色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

56 これからも、ずっと

 学園祭は尚も盛り上がっている。

「あ、結菜ちゃん。そろそろ、ミスコンの時間じゃない?」

「本当だ」

「急げ、急げ~」

 女子たちが結菜を囲んでハシャいでいる。

「湊人くん、結菜ちゃんはあたしら責任を持って可愛くしちゃうからね!」

「お、おう」

 俺は頷く。

「ミーくん」

 結菜が俺を呼ぶ。

「私、すごく緊張しちゃって」

「大丈夫だよ。きっと、結菜が一番可愛いから」

「そ、そんな……ミーくん、見守って居て欲しいな」

「ああ、もちろんだよ」

 そんな俺たちのやり取りを見ていたクラスの男子どもは……

「「「ぢくじょう……」」」

 たっぷりと汗を含んだ涙を流していた。

「ちょっと、男子ぃ。ここまで来てまだへこんでいるの~?」

「いい加減、慣れなさいよ」

「そうよ、そうよ」

 女子が口々に言うも、男子たちは一向にやる気を見せない。

「あ、そういえば。ミスコンって、確か水着の審査もあるんだよね」

 女子の一人が何気なく言った。

「えっ?」

 俺は驚くけど、

「「「何いいいいいいいいいいいいいいいいいいぃ!?」」」

 それ以上に、他のアホ男子どもの声が大きかった。

「お、おい、それは本当か!?」

「ゆ、結菜ちゃんの、水着姿が拝めるってことか!?」

「まあ、決勝に進んだらだけどね」

「いやいや、結菜ちゃんは絶対に決勝に行くだろうが!」

 さっきまで死に体だった奴らが、一気に息を吹き返した。

「水着って、マジかよ……」

 呆然とする俺の肩に、ポンと手が置かれる。

「安心しろよ、湊人」

「恵一」

「結菜ちゃんの水着姿は、しかと俺がこのカメラに収めてやるぜ!」

 俺は奴の顔面に水平ショップを食らわせた。

「ぐおおおおおおおおおおぉ!?」

 恵一は床をゴロゴロと転がる。

「ミーくん、ごめんね。内緒にしていて」

「どうして内緒にしていたんだよ?」

「だって、言ったらミーくんに反対されると思って」

「えっ? 結菜はそんなにミスコンに出たかったのか?」

「……うん、まあ」

 そんな風に言われたら……

「……分かったよ。俺も客席から応援しているから。頑張れよ」

「ミーくん……ありがとう」

 結菜は微笑んだ。



      ◇



『さあ、やって参りました! 我が清流せいりゅう学園のミスコンが!』

 司会男子の煽りを受けて、客席の男子たちが大いに盛り上がる。

『えー、ミスコンについて簡単に説明をします。

事前に校内でアンケートを実施し、人気の高かった女子をピックアップ。

そこから、さらに運営委員の選考と人気投票によって、今この場に立てるのは30名となりました。

その中から、さらに決勝に進めるのは6人。

 そして、決勝での審査は……水着で行います!』


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!」」」

 あまりのボルテージの高さに、体育館が大いに揺れた。

『では、早速始めて参りましょう!』

 そして、ミスコンの幕が上がった。



      ◇



『さあ、ついにやって来ました、決勝戦!

 お前ら、水着の時間だあああああああああああああぁ!」

「「「イエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェイ!!!」」」

 もう男子たちのボルテージはマックス状態だ。

『決勝に残ったのは、美少女オブ美少女。果たして、その中でナンバーワンに輝くのは一体誰なのか!お前ら、鼻血で床を汚すなよ!』

 そして、水着の審査が始まる。

 この決勝に残っただけあって、どの子もみんな可愛いし、スタイルも抜群だ。

『はい、続いては……我が学園きってのお金持ちでお嬢さま! 高飛車な振る舞いで多くの女子に嫌われつつも、男子からの人気は絶大! 周防院すおういんひばりだぁ!』

 会場が湧き上がる中、颯爽とステージに現れた彼女は、ご自慢のお嬢様ヘアーをなびかせ、得意げに微笑む。

 そして、ステージのトップに立つと、マイクを握った。

『みなさま、ごきげんよう。私こそがこの学園の華であり星でありマドンナ、周防院ひばりよぉ!』

「「「イエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェイ!」」」

『ふふ、どうかしら、私の水着姿は? この日のために、特注した水着よ?』

 それは、銀色にきらきらと輝く水着だった。

 正直に言って、ちょっと派手というか……奇抜だな。

 まあ、金ピカよりはマシかもしれないけど……この女の自己顕示欲の強さがよく表れている。

『周防院さん、スタイルも抜群ですね~。ちなみに、スリーサイズは?』

『ふふ、知りたければ、私の召使いになりなさい!』

「「「はいはい、なりまああああああああああああああああぁす!!!」」」

 ていうか、さっきから会場の男子どもがアホすぎる……

『はーい、ありがとうございました~!』

 周防院は男子からの熱い歓声を受けながらステージから退く。

『さて、いよいよ大トリです。最後を飾るのは……『学園の嫁』と呼ばれて愛される、正に女神のような女の子……谷川結菜たにがわゆいなちゃんだああああああああああああああああああああああぁ!』

