ここまでしてくれるだなんて、全く思っていなかった。
「努力は消えたりしません。いいえ、アズちゃんが無駄にはしません。そのためにアズちゃんなりに考えた、ダメダメ天使のお仕事です」
そう言って、アズリエルは俺に向けて満面の笑みを見せてくれた。
本当の天使だった。
今までに見てきたラノベの天使よりも、よっぽど素敵なダメ天使。
――努力は消えたりしない。
残してくれた言葉を抱き、俺はその場で泣き崩れてしまった。
俺を応援してくれていた。
いつも、俺を見ていてくれた。
それだけで、俺は号泣に値するほど感謝が涙腺から溢れ出したのである。
「ノベル様。本当によくやり遂げましたね、グスン」
「本当によくやったぞノベル! ま、俺様の教えが天才的だったってのもあるかな! わっはははははは!」
「アズちゃんは、チートに頼らないノベルを心から尊敬します! だから、これからもノベルのカッコいい成長っぷりを見せてください!」
俺とハイライターは、赤いマントと金属の鎧を纏ってカーペットの上を歩いていく。
支給されたどこにでもある鉄の剣と鉄の盾を貰い、腰に剣を、盾を背負う。
イレイザーが被っていた帽子も被り俺は意気揚々とカーペットを踏んで歩いた!
ちなみにハイライターは帽子を被れないため着けないようだ。
彼の頭には天を貫くような長い角が2本もあるからな。
俺なんか、まだ殴られたコブくらいしか角が生えていない。
今に見てろよ、帽子が被れないくらい、ハイライターが驚くくらい立派な角を生やしてやるよ!
「あっ、ノベル! お久しぶりです!」
「あ、アズリエルっ!」
と、宮殿の階段を昇って来たのは、死を司る天使であるアズリエルだ!
お姫様のようなフリフリのドレスを着ており、今から結婚でもするんかってくらい綺麗に化粧をしていた!
見た目は中学生そこらのくせしてそんなにおめかしして!
ママの化粧道具を盗んで遊んだ後なのかな?
「ノベルさん! 本当に随分とお久しぶりです! 相も変わらず元気そうですね!」
「おいおい、お前ってば毎回それしか言わんよな。で、なんで2ヶ月間も面会に来てくれなかったんだ? 寂しかったんだぞ俺?」
「イレイザーが面会は禁止と言ったのです。アズちゃんたちがノベルの修行の妨げになると言い出したから、面会へは行けなかったのです。でも、久しぶりに会えてアズちゃんはとても嬉しいですよ!」
「そうだったか……。ってか、んだよ。前まではこんな戯れる奴じゃなかったろうよ?」
俺は、抱きついてくるアズリエルの頭をヨシヨシしてやる。
本当に久しぶりの再会だし、アズリエルも感激してくれてるのかこうやって甘えてくる。
……甘えさせてやれてなかったなそういえば。
約束通り、色々終わった後にアズリエルを遊びに連れてってやろうかな。
ふふっ、本当に妹ができたみたいだ。
「あら、ノベル様! 2ヶ月見ない間にそんなにお強くなられたのですね! 獣人の直感で分かります!」
再び階段の奥から現れたのは、ウサミミをぴこぴこさせて昇ってくるルーラーだ!
アズリエルと同じく、お姫様のようなティアラとドレスを身につけている!
おいおい、獣人ってのは庶民に虐げられるって設定じゃなかったか?
「久しぶりだなルーラー! なんだよ、可愛くなっちゃってよ」
「はい! ノベル様から助けられて以降、イレイザー様から色々施しを頂きまして。見てくださいこのティアラ! これ、イレイザー様から作って戴いたものなんです!」
ルーラーはそう言い、ルンルン気分で俺の前で華やかな衣装を見せてくれた。
随分と綺麗になったなルーラー。
最初は怯えた小動物のような形だったのに、今はこんなに素晴らしい体裁を受けてる。
ルーラーを助けて良かったなって、今になって確信できて嬉しい限りだ。
「お初にお目にかかる姫君。俺様の名はハイライター・ドラム、このカナヤの街の最高騎士長として街の心臓を司っている。どうか、よろしく頼む!」
ハイライターは柄にもなく、騎士っぽい動きでアズリエルとルーラーにお辞儀をする。
けっ、俺の時は適当な挨拶だったくせになんだよ。
「おぉ! あなたがノベルの筋トレ友達ですか! ノベルの担当天使のアズリエルです! 言っておきますが、アズちゃんは本物の天使ですからね! この黒い翼は飾りじゃないですよ! もう2度と説明はしませんからね!」
と、まだハイライターは何も言ってないのにプンスカ怒ってる。
その様から察するに、俺が牢獄にいた間、宮殿の人たちから天使ネタで馬鹿にされてたな?
そりゃ、この世界には天使なんてそうそういないらしいからな。
伝説レベルの生き物の格好をこんなロリっ子がしてたら、みんなコスプレだって思うわな。
「わ、私の名前はルーラーです。獣人なので、姓はありません。ただのルーラー……です」
ルーラーは恥ずかしそうにハイライターにそういう。
あー、やっぱりまだ人馴れは厳しかったか?
「おう、挨拶感謝する! それにしても、ルーラーとやらは綺麗で美しいな! イレイザーが君を側に置きたい理由が分かる! こりゃ、異種族カップリングの完成か! わっはははははは!」
ハイライターは竜麟でゴツゴツした手をルーラーの頭に乗せると、ワシワシと撫で回す!
そんなどストレートに女の子に美しいとかいうなよな!
