色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

24 これで公認かな?

素敵な結菜先生のおかげで何とか追試をパスした俺は、また平穏な学園生活を取り戻した……かに思えたが。

「はよーっす」

俺が結菜と教室に入ると、男子たちが一斉に振り向く。

「な、何だよ」

「おい、湊人。お前、結菜ちゃんと夫婦って本当か?」

「え?」

「惚けんじゃねえよ! 本当のことを教えてくれよ~!」

男子たちがなぜか泣きながら俺に訴えて来る。

俺はチラと恵一の方を見て、奴が肩をすくめるのを見て悟った。

「あ~、野球部の連中には口止めをしておいたのになぁ」

「じゃあ、本当なのか?」

男子たちは俺を見て、それから隣に居る結菜にも目を向けた。

「……はい」

結菜は照れたようにコクリと頷く。

「「「あああああああぁ……」」」

男子たちは白く枯れて行き、そのまま屍の山と化した。

何か申し訳ないなと思っていると、

「きゃ~、噂は本当だったんだ~!」

今度は女子たちが浮かれた様子で迫って来た。

「ねえねえ、結菜ちゃん。いつから湊人くんと付き合っているの?」

「えっと……2年生になってから」

「きゃ~! ていうか、夫婦ってどういうこと?」

「そ、それは……」

結菜が揺れる瞳で俺を見つめる。

「……あー、もうこの際だ。言っちゃおうか」

俺はコホンと軽く咳払いをする。

「俺と結菜は将来、結婚をする約束をしているんだ。そして、今現在、既に同居している」

「え、マジで!? それは、どちらかの家でってこと?」

「最初は俺の家で同居していたけど……今はアパートで二人暮らしだ」

俺が言うと、一瞬だけ沈黙し、

「「「きゃああああああああああああああぁ!」」」

女子たちがまた大いに沸き上がる。

一方、既に白く燃え尽きていたはずの男子たちがまたカッと燃え上がり、そして黒ずみと化した。

「あーあ、とうとうゲロっちまったか」

恵一が呆れたように言う。

「え、佐藤くんは知っていたの?」

「まあ、湊人の一番の親友だからな」

「俺が結菜と二人暮らしをしているってカミングアウトした時、お前は俺を屋上から突き落とそうとしただろうが」

「え~、マジで?」

「佐藤くん、ないわ~」

「最低だよ~」

「いやいや、ギャグだから! おい、湊人! 自分が最高に幸せなくせに、親友を貶めるんじゃねえ!」

「ああ、すまん」

「軽いな~」

恵一はガクリと肩を落とす。

「ねえねえ、二人はどこまで進んでいるの?」

「もうキスはしたの?」

「もしかして、エッチも?」

女子たちが目をキラキラとさせて詰め寄って来る。

「いや、まあ……ね」

俺が目配せをすると、結菜はまた照れたように俯く。

「これはもう完全にデキていますわ」

「え、赤ちゃんが?」

「いやいや、さすがにそれは……え、本当に妊娠しているの?」

「してないから! ちゃんと避妊はしている!」

俺はつい大声で叫んでしまう。

「あっ……」

出来ることなら今の発言を引っ込めたい所だが、もう無理だ。

「「「きゃあああああああああああああああああああああぁ!」」」

女子たちの歓声がより一層デカくなる。

男子たちはもはや魂までも燃え尽きようとしている。

そして、結菜は顔を真っ赤にしてずっと俯いていた。







今日は俺たち夫婦のせいで、授業中もずっと教室がざわついていた。

「結菜、俺ちょっとトイレに行って来るよ」

「うん」

そんな何気ないやり取りなのだが、

「あれ、湊人くん。愛しのお嫁ちゃんとおトイレに行かなくても良いの?」

おせっかいな女子たちがいちいち茶々を入れてくる。

「勘弁してくれ……」

「「「キャハハハハ!」」」

全く、昨今の女子はたくましいと言うか……一方、男子はまだあの世から魂が返却されていない。

恵一は存命だが、いつ俺の寝首を掻くか分からないから、あいつのそばでうたた寝は出来ない。

そんなプレッシャーから、俺は軽く催してしまったのだ。

「はぁ……」

自分から発表したことだから仕方ないけど。

予想以上に周りがうるさくて敵わない。

「……まあ、その内ほとぼりが冷めるだろう」

俺はトイレを済ませてまた教室に戻るのが憂鬱だなぁ、と思っていた。

「湊人くん」

ふいに、女子の声に呼ばれる。

顔を上げると、見知った顔だった。

「ああ、小鳥遊たかなし

少し小柄な彼女は小鳥遊らん

明るい髪色のショートヘアが特徴的。

俺のクラスメイトだ。

「どうしたの?」

「ねえねえ、本当に結菜ちゃんと同居しているの?」

「ああ、そうだよ」

「へえ、そうなんだ……残念」

「え?」

「だって、湊人くんって結構モテるんだよ? だから、内心ではガッカリしている女子たちもいるんじゃないかな?」

「そうなの?」

「自覚なし男くん♡ ちなみに、あたしもその一人」

小鳥遊は口元に指を添えてどこか不敵に微笑む。

「あ、そうなんだ……」

「もう、そっけない返答ね。少しはドキドキしてくれないの?」

「まあ、少し驚いてはいるけど」

「そっか。まあ、相手があの結菜ちゃんじゃあ、あきらめざるを得ないね」

小鳥遊は言う。

「ああ、俺と結菜はラブラブだからな」

「自分でラブラブとか言っちゃうんだ、可愛い♡」

小鳥遊はくすりと笑う。

「けど、そんな風にラブラブ過ぎると……割とすぐ飽きちゃうかもね」

「えっ?」

「そうしたら、他の女も味見したくなるかもよ?」

小鳥遊はまた不敵に微笑む。

「それはないよ。俺は結菜だけだから」

「まあ、カッコイイ。けど、LINEくらい交換しておく?」

スマホを差し出して小鳥遊は俺をじっと値踏みするように見つめた。

「いや、ごめん。やめておくよ。申し訳ない」

「ふぅ~ん……さすが、モテる男は違うねぇ」

小鳥遊はスマホを口元に添えて微笑む。

「あ、そろそろ戻らないと授業が始まる。小鳥遊も急げよ」

「うん、ありがと」

笑顔の小鳥遊に背を向けて俺は軽く走り出そうとする。

「……欲しいなぁ、やっぱり」

ふいに、背後からそんな声が聞こえた気がする。

チラと目配せをすると、小鳥遊は既にトイレに姿を消していた。

「……まあ、大丈夫だろう」

俺は結菜が待つ教室へと急いだ。






          

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