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!」」」

 すると、この日で一番大きな歓声が響き渡った。

 そんな中、水着姿の結菜が登場する。

 結菜は恥ずかしそうに胸とか隠しながらやって来るけど、その豊満なボディは隠しきれず……

「ぐはッ!?」

「ごはッ!?」

「がはッ!?」

 男たちは次々に鼻血を噴き出して倒れて行く。

『だーから、床を汚すなっての。ていうか、結菜ちゃんの晴れ姿を最後まで見れなくて可哀想に……まあ、良いや。では、結菜ちゃん、アピールタイムをお願いします!』

 水色の水着を纏った結菜は、おずおずとして前に出る。

『み、みなさん、こんにちは』

「「「こんにちはあああああああああああああああああああああぁ!!!」」」

『に、2年A組の谷川結菜です。こ、今回は、こんな立派なステージに立てて、とても嬉しいです』

 正直、今までのファイナリストに比べると、喋りはおぼつかない。

 けれども、

「はぁ~、結菜ちゃんかわええわ~」

 男子はうっとりしているし、

「結菜ちゃ~ん! がんばって~!」

 女子からも声援が飛ぶ。

 そう、結菜は男女問わずに人気がある。

『あの、この舞台をお借りして、どうしても言っておきたいことがあります』

「「「なーにー!」」」

『わ、私は、みんなから「学園の嫁」と呼ばれて、それはすごく光栄なことだけど……違うんです』

「「「どうして~?」」」

『だ、だって、私は……ミーくんのお嫁さんだから』

 結菜は言う。

『だ、だから、ごめんなさい……』

 そして、結菜は涙をこぼしてしまう。

 すると、クラスの男子たちの視線が俺に突き刺さった。

 ああ、これは殺される流れかな?

「おい、湊人、行けよ」

「えっ?」

「そうだよ、結菜ちゃんが一人で心ぼそいだろうが」

「そばにいてやれよ」

「みんな……」

 すると、また俺の肩にポンと手が置かれる。

「恵一……」

「ほら、結菜ちゃんもお前を待っているぞ」

 俺はステージ上に立つ結菜を見た。

 その潤んだ瞳を見て、俺は駆け出す。

「結菜!」

 そして、ステージに上がった。

『ミーくん……来てくれたんだ』

 そして、俺は結菜のそばに寄る。

『おーっと! これはサプライズな展開だぞ!』

 司会が叫ぶ。

「ちょ、ちょっと、それは反則じゃありませんこと!?」

 ステージ裏から周防院が飛び出して来た。

『あー、はいはい。スタッフのみんな、押さえといて』

 そして、周防院はジタバタしながらも取り押されられる。

『あと、湊人くんにマイクを渡してあげて』

 迅速なスタッフがすぐ俺にマイクをくれた。

『はい、じゃあ、どうぞ』

 司会はニコッとして言う。

『会場のみなさん、水野湊人みずのみなとです。結菜の彼氏……いや、夫です』

 俺は言う。

『結菜はみんなの人気者で、アイドルで……そんな彼女を俺だけの物にして、申し訳ないと思う……でも、それでも、俺は結菜を嫁だと言いたい』

『ミーくん……』

 俺と結菜は向かい合う。

『結菜、好きだ……愛している』

『私も……ミーくんのことが好き……愛している』

 そして、俺たちはキスをした。

 会場がドッと沸くのも気にせず、ひたすらキスをしていた。

「――お兄ちゃん、結菜ちゃん、おめでと~う!」

 その声にハッとする。

 妹の日向が、こちらに手を振っていた。

 そこには俺と結菜の両親もいる。

『これはこれは、ちょっとばかし早い結婚式かな~?』

 司会が言うと、会場がドッと笑う。

 俺と結菜は一気に恥ずかしくなって来た。

 でも……

「結菜、最後は胸を張ろう」

「……うん」

 俺と結菜はお互いに強く、優しく手を握り合って、前を向いた。

「ずっと、これからも一緒だよ、結菜」

「はい……ミーくん」

 本当に、ずっと、ずっと。

 彼女と歩んで行きたい。

 俺は強く願った。





色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった



 完







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