どんだけキザなんだよこの竜人……今、イレイザーが何って言った?
すると、ルーラーは両手をグーにして顔の前に持っていって俯きながら、
「失礼な方です。イレイザー様はそんなハレンチな事はしませんので!」
と、ルーラーは顔を赤くしてウサミミを振るのだった――。
待て待て待て待て待て待て待て!
俺がいない間に、俺のヒロインになるかもしれないルーラーが、あの能天気男のイレイザーに陥落されているだとぉぉ?!
いや、何かの間違えだ!
「おぉ、おおおおおっ」
「なんですか、その顔!まさかとは思いますが、ルーラーとイレイザーが良い感じってことに嫉妬してないですよね?」
アズリエルは頬を膨らませて俺の隊服を強く引っ張る!
「ち、ちげぇよ! 俺がいない間に物語がここまで進んでて脳がついていかんだけ!」
「でも、今さっきそういう顔しましたよね?! もう良いです! アズちゃんのことに興味がないノベルは嫌いです!」
アズリエルは俺から離れるとツーンと唇を尖らせて腕を組む。
――ったく、急にどうしたんだよアズリエル!
俺がお前の心配を全くしなかったことに対してキレてんのか?
……じゃないな。
俺はアズリエルの頭にポンと手を乗せ、再びヨシヨシしてやった。
リアルの俺には妹がいないし、ラノベの知識でしか女の子の触れ方を知らない。
だから、ヨシヨシしてやることしかできんでごめん。
「なんですか突然」
「今まで、苦労かけてすまなかったな。お前に迷惑かけて、守られてばっかりだ」
「何のことかわかりません。ただ、アズちゃんはノベルの頑張る姿を保存して、白インクで文を消していただけです。たった120回だけ改稿しただけです」
アズリエルは俺の服をギュッと掴み、吐き出したい気持ちをギリギリになって留めていた。
――頑張っていたのは俺だけじゃない。
ノベルメイカーがオーバーフロウしないように毎日ずっと自動推敲される文章を書き直して白インクで消していく――。
小説家だから分かる。
毎日5000字ほど推敲される文章を短く簡潔に纏めるにはかなりの文章力が必要になる。
要点を纏め、出来る限り短い文章にする。
終わりがいつなのかもわからないこのレースに、アズリエルはめげずについてきてくれていた。
戦っていたのは俺だけじゃない、アズリエルも俺と同じだった。
そのための、
「ありがとな、アズリエル」
俺は素直にそう言いたくてたまらなかった。
ずっと俺の存在文章を見守ってくれていたアズリエル。
俺のことを忘れずにいてくれたアズリエル。
ずっと、お前に感謝の言葉を言いたかった。
「正直言って、カッコいいと思いました」
アズリエルは呟き、さらに強くグイッと俺の隊服を引っ張る。
「分かるんです。アズちゃんがノベルの頑張りを見ているたびに、どんどん強くなっていくのが。だから、アズちゃんはノベルがカッコよくなっていく様を読んで、毎日のように書き連ねていました」
「あ、アズリエル……」
すると、アズリエルは下げてきた可愛いリュックの中から一冊の分厚い本を手渡してきた。
見た目で1000ページほどある、魔術書のようなものを開くと、そこには――!
「こ、これって……!」
『ラノベにおいて、主人公が苦労するシーンは省くのが原則なんだ!』
――俺は、何か間違っていたのかもしれない。
面白いラノベは、強くなっていく様を出来るだけ省き、強くなったところを抜粋して見せるものだと思っていた。
「アズちゃんが勝手にしたことです。ノベルが頑張ってくれてるのに、アズちゃんばかりグータラしてたらダメだって。だから、アズちゃんなりに考えた『合格』の祝詞です」
俺はアズリエルからもらった本の中身を全て流し読む。
汚い字で、そしてインクが黒く滲んでいる。
眠気に襲われながら書いたページなんか可愛くてたまらない。
「お前、これ全部……俺の修行パートか?」
『修行するシーンの説明なんて、読者は期待してないからな!』
「消すにはあまりにも勿体ないと思ったんです。だから、ノベルの頑張りを全てこの本に書き写してあります。こうすれば、ノベルのカッコいい努力シーンが残ってくれると思ったから」
急に、涙がこぼれ落ちてきた。
4カ月という長い道のり。
その間、120回もアズリエルはこの分厚い書物に、自動推敲された文を模写してくれたのか?
――努力は消えたりはしない。
ただし、努力は保存できなかった。
だから、アズリエルは代わりにこの書物に書き写してくれたってことか?
「ぐぅ……」
アズリエルが急に本当に愛おしくなった。
ここまでしてくれるだなんて、全く思っていなかった。
「努力は消えたりしません。いいえ、アズちゃんが無駄にはしません。そのためにアズちゃんなりに考えた、ダメダメ天使のお仕事です」
そう言って、アズリエルは俺に向けて満面の笑みを見せてくれた。
本当の天使だった。
今までに見てきたラノベの天使よりも、よっぽど素敵なダメ天使。
――努力は消えたりしない。
残してくれた言葉を抱き、俺はその場で泣き崩れてしまった。
俺を応援してくれていた。
いつも、俺を見ていてくれた。
それだけで、俺は号泣に値するほど感謝が涙腺から溢れ出したのである。
「ノベル様。本当によくやり遂げましたね、グスン」
「本当によくやったぞノベル! ま、俺様の教えが天才的だったってのもあるかな! わっはははははは!」
「アズちゃんは、チートに頼らないノベルを心から尊敬します! だから、これからもノベルのカッコいい成長っぷりを見せてください!」
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